お嬢様 『夜を走るための予習』
本日2度目のアップです。
アルテミス総長雅特攻服姿。
早朝の試験場の駐車場に止まってた、数台のリムジンの後部座席が運転手により開けられ、
中から上品な制服を纏ったお嬢様たちが降りてくる。
彼女たちが、場内に足を踏み入れると、周囲の視線が集まりざわめきが起こる。
「えっ.........あの制服、あの超お嬢様学校の............?」
「なんでこんな場所に............?」
聖凰華女学院のお嬢様の制服団体と、
この試験場の雰囲気がどうしても混ざり合わない違和感を醸し出している。
異色な一団は、これまた似合わない2輪中型免許の列に並ぶ。
その集団の前後には、20歳前後の男性が並んでいた。
はたから見ても2人の男性はソワソワしている。
後ろの男性は、鼻をヒクヒクさせ。ここの空気を堪能してるようであった。
前の男性は後ろにいる彼女たちの話が気になるのか、
顔をちらちら横に向けて聞き耳を立てている。いかにも声をかけたそうだが、
さすがに聖凰華の制服は敷居が高そうそうだ。
「あのぅ...............!」その時後ろから声がかかった。
「ひゃい.........,,,?」 「にゃにかおたじゅねでひょうか?」(噛んだ)
少女は、ニコっと笑って前を指さした。
前を見ると自分のところで列が止まってる。
彼は真っ赤になりながら列進めた。
”全員中型2輪だって!” ヒソ "ATじゃんなくMTだってさ!” ヒソヒソ
”ああ、俺、彼女たちのマシーンになりたい!?”............ポツーン!
無事、適正試験も学科試験もクリアーして免許証を受け取って、
試験場を出たみんなに雅は提案した。
「皆さま.........免許を前にして記念撮影とりませんこと。」
「いい考えですわ。
会長、私 Instagramのレディース用アカウントに載せたいですもの!」
「え、梓さん、そんなのいつ作りましたの?」
「合宿に入ってですわ。思い出は形に残さないといけませんものね。」
運転手の一人を呼び皆で免許証を胸の前で持ち、
梓のスマホで「はいチーズ!」
シャッター音がなりスマホには、
小さな達成感と照れくささが滲んんだ少女たちの画面が写っていた。
登校すると、8人は被服室に立ち寄った。
エマの所に頼んでた特攻服を受け取るためである。
そこには明るい顔をした真貴子おば様が、頬が削げ落ちたスタッフを引き連れ待っていた。
おまたせ、皆さん、ではウチで仕上げた特攻服をお渡ししますわ。
三条雅 白
・背中「月下美刃」 (げっかびじん)
・腕右「常闇の誓」 左「誠の刃」
宮部梓 黒
・背中「暗夜の薔薇」(あんやのばら)
・腕右「潔心明晰」 左「華と刃」
安田麗子 黄
・背中「華麗奔放」 (かれいほんぽう)
・腕右「宝刃乱舞」 左「唯一震雷」
伊藤彩 青
・背中「晴嵐烈日」 (せいらんれつじつ)
・腕右「氷華秋霜」 左「凛然一騎」
山際琴音 緑
・背中「優闘陣諷」 (ゆうとうじんぷう)
・腕右「夜桜燦燦」 左「鬼火滅殺」
木田宗子 紫
・背中「紫電濫刃」 (しでんらんじん)
・右腕「千手観音」 左「輪廻断闕」
京極あかね 赤
・背中「紅炎刹刃」 (こうえんせつじん)
・右腕「焔の誇り」 左「気高き矢」
エバ・ ピンク
ベルナール ・背中「桃華精霊」 (とうかせいれい)
・右腕「魅目聖青」 左「愛執夢想」
「下のパンツもつくる?」
「いえ私達は、特攻服はあくまで上だけ、心を飾るための物。
中はライダースーツとヘルメットですから。」
「そう、じゃあ何かあったらいつでも呼んでくださいね。
何でも作っちゃうから」
『『有難うございました。』』
「宗子さんマシーンは?」
「すでに皆さまの元は2台ずつお送りしております。
カラーは皆さまと同じカラーで統一しています。
マシーンの性能は従来とかわりませんが、
装備品にナビなどつけてますのでのちほど説明いたします。」
”では先に役職を発表します”
総長 三条雅
副総長 宮部梓
親衛隊長 木田宗子
特攻隊長 京極あかね
渉外隊長 安田麗子
統制隊長 山際琴音
広報隊長 エマ・ベルナール
書記局長 伊藤彩
”みんな役付なんだ”
”まあ、いつもの8人ですものね”
「はい!か…いや総長、この役って何するのですか?」
「よい質問です。・・・・・・・実は私にもわからないので臨機応変で」
放課後の会長室横にある「特別技能研修室」
そこは、生徒会執行部の許可なく入れない部屋で中には、
例のスーパーシュミレターが静かに佇んでた。
「では、皆さま明後日の公道デビューに備えて夜間走行の特訓を行います。」
総長の雅が微笑みながら言うと、皆は制服の上から、
今日貰ったばかりの特攻服を着て、それぞれの装置に乗り
シュミレターのフルフェイスヘルメットを被る。ヘルメットの左にあるスィッチを入れると、
立体的な夜間の街並みが高性能なホログラムで現れた。
「夜のコースは、視界が狭くて、本当に怖いですね。
教官との特訓を思いだしますね。」
彩が小さく震えると、梓がインカムで答える。
「大丈夫よ。彩ちゃん。ここで練習しておけば、本番は心がみだれませんわ。」
8台のヘルメットに備わってるディスプレイには、みな夜の街中が映し出されている。
同期モードを起動すると、仲間たちのバイクが前後・隣に映り、ヘッドライトの光が絡み合う。
「では、参りますわ」
雅がそっとスロットを開けると、他の7台も一斉にエンジンを響かせる。
先頭を走る雅の目に映るのは、まばゆいばかりの街の光と、対称的な漆黒の闇。
「街の光に目を奪われれば、忍びよる影に車輪を奪われますわ.
........みなさん気を引き締めれくださいね。」
後方では梓が彩を気遣いながら華麗に左からタクシーをパスする。サーッキットみたいなコースとの闘いではなく、ここで思いもよらない障害物が出ては消え、また出ては消えを繰り返す。
油断は命取りに繋がり、信号、歩行者、タクシーの急停車、
視界の端に映る動きすべてが危険因子となる。
耳もコースと違いエンジン音だけでなく、
クラクションやサイレンの音にも反応してしまう。
雅は思った。(ここでは、逆に情報量が多くて取捨選択が求められるのね。
それを誤れば、他人を事故に巻き込んでしまう。
それは先生達との約束を破る事にもなる。)
そう考えながら、前方の障害物をパスしながらスラローム走行をしてると、
急にリアタイヤが流れた。幸いにもマシンの電子制御トラクションが作動し、
強制的にリアからフロントに荷重移動がなされた。
「えっ!今のはなんなの?」思わず雅は声を上げた。
梓から通信が入る「いまのは、マンホールでしたね」
ドライ ウエットと関係なく、極端に路面のミューを減らすのがマンホールである。
4輪では、25%の影響だが、2輪では50%である。普段乗ってるリムジンでは、
運転手の腕前がよいのか、感じた事さえなかった。
「麗子さん先行してください。」雅は指示を出す。
”この体験は皆が知っておくべきだ、順次先頭をかえ、
全員にこの違和感を感じさせるべきだ。”
そして予定コースの予習を終えた8人は、
夜景を映したホログラムの中で、一度停止する。
「今日の予習やっててよかったわね。」
「でも、本番はもっと難しいですわ。」
「それでも、わたくしたちは一緒にはしる。そうですよね、かい......総長?」
「ええ。わたくしたちは、ただの暴走族ではございません。
アルテミスの名に恥じぬように、華麗に、そして誇り高く走りましょう。」
夜の市街地へ備えるための予習は、決して荒っぽく走る為のものではない。
これまで一緒に走ってきた仲間との絆、
お世話になった教官への感謝を再確認するための大切な儀式だった。




