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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第七章 守るべきもの
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7-4 ナギサイド

 何日か、掛かったが、カチュア達はようやく、中間地点である、サイサの村にたどり着いた。


「着いたんだよ。……でも」


 ここが中間地点であるサイサの村。しかし、村内に建っている家の何軒かは、壊されていた。


「カチュアが、村にある方角辺りの様子が、おかしいと言っていたが、急いで見たら、悲惨な状態だ」


 そう、少し前に、アイラから、目的地に着く事を教えたら、カチュアが賑やかな声が、聞こえないと言って、急いで、村へ向かったら、この有様だ。


 その途中で、エドナが転んで、列にぶつかり、ユミルを除いた、皆を巻き込んで、川に落ちてしまった。ユミルは幸い飛べるので、川に落ちないで済んだ。


「しかし、よく分かったな。村の様子がおかしいって」

「わたしは耳がいいから~」

「あたしは目がいいんだよ!」

「エドナちゃんほどじゃないけど、目はいいわよ~。あとは嗅覚もいい方だわ」

「偵察には有能なスキルだな!」


 すると、頭が血塗れの男性を見たエドナが駆けつけて行った。


「今、治すんだよ!」


 エドナが治癒術をかける。


「あれ? 傷が治らないんだよ」

「あの~、これ、怪我人運ぶのに着いた血なんです。自分は元々怪我をしていないのです」


 紛らわしな!!


「何があったんだ?」


 マリンが尋ねる。


「山賊に襲われたんだ」

「ここに、警備隊とか配置していないんですか?」

「一応、来ています。ただ、どこの村も、襲われていて対象できない話です」

「……ここの領主は確か、ジョルジュだったな、アイ……アイちゃん」

「そうですね。マリ……マリちゃん」


 有名人である、マリンとアイラは正体を隠すため、本名を伏せた名で、呼び合っている。柄の悪い、マリンが『ちゃん』付けで、呼ぶのは、違和感があるな。


「あれ~、二人って互いに『ちゃん』付けしてたっけ~?」

『もしもし~。空気読んで~』

「ちょっと、失礼!」


 マリンはカチュアの手を引っ張って、村人が聞こえないところまで、移動した。


「ちょ! バカ! 一応、名前を伏せていたのに」

「え! どーしたの?」

「カチュアさん。お二人の名前はこの国には知れ渡っていますわ」

「え? どーして?」


 全く、状況を理解していない、カチュアの頭の中は、きっと、ハテナで埋め尽くされているだろうね。


 いや、二人はこの国では有名な方だよ。本名、言ってはいけないだろ。


 いや、それ以前に、この二人顔隠していない。皇女様と二十年前の英雄の一人なのに。寧ろ、有名ではないカチュアは、主に髪を隠している。


「お主、天然か? 本質でテメェー見たいな性格そうそういないぜ」


 マリンが呆れ顔をしている。


「まあ、カチュアは置いといて。……今の話からすると、恐らくマイクランが、ちょっかいでも出しているのかな?」

「マイクラン? って、誰~」

「隣の領で、ある領主だ。ジョルジュとは因縁がある話しだ」

「そう言えば、レティが言っていたな」

「というよりかは、盗む聞きしていたんでしょ」

「るっせーな! まあ、そのレティからマイクランが反乱計画を立てているって話を、聞いたことがあるな」

「あれ? でも、村を襲ったのは山賊さんなんだよね? 何で、そのマイクランという人が出てくるのかしら?」

「その山賊がマイクランが雇った連中か、マイクランの部下が山賊に扮している可能性がある」

「そーなの〜?」

「自称、策略家で、姑息な方法で人を貶める。マイクラン本人がやらかしている事はバレバレだが。大方、自分の仕業だと諭されないように山賊の仕業に、差立てたかったんだろうな。さっきも言ったが、レティが言うには、反乱計画を立てているらしんだ。一応、周りに知られないように、計画をしていたようだけど。レティには、筒抜けのようで、バレバレ見たいだぜ」


 マヌケな策略家だな。そんなマヌケさんは今頃、反乱計画を隠し通してドヤ顔しているんだろうな。計画を漏れているのも知らずに。


「まあ、だが、証拠はない……。カチュア! 悪いが、この状況掘って置けない。妾はマイクランのところへ向かうぜ」

「え!? いいわよ~」

「あっさりだな!」

「ん? 断る理由ないでしょ~」

「それは、それでありがたいんだけど」

「じゃあ、行きましょう~」

「待って! エドナとユミルはどうする?」


 マリンはエドナとユミルに尋ねた。


「行くんだよ!」

「わたくしもですわ」


 即答。


「迷いないな~」


 また、寄り道か。まあ、仕方がないか。


「早速、行くんだよ」


 いつものように、頭の回転よりも、体が動き出し、風のように走り出した。


「早いな! あの乳の大きさで良く走れるな」

「だけど、道わかっているのか?」

「一応、方角は合っていますが」


 合っているんだ。


「あの~。わたくし、飛んで、行きますわ」


 ユミルは翼を広げて、エドナが走った方へ飛び立った。


「妾も速い方だが、あそこまで、速く走れないな」

「じゃあ、行きますよ~」

「ああ」

「どーしたの?」


 歯切れが悪いな。本当にどうしたんだ、マリンは?


「いや、ここまで来るのに、その……歩きにくいなと思って。何の苦痛に感じる様子がない、皆が羨ましいな」

「ああ、マリンの普段は整備されているような道しか、歩かないから、山や森などでは慣れていないからな。歩きにくいんだよな?」


 成程、普段王宮や街でしか、立たない皇女様にとって、整備されてない、凸凹道などを、歩くのは苦痛なのか。


「まあ、慣れだけど。今は急がないとだな。アイラと一緒に先に行ってくれ」

「マリンちゃん! わたしの背中に乗っていく?」

「いや、遠慮していく。それに、テメーは既に大剣を背負っているんだが」

「遠慮しないで~。わたし、エドナちゃんよりかは、遅いけど、足は速い方だわ~」

「いや! 恥ずかしいから」


 否定をし続けてはいったが。


「結局乗るんですね」


 カチュアの背中に乗るマリン。


「恥ずかしいが、一応、好意には応じないと」

「行くよ~」


 カチュアは風のように走り出す。


「ぎゃあああああああああああ!!!」


 第二の犠牲者を産んでしまった。


「いやあああああああああああ!!! エドナさーーーん!!!」


 向こうでも、叫び声が聞こえた。代々は、予想がついてしまう。

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