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夕暮れと猫とカシスオレンジ

作者: 昼月キオリ
掲載日:2025/07/15


夏の夕暮れ。

海にオレンジと青のグラデーション。

綺麗だった。心が痛かった。泣きたかった。


健「別れよう」


あなたは甘え上手な可愛い女の子が好きなのよね。

それならどうして私と付き合ったの?

ねぇ、誰か教えてよ。


一人になった後も砂浜に座り海を眺めていた。

このまま砂浜と夕陽に溶けていけたら・・・。


「にゃあ」


不意に声がして隣を見ると茶トラ猫がちょこんと座っていた。




1時間後。

暗くなる前に帰ろうと立ち上がる。

猫は同じように立ち上がるとふわっと宙に浮き、砂浜と夕陽の中に溶け込んで消えた。



 


数年後。

「カシスオレンジ下さい」

店長「かしこまりました」



華の好きだったカシスオレンジという響きに思わず健が振り向く。

一つ隣のバーカウンターの席に座っていた華と目が合う。

新しくできたバーで偶然の出会いを果たした二人。



「俺もカシスオレンジを」

「かしこまりました」


「俺、ずっと後悔してたんだ、別れを告げた事」

「私もよ」

「え?」

「あなたに別れを告げられて悲しかった、泣きたかった、寂しかった」


「俺、華が甘えられる男になろうって、正社員になった、ジムにも行ってる」

「ふふ、筋トレまでしてるの?」

「寄りを戻せるなんて確証もなかったのにバカだよな」

「私、あなたのこと好きだったわ」

「それは今はもう好きじゃないってこと?」

「いいえ、今も好きよ、でも、今までよりもっと好きになったみたい」



バイト「あのー、仲が良いのは良い事なんですが・・・他のお客様の視線がその」


「「え?」」


バッと二人が振り返ると他のお客たちの視線が集まっていた。



二人は急いでカシスオレンジを飲み干すと会計を済まし店を出た。






外はまだ夕陽が沈み切る前だった。

カシスとオレンジが混ざったような色。


二人並んで歩く。

華が健の手を人差し指でツンツン突く。

一瞬驚くもすぐに満面の笑みになり手を繋いだ。

 

別れたのは彼でも夕陽でもない。

昨日までの私だったんだ。


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― 新着の感想 ―
冒頭の夕暮れと海、オレンジと青のグラデーションから、カシスとオレンジの混ざった色へと。二人の気持ちが、時を経て熟すような色彩の描写に惹きこまれました。 タイトルも素敵ですね。読ませていただき、ありが…
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