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14. 領都への道のり

 領都へ向かうレオたちの往路は2泊3日の、のんびりとしたものだった。


 一行のリーダーはゴードン。元兵士であり、他国から様々な地方を渡り歩いて開拓村へとやって来た経歴を買われ、外部との折衝が必要な場合にはリーダー役を務める事が多かった。村に来た直後から、貢納のための輸送隊に加わり、3年前からはリーダーを務めていた。


 今年の輸送隊は総勢8名。領都まで運ぶ村の産品は小麦と魔石、それに魔物の毛皮である。荷馬車2台をそれぞれ2頭ずつの馬が牽く。運んで行く小麦は二分して馬車に載せ、各人の私物が入ったズタ袋や食料と共に魔物の毛皮でその上を覆う。さらにその上に、雨除けも兼ねて、蝋を塗り込んだ大きな布を被せる。この布は、野営の際の天幕にもなるのだという。


 馭者以外の者は徒歩で護衛の役割を果たす事になる。領都までの距離は、地球の距離単位で言えば、概ね80kmくらいである。


 初日の昼休憩まで歩いたところで、レオは随分と余裕のある移動だと思った。

ゴードンにそう言うと、移動中は何があっても対処出来るようにゆっくりなんだと教えてくれた。今の歩行ペースは、さして疲れもせず、身体も解れたままなので一番良いのだと。あと、夜には寝ずの番もあるから、村にいる時と同じ感覚で行動してはいけないと注意された。


 領都までの途中には3つの村がある。これらの村々は開拓村も含め、領都から見て南の方向に川沿いに並んでおり、領都から近い順に南の一の村、二の村、三の村と呼ばれていた。この順番は、そのまま開拓された順番でもあると言う。いずれ、開拓村も大きくなって既存の村と同じ規模になれば、四の村と呼ばれるようになるらしい。まあ、その辺は領主様しだいという事であった。


 領都への移動では、これら3つの村に立ち寄る事は無く、夜は草原での野営だと聞かされた。他の村には寄らないのかとレオが尋ねると、寄ったところで、ろくな宿も無いし、どうせ村の広場での野営がせいぜいだと言う。どの村も魔物の襲撃が無いので、開拓村ほどの防御柵は無く、草原で野営するのと大差無いのだそうだ。


 それよりも、他の村の連中は開拓村の人間を見下しており、嫌な思いしかしないので立ち寄らないのだとゴードンは教えてくれた。領都に近い村ほど古くからあるせいか、自分たちの事を格上だと思い込んでいるのだそうだ。


 当然、どの村も開拓村を低く見ているのだが、そんな中でも開拓村に対して一番威張り散らすのが三の村なのだという。一番古くからある一の村が一番威張っているのではないのかと聞いたら、三の村は、開拓村が出来るまで散々馬鹿にされ続けて来たせいで、開拓村という目下の存在が出来ると率先して威張り散らし、傲慢な態度を取っているのだという。それまでの鬱屈が、よほど溜まっていたらしい。


 そのくせ魔石だけは欲しがるそうで、開拓村が出来たばかりの頃、村まで押しかけて来て魔石を寄越せと一方的に要求し追い返されるという騒ぎまであったそうだ。


「暮らし向きは大差なくて、どこも似たようなもんなんだけどな。でも、自分たちの村よりも領都から遠い村を馬鹿にして、自分たちの方が偉いんだと思い込みたいわけだ。都会に住んでる人間から見れば、嗤っちまうような話なんだがな。まあ、どこの国も似たようなもんさ」


 ゴードンの話を聞いて、そんなもんかとレオは思ったが、自分の村と大差ないと言われて興味を失った。


 一行は草原をひたすら進み、二の村を目指した。開拓村に一番近い三の村は遠くに見えただけだった。魔石の因縁もあって絶縁状態なのだが、それ以前に、開拓村から三の村、そして二の村へと至る経路で川が大きく湾曲しており、川沿いに進んで三の村の近くを通ると遠回りになるのである。持参している水魔石のおかげで水に困る事は無いので、あまり川沿いのルートに固執する必要は無かった。


 これまで、成人前は村から遠くへ行く事は禁じられており、他の村との地理的な関係は知らなかったし、もちろん近くまで行く機会も無かった。大河の湾曲も今回初めて知ったしだいである。


 歩きながらレオは先ほど聞いた、寝ずの番の事もあり、いつもの魔力枯渇による寝落ちを移動中は止める事にした。以前、村で夜中にボヤ騒ぎがあった時、魔力枯渇の末に爆睡中であったレオは、周りの者たちがどれだけ起こそうとしても起きなかったのだ。周囲に防護柵も無い夜の草原で、突発事態が発生しても起きなかったでは洒落(しゃれ)にならない。


 今回の領都行きでは、運んだ小麦は全て領主家に納めるが、魔石の一部や魔物の毛皮は商人に売るそうだ。それで得たお金で開拓村に必要な品を買うのだという。商店など無い開拓村では、使い道が無いお金など誰も持っていなかった。レオも昔ゴードンに見せてもらった事はあるが、使った事はもちろん無い。原魔石と同様、お金も村長が一括して保管しているのだと、昔聞いた事がある。ゴードンからは、領都に着いたら試しにお金を使ってみるかと言われていた。


 領内の各村からの領主への貢納は、現金ではなく小麦を中心とした農作物だ。

開拓当初の開拓村では最初の数年間、小麦の貢納は免除されていたが、貢納どころか自分たちが食べる食料すら十分ではなかった。その頃は魔石や魔物の毛皮を領都で売って、その金で食料や生活必需品を買っては村へと運んでいたそうだ。


 今では村の周辺の開拓も進み、村で消費する以上の小麦を安定して収穫出来る様になったので、領主家への貢納も問題無い。まあ、村の人口比で言えば、他の3つの村の3分の1程度が本来の貢納量なのだそうだ。

 しかし、その本来の貢納量は今運んでいる馬車2台分よりもずっと多いらしい。開拓村の場合、魔石による小麦の貢納量相殺があるため、本来よりもかなり少なく済んでいるという。馬車2台分の小麦というのは、普通の村ではあり得ないほどの少ない量なのだと教えられた。


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