表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

喧嘩別れの雨の交差点

作者: すあま

コンビニを出て百メートル歩いたところ、ビニール傘のぼやけた世界の向こう、見慣れた後ろ姿を見つけた。

振り向くな、振り向くな、と念じる小さな交差点の一角。



『この傘を使って帰るといい』



その折り畳み傘は、私のすぐ目の前で開かれている。

重いグレーの傘。

空と同じ色ね。



私が欲しかったのはそんな言葉じゃなかったのに。

例え片方の肩が濡れたって、あなたの隣にいたかったのに。


あなたが私を気遣ったって知っているけれど、譲りたくなかった。


結局、私の肩は両方とも濡れている。

それどころか、スカートも、膝も、靴も、髪の毛も。


だって私はあなたを置いて駆け出した。


『さようなら』


そう言って。


借りれば良かったなんて思っているわけじゃないけれど、この雨のこと、走って帰るにも限界があった。

駆け込んだコンビニの先はあなたの帰り道。

私を送るときには決して通ることのない道。



今はただ、傘に阻まれた距離が憎い。

雨なんて降っていなければ、あなたの隣へ近寄れたのに。



小さな交差点の、全ての信号が赤い一瞬が終わる。


あなたは私の目の前を通り過ぎる。

顔は、前を向いたまま。

私の姿を瞳に映さないようにしたまま。


せめて私の行く手の信号が先に青になったならば、私はあなたの目を見つめれたわ。

ごめんなさい、だって言えた気がする。



だけど、あなたは去っていった。


きっと、もう、二人は元に戻らないまま。



雨は、夜になっても降り続いたまま。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 深いです。
2010/02/10 23:42 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ