色はまだ、完成しない
今話は”変態”と”同じ言葉の繰り返し”注意です。
苦手な方は、ブラウザバック及びこの先を読むことをやめることを推奨します。これからも度々、出てきてしまう表現だと思われますので。
『⸺ねぇ、リィ。リィは俺のこと……どう思ってる?』
そう、アルから聞かれた。
それに私は……。
『……………あー、えぇっと。ちょっと、時間…もらっても、いい? 真剣に……考えたいから』
そう答えて、返答を先延ばしにした。
今だから、言える。
その場で直ぐに答えてしまえば良かったのに、あの時の私は……名前を、付けたく無かった。
あの関係に、感情を決めつけたく無かった。
⸺⸺⸺
「⸺⸺。⸺⸺⸺?」
「⸺⸺、⸺!」
言葉も、光景も。今はまだ、見えなくて。
今見えるのは、形定まらぬ記憶の断片だけ。
実体が無いと思えるほどに、ぼやけて見える。
コレが夢であることは、今は誰も証明出来ない。
⸺⸺⸺
先延ばしにしてから、三日経った。
まだ、胸を張って言える返答は思いつかない。
どうしようかと悩んでいると、ししょーが手紙を持って外から戻ってきた。なんとなく気になり、手紙を強奪して中身を見てみた。そしたら……⸺
「⸺七の姉様、婚約するんだ……」
「あぁー……弟子ちゃんには、見せる気無かったんだけどね。もしかしてだけど、行く気?」
七の姉様とは、あまり接したことが無い。だけど、姉様だから……お祝いくらいは、してあげたい。
「七の姉様は、嫌いじゃないし……うん。行きたいよ、ししょー」
私は、割とワガママなのだ。
***
「と、言う訳なんだけど……保護者、どうする?」
「えぇ〜……無難に、お兄でいいんじゃない?」
「ま、そっか。アラン君に任せよう。よろしく、アラン君!」
「…了解です」
「俺は不安なんだが……」
「ヨツバってば、いつもお兄に不安だと思うよね……嫉妬?」
「んなもん持っても、逆立ちしたって勝てねぇから持たねぇよ…」
「持たない理由、そうなんだ……二人はどうする? 行く?」
「飯食いに行くー! 絶対豪勢だろうから!」
「………行ってきます」
***
婚約パーティー当日。
七の姉様の婚約パーティーには、ししょーの代理として出席している従者……という設定で、レイさんに変装して来た。レイさん本精の許可もちゃんと取った。
七の姉様が、相手に連れ添って登場した。いつもよりも笑っていて、いつもよりキラキラしている。
「……わぁ、綺麗」
「………少し経ったら、すぐに帰るぞ。コレも……完璧じゃないからな」
「分かってる…ごめんね、着いてきてもらっちゃって」
同じく、ヨウさんに変装してるアルに注意をされた。……なるべく、レイさんらしい表情と対応を心掛けなきゃ!
「……気負いすぎるなよ。見るだけなんだから」
「あ……うん、わかった」
***
「モグモグモグ………お兄もお姉も、意外な才能だね」
「何がだ?」
「お兄は変装技術、お姉は演技術……ね、意外でしょ?」
「アレはともかく、アイツは元から見え隠れしてなかったか…?」
「そぉ? あーでも、そうかも………ていうか、お相手ってさぁ…同じだよね?」
「………だよな。同じ気配だ」
「…いざって時、すぐに結界張れる用に用意しとく」
「おう、頼んだ。俺も、力溜めとくわ」
***
「⸺きれい……」
見れて良かった。七の姉様はいつもキラキラしているドレスを好んでいる。でも今日は、一段とキラキラ光ってる……七の姉様、よかった。
七の姉様は、私とはまた違う形でズレていると思っていたから、私がいなくなったら代わりに冷遇されないか心配だった……けど、幸せになれそうでホッとした。
周りの参加者の会話の声を聞いてみる。
どうやら、七の姉様の婚約相手はただ一人の種族であり、相手側から姉様と婚姻したいと打診があったらしい。
それと、相手は神として信仰されているから、こちら側に引き込められるなら、ツクモとして更なる神化を……という話も聞こえる。
やっぱり、ツクモは変らない。
私も……表面以外、何も変わっていない。
そんな風に考えていたら、七の姉様の婚約者様が、私に近づいてくる。レイさんに何か用でもあるのかと考えている合間にも、近づいてくる。なんだか嫌な予感がして、隣にいるアルが、私の前に立つ。
「うん、騙されるところだったよ……こんな所に隠れてるなんて。ずっと探してたんだよ? 今まで何処にいたの? どうしてボクの前から消えたの? ボクは強くなったよ? どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?⸺……ドウシテ?」
⸺……ぁ、あ…。分からない。分からない分からない分からない分からない分からない分からない。
突然の押し付けに、頭の中がこんがらがる。分からない。分からないのに、足が動かない。何か、何かが合っている? 間違っている? 分からない、分からない。
頭がうまく回
らない。
思考が纏
まらない。
バラバ
ラで、熱くて
熱くて………あれ???
熱いって……なんだっけ…?
「⸺ッ、逃げるぞ!」
アルに手を引かれ、思考が回り始める。今のアルの声は、アルの声だった……もしかして、偽装の術が切れた?
「アイツが近づいたら、全部消えた! だから、気配も声も、何もかも素だ!」
手を引かれながら、アルの報告を聞く。あぁ、切れちゃった……レイさんの真似、楽しかったのに。
そんな緊迫感の無い思考が、これで益々、他のツクモから嫌われるだろうという考えも浮かばせる。
⸺違う。そういう事を考えている場合じゃない。
風を感じていることで。走っていることで、思考に冷静さが混じりはじめる。
そうだ。どうしてアイツは、急に私に近寄ったのだろう? アルなら何か、知ってるんじゃ無いかと思って、聞いてみる。
「アイツ、何っ?」
「知らん! お前のストーカーだろ、把握しとけ!」
「そんなんっ、知らんしっ…!」
私のストーカーなんだから、自分で把握しておけと怒られた。別に、好きにストーカーされてる訳じゃないんだけど……後、ストーカーはストーカーの方が悪いから。私何にもしてないし、あんな偏愛を向けられる程凄くもオカシクもない。私はマトモ側なのだ。
「ねぇなんで逃げるの? ボクが笑顔にしてあげるんだから、逃げないで? 逃げないでよ?」
追われて、逃げて。
走って、振り返らないで。
結界が何かを防ぐ気配を感じて。
必死に走って、会場になっている広間を抜けた。そこで私の記憶はプツリと途切れた。
*
⸺ここから先の記憶は、思い出せそうにない。
これ以上、私の記憶で暇を潰せる気がしない。
仕方無く、格子が入った窓から外の景色を眺めることにした。あぁ、どうしたら……なんて考えること自体、自分で出るという選択肢を無くしている。
既に、私が動かなければ何も起こらない段階。外の景色をぼんやりと眺めながら、何をするべきかを考えることにした。
ここでこの章は終わります。
次回更新は設定などになる予定です。
感想・星・リアクション等々あると、作者は喜んでチョロくなり、頑張って書きます。




