深緑は苦労人、時々ボケにさせられる
3ヶ月…未更新……( •ㅁ• ;)アッ
最後の方、割と下ネタ系?ギャグです。
度々その手のノリを出すので、苦手だと思った方は遠慮なく離れて大丈夫です。
「ふんふんふ〜ん♪」
あのレヴェルの39が、蝶が舞飛ぶ花畑で、随分楽しそうに鼻歌を歌っている……あの、引き篭もりで、全然喋らなかった、天秤が。
「あ!⸺ねぇ見て二人とも!ヨツバと同じ名前!四葉のクローバーだよ!」
リアは溢れんばかりの笑みでこちらに手を振っている……いや、原初No.7…お前にも向かってるから。俺にだけ向いている訳じゃないから! 頼むから割とマジな殺意に満ち溢れた眼差しを向けるのを止めてくれ、頼むから。
*
俺たちが依代様⸺セキネさんに引き取られてから、一年が過ぎた。俺たちがこの地に連れてこられた初日に、セキネさん直々に名を授かった。
レヴェルの39、天秤は”リア”
レヴェルの43、エンは”ユミカ”
原初No.7、嘘瞳は”アラン”
そしてこの俺。ヨゼルテックの17、幸運は”ヨツバ”
この地にいる間は今つけた名前で呼び合うこと。
しかし、気に入らなかったら改名してもいいこと。
そう言われたが、誰も名前を変えようとはしなかった。
⸺それから俺達は、凄く自由に過ごさせてもらっている。
リアは、セキネさんを師匠と呼び、その日ごとに思いついた行動をしている。
ユミカは、キカイという物に興味を持ち、セキネさんの研究室に入り浸っている。
アランは、初めのころはツクモの歴史について調べていたようだが、最近はスト⸺……料理を作ることにハマっているようだ。
皆、己の興味の赴くままに行動しているようで、この地に来た理由がセキネさんの研究を手伝うことだということを忘れていそうだ。⸺まぁ、そういう俺も、今まで触れる時間が無かった魔術を学んでいるから、全く手伝っていないが。
「⸺ヨツバ君、夕食が出来たそうですよ」
「ん…あぁ、もうそんな時間か。ありがとな、ヨウ」
「いえいえ。ボクはそういうことが染みついてしまっているだけですから」
ヨウは、俺とアランをここに案内した男の使用人だ。俺達がここに住み始めてからはヨウの仕事が敷地内掃除と庭の手入れだけになったらしく、そこそこ暇してるらしい。それって結構大変な仕事だと思うんだが……暇になるとか、元々どんな仕事範囲だったんだよ。
⸺あぁ、そうだ。リアたちを案内した女の使用人は、レイという名だそうだ。俺はあまり会話をしたことは無いが、結構おしゃべりらしい。
読んでいた本を元あった場所に戻し、リビングへと移動すると、既に俺とヨウ以外は席についていた。
俺達はビリだったようだ。
席につき、各々好きなように食事を摂る…ほんと、あの頃は想像もしなかった未来だ。
◆◇◆◇◆
俺は人間でいうところの、少年の頃からレヴェル家に顔を出していた。理由は……なんだったかな。あぁそうだ、逃げる先を探していたんだ。
その頃の実家は、ヨゼルテックの原種である祖父が世を去り、次のヨゼルテックを導くべき者は誰かという争いで、日々荒れていた。そんな状況から逃げるように、多数の者が辞職していくという曰くのある、レヴェル家との連絡役に立候補した。
連絡役に就いてから知った。連絡役が退職者多数だったのは、レヴェル家の噂との差異が大きな要因なのだろう。
誰にでも優しくて、使用人にも愛を下さる方々。
暴力を愛と呼び、痛みを極上の愛と言わせる方々。
この二行だけで、レヴェル家の噂の差異がよくわかるだろう。⸺俺も……理解した。
そんな日々が数年経った頃に出会ったのが、リアとユミカだった。
『……こんにちは』
『おにーさんが、ヨゼルテックの庭師?…ま、姉様に迷惑かけないなら、何処の誰でもいいけど。よろしくね〜』
初めて会ったときは、声をかけるどころか、攻撃を仕掛けてきた奴らよりはマシかって思ってたかな。
二人のことは、出会う前から、噂だけは聞いていた。
レヴェルの愛情が歪んでいると主張して、孤立した直系の末娘リアと、変わり者の分家の一人娘、ユミカ。
………ま、今じゃ、元気小ボケ娘と自称毒舌小娘になってるがな、はは。
*
アランとの出会いは、二人と出会ってから、幾分か経ち、月に二回ほどお茶をする程度の仲になった頃。
ヨゼルテックの管轄内の村から、不可解な事件が起こっている、そう報告が入って、その件を視察に行こうとした現当主⸺俺の伯母にあたる方⸺に、無理くり連れて行かれて、俺もその村に、行くことになったのが始まりだった。
まぁ…何があったか、は……正直、知らん。
アイツが、いつまで経っても俺に詳細を教えないからな。
だが、結果として…その村の住人の三分の二が、行方知れず。残りは……アイツの魔力となった。⸺それも、自ら…志願して、らしい。
それからアランを、ウチで一時引き取ることになり、ツクモとしての必要常識と、世界の一般常識なんかを教えた。⸺当主命令で俺は、レヴェルの庭師から、アランの付き人になったからな…あの頃は、割と素直だったな。
リアに会ってから、少々……いや、大分おかしくなったが。
それ以降アランは、ツクモの原初として動いてもらう為に、数々の夜会へ引っ張りだこだった。
セキネさんがスカウトした日。その日は、レヴェルが主催の夜会だった。
正直、アランがどうやってリアと会ったのか、知りたい気もするが……ユミカがニヤついていたし、アイツの仕業のような気がする、ていうかそうだろ絶対。
まぁアイツらとは、そんな出会いと関係があった訳だ。
◆◇◆◇◆
「あ、そうだヨツバ。この本、最近ヨツバが行ってる本棚にあったんだけど、よく読んでるの?」
食事が終わり、皆で談笑している最中、リアが一冊の本を取り出したのだが……その本が、少々問題だった。
「えっと、(ヨツバの名誉の為伏せ)その二って書いてあるけど…表紙の女の人が可愛いから、1から読んでみたいから……⸺あれ、ヨツバ?」
「……リィ。それ、ちょっとこっち渡してくれる?」
「ん? 分かったよアル。はい、どぞ」
あ、あばばばっばばばば………
「おーい、ヨツバー? 公開処刑されたから、固まってんのー?w」
「あっははっは!! ヒーっ、ヒーっ、リ、リア嬢、それっ、この場で言わない方がいいヤツですから…っくくww」
「……コチラの、不注意だったわね。それと、教育も必要だわ」
「うーん、その手の本って買ってあったけな。いやぁ、けど……前の家主が集めたのかな…?」
………………れ。
「……あー、なるほど。無駄な嫉妬だったのか…⸺リィ。コレ読みたいなら、セキネさんかレイに、授業を受けてからにしようか」
「えぇ〜……よく分かんないけど、わかった。ところで、なんでヨツバが固まってるの?」
「授業を受けたら自ずと分かるから」
「あ…うん」
ははっ……。
「誰か…俺を殺してくれ…」
*
⸺数日後、リアから謝罪をもらったが、それでも俺の傷は癒えなかった。
最後のアレは、ヨツバというキャラが生まれてから結構すぐに決まった流れです。色夢になったことで、初っ端からバラされることになりました。