7-9 エドナサイド
スイレンさんの救出に成功したあたし達は、スイレンさんを連れて、出口を探したんだよ。カチュアさん達の合流はその後になったんだよ。
だけど。やっぱり、迷ったんだよ。それで、取り敢えず、入った部屋には……。
「ここは……」
「危険種がいっぱいいるんだよ!」
「エドナさん。あれは恐らく魔物ですのよ。それに燃えている鳥がいますわ」
あたし達は、その魔物を収容されている部屋に入り込んだみたいなんだよ。
「ファイアーバードか。それに飛竜もいる」
飛竜と呼ばれた魔物は、大きなトカゲに翼を生やしている様な見た目なんだよ。
ファイアーバードと呼ばれている鳥の魔物は、全身燃えているんだよ。自ら焼き鳥になるために、燃えているのかな? 変わった鳥なんだよ。
「エドナさん。何で、涎が出ているんですか?」
あ! 涎が出ていたんだ。慌てて拭いたんだよ。
「全く! 何の騒ぎだ! ぼくちんの屋敷に、族でも侵入したのか?」
あたし達の前には、少し髭を生やした……、おじさんと呼べる年齢よりも低そうな……、おじさんが姿があったんだよ。
「ん! 人魚族の娘が、何でここに!?」
「マイクラン! お前、何でこんなに魔物を収容しているんだ! 国からの、許可を得ていない、魔物の収容は禁じられているはずだ」
「ん! 誰だね! 皇女様に似ているが!」
「その皇女様だが」
「嘘をつくな! 皇女様が、そんな破廉恥な格好をする訳がない! 男のロマンであるが」
「ユミルさん。男のロマンって?」
「エドナさんは知らなくっていいのですのよ!」
何故か、ユミルさんの顔を赤くなっているんだよ。
「まあ、よい。よく見たら別嬪、揃いだから、捉えるか。ぼくちんの偉大なる計画の邪魔をされたくないからな。捕まえたら。ぼくちんが……はあ、はあ、遊んでやろう」
「はぁはぁ」と発しながら、息切れ? をしているんだよ。
「あの人、あまり動いてない、ようなんだけど、息が荒いのは何故?」
「少なくとも、捕まったら痛い目に遭うことだけ、頭に入れとけ!」
痛いことと、あの人の息切れをしているのは関係あるのかな?
「よし、用心棒として雇った、お前の出番だ」
誰が来たんだよ
「よ! よ! 俺の出番! やっときた! 俺の名はヴォルト! 暴れてやろう! それしかない! 戦場はパーティ! 楽しもうぜ! それしかない!」
リズムカルに名乗り? を上げて現れたんだよ。
「歌うな! やる気がない歌を歌う猫娘といい! 何で、耳障りな歌を歌奴らが寄ってくるんだよ!」
「愉快な人が現れたんだよ!」
「あれでも、敵だよ。気を敷き締めなさい」
ヴォルトと名乗っていた男の人が、あたし達に向けて、指を指して「チェケラ!」と叫んだんだよ。すると、指先から、「ビリビリ」と音を立てながら、電撃が放出されたんだよ。
「発動が早い! 勇能力の無詠唱魔法?」
あたし達は慌て、避けるんだよ。だけど、次から次へと、電撃が襲う掛かるんだよ。
「ゲス兄より強いな!」
電撃を放出しているヴォルトだったんだけど。
ドーーーン。
派手に転んだんだよ!
「今転んだ! あたしじゃ、ないんだよ!」
「あの~、何言っているッスか?」
あっ! あたし、自分以外が転んだのところを滅多に見ないからつい。あたしは、一日十回以上は転ぶのに、カチュアさん達はまったく転ばないんだよ。何でだろう?
それは置いといて。
ヴォルトの足首には鎖が巻かれていたんだよ。その鎖は床から出てきたものだったんだよ。
この鎖は、アイラさんの仕業かな?
すると、そのアイラさんが、あたし達の手前に立つんだよ。
「下がっていて、奴は僕ではないと」
アイラさんの右手には剣が。アイラさんの武器って、鎖じゃなかったけ?
「男と、男の勝負、負けられないぜ!」
ヴォルトと名乗る人は背が高いをだよ。その身長を、超える長さの槍を構えて、突っ込んできたんだよ。
「ぐほほほ!!!」
何故か、後方へ飛んでいったんだよ。
「僕は女なんですけど」
アイラさんの剣が伸びたんだよ! アイラさんが剣を後ろへ引くと、あたしが知っている剣の形に戻ったんだよ。
「不思議の剣なんだよ!」
「あれは、蛇腹剣ですの?」
「そう、アイラのメイン武器だ」
立ち上がったんだよ。刃部分が当たったところは傷がなかったんだよ。あれが、勇能力の障壁なのかな?
「なら」
アイラさんを中心にして、走りながら周っているんだよ。
そして、さらに、周りながら、槍による連続突きをかましてきたんだよ。
それに対して、アイラさんは蛇腹剣を伸ばして、頭の上から腕を回して、アイラさんの身を囲み、槍による攻撃に対抗しているんだよ。
しばらくすると、真上目掛けて、飛んでいったんだよ。見ると地面から出てきた鎖がお腹に命中したんだよ。
アイラさんの足場には鎖が地面に刺さっていたんだよ。
「何をしている! とっとと捕まえろ!」
マイクランが何が、両腕を上下に振っているんだよ。飛ぶのかな?
バギ!!
「あ!」
マイクランの腕がレバー見たいのに当たって、下へ下がったら、レバーが折れたんだよ。
すると、魔物を閉じ込めた檻が、次々と開き始めたんだよ。
「のおおお!!! 魔物が!!!」
魔物達は、次から次へと檻から出てきたんだよ。
「今回はあたしじゃないんだよ!」
「あの~、だから何を言っているッスか? いや、そんなこと言っている場合ッスか!?」
逃げようとしても、魔物達があたし達の方を見つめているんだよ。完全にあたし達を標的にしているんだよ。
一方、アイラさんは魔物達が脱走しているのも、関わらずに、襲ってくるヴォルトと、未だ交戦中なんだよ。
「おい! こんな状況なのに、僕と相手にしている場合か!?」
「こんな奴ら! 俺なら! 楽勝ー! よ!」
「だめだ! すまないが、この空気が読めない、勇能力使いは僕が、マリン達は魔物の相手を頼む!」
「わかったぜー」
マリンさんは鎌、ユミルさんは刀、そしてあたしは弓と、それぞれ、武器を取り出し、戦闘の姿勢を取ったんだよ。
「私もサポートしますッス」
スイレンさんは武器らしい物を取り出したんだよ。でも、見たことがないんだよ。ナイフケースかな? それよりも細いんだよ。
「助かるが、テメェーは何が、できるのか、聞いてもいいか? 歌は知っている」
「魔術は水と光。それと、これです。囚人から強奪したものを集められたところにありました」
スイレンさんの持っていたナイフケース見たいな型をした武器? が形が変わったんだよ。ケースが扇型になったんだよ。
「扇か?」
「はい。正確には、鉄で、できている扇、鉄扇ッス。基本は盾代わりで扱いますが、魔術の付着で多様な技も可能ッス」
「そんな変わった武器があるんだね」
「来ましたッス」
スイレンさん中心に渦が発生したんだよ。マナーガルムの拳は渦ずの勢いが強く、弾いたんだよ。
渦が消えるとスイレンさんの姿がなかった。
スイレンさんはマナーガルムの真上から光り輝く拳で頭を殴りつけたんだよ。マナーガルムの頭がへっこんでいたんだよ。
新たに、マナーガルムがスイレンさん目掛け殴りつけようとしたんだよ。だけど、スイレンさんは鉄扇を振ると、渦が現れたんだよ。マナーガルムの拳は、その渦を殴ったんだけど、渦は拳を弾いたんだよ。
「あれ? スイレンさんは?」
スイレンさんは、いつの間にか、マナーガルムの真上にいて、縦回転しながら降下して、マナーガルムの頭の上に踵落としを決めたんだよ。
「スイレンさん、強いです」
あれ? マリンさんの目が点になっているんだよ。どうしたんだろう?
「どうしたの? マリンさん」
「彼女、本当に人魚族か? 妾が知る人魚族ではない。身体能力高過ぎし、肉弾戦が主流な人魚族見たことないが」
「そうなんですか?」
「確か、人魚族って、不思議な歌で力を与える亜種と聞くぜ」
歌? あれかな? 囚人部屋で聞いた綺麗な歌声はスイレンさんの歌声だったんだ。もしかして、敵が寝たのは歌のせい?
そんなこと思っていたら。
シューーーン。
「とーッス」
「わ!」
ビックリして転けたんだよ。
スイレンさんが、あたしの前に落ちてきたんだよ。あたしと違って着地が上手いんだよ。はうう、羨ましいんだよ。
「ところで、あれは掘って置いていいッスか?」
あれ?
「いや! いや! 魔物! いやぁぁぁ!!!」
久しぶりに見たんだよ。ユミルさんが目にも止まらない速さで刀を振っていたんだよ。魔物の原形がなくなっているんだよ。
「あれに近づくと妾達が危ないぜ」
ふっと、上を見上げてると。
「何か、来るんだよ!」
あたし達の前に大きな鳥の魔物が降りて来たんだよ。
「ファイアバード。上級魔物ッス。手強いッス」
やっぱり、鳥が燃えているんだよ。
「あれは……」
「どうしたんだ、エドナ!」
「自分から焼き鳥になるための魔物かな?」
「エドナちゃん。涎が出ているッス。それに相手が魔物である限り、魔物の肉は毒があるッス」
「そうだったんだよ」
はうう。忘れていたんだよ。魔物の肉は食べれないんだよ。
「おい、そんなこと言っている場合じゃないよ!」
ファイアバードの嘴から火を吹いたんだよ。
「危ないんだよ!」
慌て避けるんだよ。避ける時に足を躓いて、転がっちゃったんだよ。
「はうう、こうなったら」
起き上がって、あしたは風の弓を作ろうとしたんだよ。
「エドナちゃんダメッス。それは、さっき放った風の矢ッスよね? 風力で逆に火が激しく前上がる可能性があるッス。そうなったら、この辺火の海になってしまうッス」
「そうなんですか?」
あたしは風の矢を作るよをやめたんだよ。作りかけの矢は消えていったんだよ。
「また来るよ!」
ファイアーバードは息を吸い込んでいる。火を吐き出すんだよ。
どうしよう。あたしは風と治癒以外の属性は扱えないんだよ。そもそも、それに適した魔石を持っていないんだよ。
ゴゴゴゴ!!!
天井辺りから、大きな音が聞こえるんだよ。




