キックボードで走り出しそうなメロス
メロスは激怒したああああああゆきいいいいいい。
ねえ。
ちょっと待てぃ(相席食堂)。あのな、お前な。メロスは必ず、かの邪知暴虐な王を除かなければならぬと決意したばかりなんよ。 だからちょっとそこで黙って見とけ。
はいどうも~、メロスには政治がわからないというわけでね。漫才始めていきますけどもね。え、メロスって、村の牧人なん!? マジでー、意外~!
笛を吹き(M-1の登場曲)、いや今更鳴るとかそんなんある!? え、ああ、ふーん、羊と楽しく遊んで暮らしてきたん? お前……知らん間に腕上げたな?
ほんほん、けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感やったん? いや、遊んでたお前がどの口で言うねーん! ……ってやめさせてもらうわ!
七時のニュースです。
本日未明メロスは村を出発し、野を越え山を越え、十里離れたこのシラクスの町に上陸。今後は勢力を徐々に落としながら、北北西へと進んで行くものと思われます。お出かけの際には十分ご注意ください。
メロスには父も、母もない。女房もない、ピアノもねぇ、バーもねぇ、電気もねぇ、オラこんな村イヤイヤなのであった。
メロスは十六の、内気な義妹と二人暮らしだ。感じるぞ。これは、ラブコメの波動……! この妹は、村のある律儀な一牧人を、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近なのである。
だが兄ちゃんはそんな事絶対に許さない!
そう言ってメロスは王を除かず風呂を覗いた。
バスタオル姿の妹から、割と本気の馬乗り殴打をされたメロスは、若干の興奮を覚えながら、花嫁の衣装やら祝宴のごちそうやらを買いに、はるばる町までやってきたのだ。
まず、その品々を主にAmazonで買い集め、やっぱり買い物はネットだな、メロスはそのようにいたく感心をして、それから都の大路を手ぶらで歩いた。
メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。
今はこのシラクスの町で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく会わなかったのだから、訪ねていくのが楽しみである。
あれれ、おっかしいなぁー。歩いているうちにメロスは、町の様子を怪しく思った。
ひっそりしている。日も落ちかけて、町はやうやう暗くなりゆくけれども、なんだか、夜のせいばかりではなく、町全体が、やけに寂しい。もう一つおまけに言うなら、俺のハートも寂しい。近所でも一番ののんき者を自称するメロスも、だんだん不安になってきた。
そうだ、ここは一つ素数でも数えよう。
秒で飽きた後、道で会った若い衆と、魔法少女アニメの話で意気投合、和民で飲み明かし、何かあったのか、二年前にこの町に来たときは、夜でも皆が歌を歌って、町はにぎやかであったはずだが。メロスはべろんべろんのぐでんぐでんになりながら、できうる限りのウザ絡みをした。
若い衆は、首を振って答えなかった。そう、何を隠そう彼は、若年性認知症だったのだ。であればわかろうはずがない。
しばらく歩いて老爺に会い、今度はもっと、激しく語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。
何を隠そう彼は、両目を開けたまま眠りこけていたのだ。メロスは両手で老爺の体を、シェイカーのごとく上下左右に揺さぶって、質問を重ねた。老爺は、辺りをはばかる低声で、わずかに泡を吹きながら答えた。そう、これが後にジントニックと呼ばれるカクテルである[要出典]。
「王様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「ここで、問題です。(ジャジャン!)なぜ王は人を殺すのでしょうか~?」
「うーん……ノリで?」
「はい、初めは王様の妹婿様を。それから、ご自身のお世継ぎを。それから、妹様を。それから、妹様のお子様を。それから、皇后様を。それから、賢臣のアレキス様を。」
「それは引くわ。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずることができぬ、というのです。この頃は、臣下の心をも、眼鏡の小学生探偵ばりにお疑いになり、少しく派手な暮らしをしている者には、人質一人ずつ差し出すことを命じております。ご命令を拒めばHな隠しフォルダを強制公開されて、社会的に殺されます。今日は、六人殺されました。」
聞いて、メロスは激怒した。「あきれた王だ。俺なら十人は殺れる。」
メロスは、大層負けず嫌いな男でもあった――。