お嬢様 必死の災害救援活動。
東光連合が構える現地本部の広場に、陸上自衛隊のヘリコプターが次々と到着した。
東光連合の面々は、夜通しの救助で疲れ切った表情を浮かべながらも、整列して迎え入れた。
先頭に立つのは雅と梓、そして彩。三人は自衛隊の指揮官と短い挨拶を交わすと、すぐに本題へ。
「ここから先は役割を明確にしなければなりませんわね」
雅が冷静に口火を切る。
地図を広げた梓がすかさず補足する。
「自衛隊には大規模輸送と医療、そして重機を使った大規模な瓦礫撤去をお願いしたいです。
東光連合は地域の道に詳しいので、狭い路地の確認や、被災者の誘導を担当します」
指揮官はうなずき、彩が前へ出た。
「それと、住民との信頼関係はわたしたちが持っています。避難所での説明や、不安の声の吸い上げは東光連合が前に立ちます。そのうえで、支援物資の配給や医療につなげるのは自衛隊にお願いしたいのです」
自衛隊側の幕僚が短く「了解」と答えると、その場の空気が引き締まった。
梓がさらに地図の一点を指差す。
「南の集落は道路が寸断されているので、ヘリでの空輸が不可欠です。そこは自衛隊に一任します。その間に、東光連合がバイクで周辺の小道を偵察して、孤立している人がいないか確認します」
雅はゆるやかに頷き、最後に言葉をまとめた。
「つまり大規模な力は自衛隊が、小回りと信頼はわたくしたち東光連合が担う。互いに役割を尊重し合えば、救助は必ず進みますわ」
ヘリのローター音を背に、両者の視線が交錯する。
そこで交わされたのは、形式的な握手ではない。命を背負う者同士の、確かな決意の共有だった。
夜明けの第一陣が降り立ったあと、伊勢・志摩は一気に動き始めた。
自衛隊のヘリから次々と降ろされる医療物資や重機。その脇で、東光連合の若者たちが統制された動きでコンテナを仕分け、避難所へ運ぶルートを即座に整えていく。
「よし、この先は道幅が狭い。バイク部隊、先に行って通れるか確かめろ!」
ルナゴスペルの隊長・美奈子が率いる一団が、東光連合の面々に指示をする。
「うちらは子供と高齢者の搬送を引き受ける! 後ろにサイドカー付けたバイクもある、全部使うよ!」
彼女の叫びに、千秋と涼子が息の合った動きで手を振り、住民を避難所へ誘導していった。
夜明け、伊勢志摩の避難所。
自衛隊は医療・輸送を主導、東光連合は機動救助と生活支援を担当する。
その中で、ルナヴァイオレットが前に出る。
自衛隊の簡易テントが並ぶ中、被災者たちの顔には不安と疲労が色濃い。
その場に紫のスカジャンを翻し、いずみが颯爽と現れた。
「さぁ〜みんな! とりあえず顔を洗って、髪を整えましょ。こんな時こそ、自分を大事にするのが一番よ!」
避難してきた女性や子供たちに、持参した携帯用シャンプーと美容セットを配り、器用な手つきで髪を編み込み始める。
不安げだった子供が、鏡を見て笑顔を取り戻した。
「甘いものは正義よ! こんなときだからこそ食べてもらわなきゃ!」
みちるは、横須賀本店から運んだ洋菓子を手渡すと、子供たちが目を輝かせて群がる。砂糖の甘さと、彼女の明るさが、空気をやわらげていく。
「寒さを防ぐのは布一枚の差。私たちの呉服店の在庫を持ってきました。避難所の皆様にお配りします」
あやめは、毛布や和装用の反物を簡易寝具として提供し、冷え込みで震えていた老人たちが安堵のため息をつく。
やがて自衛隊員たちも目を見張った。
彼女たちの働きは「救助」ではなく「癒し」だったが、それは確かに人々を生かし、立ち直らせる力になっていた。
「アンタら! ボサッとしてんじゃないわよ! 怪我人を優先、重機が来るまでに腕力で運ぶわよ!」
美奈子の特攻隊長のような声が、避難所の青年や自衛隊員さえ動かす。
彼女の号令で、がれきの隙間から人が次々と引き出される。
「よっしゃああッ!」
千鶴は、倒れた電柱を素手で押し動かし、通路を確保する。
その姿に住民が「女の子なのに…」と呟くと、彼女はニカッと笑った。
「女の子だからって、ナメんなっての!」
夜明け直後の被災地。
港の臨時拠点には、瓦礫を運び出すルナゴスペルの力強い掛け声と、避難所でルナヴァイオレットが子供や高齢者を落ち着かせる優しい声が交じり合っていた。
その様子を、丘の上の本部テントから雅たちアルテミス本隊が無線と双眼鏡で見守る。
梓は、冷静にモニターを指さしながら
「左の避難所、ルナヴァイオレットが臨時の炊き出しを開始しました。医療班とも連携済みです」と現状を報告する。
彩は線に向かい、必死に
「自衛隊本部、こちら東光連合。ルナゴスペルが南側で負傷者搬送路を確保、搬送班を直ちに投入してください!」と指示する。
無線の向こうで自衛隊員が即答する。
「了解、東光連合の指揮に従う!」
テントの中央で、雅は堂々と立ち上がった。
ジェネレーターの低い唸りを背に、総長の声が響く。
「アルテミスは頭脳。ルナゴスペルは行動力。ルナヴァイオレットは心。その三つが合わさった今、東光連合は誰よりも早く、誰よりも深く、この地に根を下ろす救助隊となる」
この関係は、正しく組織の理想的な運用法である。一般的には、C3Ⅰシステムといい、指揮(Command)統制(Control)伝達(Communication)
情報(Intelligence)の略語で、主に軍事用語で使われるが現在では組織運用において必須である。
その間も、指揮所から現場へ引っ切り無しにやり取りが行われる。
美奈子
『総長! こっちは片づいた! 次はどこに突っ込めばいい!?』
いずみ(ルナヴァイオレット)
『避難所の子たち、泣き止んだわよ♡ でも物資がまだ足りないわ。追加をお願いできる?』
雅は、片時も無線機を話さず指示を出していく。
「美奈子さん、北の集落に進んで! いずみちゃん、追加物資は手配済み。すぐに空から届きます!」
その瞬間、
アルテミスの統率、ルナゴスペルの突破力、ルナヴァイオレットの支援力。
三つの歯車が噛み合い、「東光連合」という巨大な機能体が目の前に立ち上がった。
自衛隊の将校でさえ、その光景を見て思わず呟く。
「……これは、ただの不良集団じゃない。民間最強の機動救助隊だ」
翌日の午前中
臨時の炊き出し所でルナヴァイオレットが振る舞う温かい味噌汁の湯気。
その隣ではルナゴスペルががれきを撤去し、アルテミスが本部から指示を飛ばしていた。
その姿を、取材に入ったテレビ局のカメラがとらえる。
リポーターは息を呑んで現場の様子を伝えている。
「こちら現場では“東光連合”と呼ばれる暴走族チームが、自衛隊と共に救助活動を行っています! 男女にかかわらず、バイクを駆使し、孤立地域に最速で物資を届けているのです!ただ、私は、この状況を見て彼らを”暴走族”と伝えることに躊躇いがあります」
レポーターの目は潤っていた。
東京・新宿のカフェで大画面モニターでニュースを見ていた若者たちがざわつく。
「え、あれアルテミスじゃね? インスタで見たけどマジで走り屋だろ?」
「ルナゴスペルもいる! おい、ニュースで取り上げられてるって!」
「すげぇ……あいつら、ただの族じゃなかったんだ」
SNS上では《#東光連合》が一気にトレンド1位に。
「自衛隊より早く現場に入ったの、マジで東光連合らしい」
「ルナヴァイオレットの炊き出し神対応。避難所の子供たち笑顔になってる」
「アルテミスの雅って三条財閥の娘だよな? 本気で国を動かしてるじゃん」
「梓の指揮ヤバい、完全に参謀だわ」
避難所のざわめき、全国の声援、自衛隊との協力。
暴走族集団から「災害時、国を支える第三の力」へ。
東光連合の真価が、いま初めて全国に知られた。
しかし次なる試練が東光連合を襲う。




