切れ端 〜赤〜
誰だコイツらって思うかもしれませんが、割とすぐに気づくと思います。……多分。
少女が本を抱え、村の中を走る。
どうやら今日も、人を探しているようだ。
「おにーちゃーん!!!」
「ん……今日はどうしたんだ?」
少女はいつもの、二人だけの場所で、探し人を見つけた。
少女の探し人である少年は、今日も魔術の本を読んでいたが、少女の声が聞こえると本を閉じ、少女を抱きとめる。少年はいつものように、少女を自身の膝の上に座らせると、少女は待ってましたと言わんばかりに、持っていた本を掲げる。
「本、読んで!」
「あぁ…今日も、”赤”の話?」
少女は昔から、物語が大好きだった。
高価で、手に入りにくい絵本をいくつも所持し、何度も人に読ませるほど、大好きだった。
だから今日も、少年に読んでもらうのだ。
「そう! だって”赤”、いまも会えるんでしょ! いつか会いたい!」
「あぁ……うん、いいよ。読んであげるから、こっちにおいで」
「うん!」
最近のお気に入りは、ヘレネア救国物語。
物語の主人公は、”赤”の英雄。
彼は”今”も、舞台の国に所属している。
△▼△▼△
はじまりはへいわでした。
しかしいつからか、ひとはへいわをかしんしてしまいました。ヤミはそんな、へいわをつつみこみ、おうこくはヤミにのっとられてしまいました。
そんななかで、ひとりのおとこがおうこくをすくうため、たちあがりました。おとこのなまえは、バルバト。ちちおやのてらすようなあかいかみと、ははおやのもえるようなあかいめをついだおとこです。
バルバトはいくつものまちをすくいました。
あるときはかんしゃされ。
あるときはばせいをあび。
あるときはおしまれ。
あるときはむしされ。
それでも、バルバトはまちをすくいつづけました。
そうして、ついにバルバトはヤミのしろにたどりつきました。やみのしろは、もとはおうこくのしろ。だけどいまはそのおもかげすらなく、くらくまがまがしいしろです。
バルバトはしろのなかをすすみます。
そして、ぎょくざのまへとたどりつ■■■■⸺⸺。
△▼△▼△
「………」
少年は、何かを言いたい顔をしながら、膝の上に座る少女を見つめる。
「なぁに、おにーちゃん」
「どうしていつも、この塗りつぶした絵本を読ませるんだ?」
この絵本は、途中から黒く塗りつぶされている。
だが、買った当初から黒塗りだったのではない。
少女が、塗りつぶしたのだ。
気に入らなくて、モヤモヤして。
子供ながらに、嫌だと思って、塗りつぶした。
「おしまいだけが、スキじゃないから。おひめさまとケッコンって、赤のシアワセなのかわからないんだもん……」
「酷く我儘だなぁ……知ってる? 紙って高価なんだよ。それに、この村は辺境より辺境だから、一般より更に希少なんだよ」
「しってる。だから、スキなおしまいにしようって、新しくかこうとおもったの。でも、インクのビンをたおしちゃったから……もういいやって」
少年は、この少女の言い分はただの言い訳だと知っている。だけど、指摘しなかった。
それは何故か? それは……⸺少年は、少女の泣き顔に弱いから。
「……それで、今日の”おしまい”はどうするんだ?」
「今日のおしまいはねー……よし!
⸺赤はヤミをたおしたけど、きずだらけで、うごけなかったの。
だけど、赤のかつやくを見ていたカミサマが、赤のきずをなおして、”えいゆう”のあかしとして、”ふろうふし”をあたえたの!
それをおんにかんじた赤は、国のためにつかえることをきめた。だから、今でも赤は国につかえているの。
っていうおしまい。どう? おにーちゃんからみて、おもしろいおしまいかな?」
少女はいつも、自分でおしまいを考える。自分が気に入らないと塗りつぶした元の内容に引け目があるのか、少女の考えるおしまいは、いつも結婚をしていない。
だけど少女も最近は、昔からのおしまいを、自分が気に入らないからと変えることは違うと気付きかけている。
でも嫌だと、嫌いだと思う。
イイとダメが少女の頭をぐるぐると回り、少女は分からなくなっていく。
そんな少女の心境を知ってか知らずか。
少年は少女の頭を撫で、感想を呟く。
「……今日のおしまいも、よかったよ」
その一言で、少女の悩みは遥か彼方へ飛んでいく。
だって、少年に褒められたのだ。少女にとって、少年に褒められることが、一番だから。
「えへへ……じゃあおにーちゃん、きょうはにいちゃんたちともあそばない?」
「えぇ〜……⸺たちも一緒なら、いいけど」
「おねーちゃんたちも? うーん……」
少年はあまり、人と関わらない。だから、少女がいつも少年を引っ張り人との交流をさせる。
そして今日はどうやら、少年が苦手な同年代たちと遊ぼうと考えたようだ。少年は渋々、少女の姉とその友達が一緒ならいいと答える。
その返答に、少女は少し悩むが⸺
「⸺いいよ。じゃあ行こ、おにーちゃん!」
少年の提案を聞き入れ、翡翠色の目を輝かせながら立ち上がり、少年の手を掴んだ。
完全なる余計な小話なのですが、ラノベ好きな転生者が、赤の英雄の話を独自解釈で書いた本が一時、身分問わず流行になった……という話があります。
必要ないですね。




