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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第七章 守るべきもの
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7-1 ナギパート

『は~。やっと、帝都から出られる』


 ここは皇帝がいる帝国中心の街なのに、治安が悪過ぎる。


 カチュアとエドナが最初に訪れたアヴァルの街の方が治安はよかった。時々、小競り合いはあるが。


 昨日だって、街に歩いていると、エドナのポケットに入っていた財布を盗ろうとした、スリがいた。幸い、カチュアが気づいてスリの腕を掴んだ。咄嗟とはいえ、関節と反対側に曲げたのはやり過ぎのような。


 カチュアの前で犯罪行為をすると寿命が一気に縮めまるな。そもそも、犯罪が起きない方がいいが。




 出発の日。帝都、入口。


 カチュア達の旅立ちにルナが見送る。


 カチュアの衣装が今度はソフィアが来ていたような、エプロンとドレスが組み合わせたような服装になっている。蒼い髪は結んで、頭に被っているキャップに入れていた。若干、蒼い髪が見えているけど、大丈夫なのか? 


 ちなみに、この衣装は、この場には、いない、ソフィアが用意してくれたものだ。何に使うんだ?


 前回の暗殺者との交戦で壊れた大剣は、ルナの兄である、アルヴスが変わりの大剣を用意してくれたのを、現在装備中。


「出来れば、ロゼちゃんに挨拶したかったわ~」

「あの人はヴァルダンの残党狩りに行かされているのです」

「そっか~。残念だわ~」


 ロゼちゃんこと、ロゼッタはカチュアの幼馴染で、八騎将の一人シグマの部下だ。


 この帝都では、見かけないと思っていたが、遠征中だったのか。


「それじゃあ、行ってくるんだよ」

「エドナさん、目的地は何処にしたんですか?」


 小人族探しだっけ? その小人族は何処にいるかは分からない。無計画で探すのは。


「……カチュアさん。どこですか?」

「ん~、どこにいこうか~?」

『決めていないんかい!』


 心の叫びでいつも、表に出てしまう。実際は私が喋りたいことをカチュアの口に出してしまう。私とカチュアの喋り方に特徴の違いがあるため。迂闊に表に出てしまうと、私の存在を察しられる。だから、常に表から出ないように、カチュアと会話する。


それはそれで、……私の出番が減ってしまう!


 だから、聞きたいことがあったら、表に出て聞いたりする。勿論、周りに、私の存在を認知していない人がいる前では、しない。……つもりだ。


「そんなことだと、思いました」


 想定内といえば、想定内だ。


 相変わらずだ。特に困った態度を表さない。能天気な二人。


 よく、考えれば、エドナはカチュアと出会うまで、村から出たことがない。カチュアは七年も旅をしていたが……、迷子見たいなものだ。だから、地理には然程詳しくはない。


 ちなみに、ルナは今回、カチュア達とは同行をしない。引き続き、調べものがあるらしい。

 

 他はユミルが引き継ぎカチュア達に同行。その従者のソフィアは主人を残して、セシル王国へ戻っていった。


 そして、カチュア達の旅に、新たに同行するのが。


「じゃあ、ヴァルダンの近隣にある渓谷に向かうのはどうだ? あそこはヴァルダン領土だが、人が立ち入れない谷だから、小人族がいる可能性があるじゃねぇか?」


 突然、現れた、この少女は皇帝の娘マリン。この皇女様が一応、同行することになった。


「あなた、その格好は?」

「流石に、あの格好では戦い難いから、庶民的な格好にしてみた」


 庶民でも、そんな、際どい衣装なんてしないだろ。


 一見、上半身下着見たいだけど、よく見れば、鎧を下着の形にした物だ。こういうのなんて言うんだっけ? ビキ……うん、分からないな!


 てか、エドナ程ではないが、小柄の方なのに、スタイルいいな。カチュアで隠れがちになるが。


「じゃあ、そこにしましょ~」

「いや、まだ、あそこを通るのは……戦争に勝ったとはいえ、まだ、ヴァルダンの残党兵がいのです」

「考えはある。まずはサイサという村を目指そう。あそこは国境に一番近い村だ」

「あそこはヴァルダンとの国境線ではないのでは?」

「だからだ。ヴァルダン経由で向かうのは危険。それなら、ロランス聖国を経由して向かう。丁度、ヴァルダンとロランスの国境線には例の谷がある。報告では、サイサの村はヴァルダンの襲撃被害は受けていないそうだ」

「驚きました! あなたがここまで、考えていたなんて! 兄の追いかけしか頭にないと思いました」

「追いかけは否定しないが、何か酷い言われ様だな、妾は」


 追いかけは否定しないんかい。


「しかし、旅に行くのは、カチュアさん、エドナさん、ユミルさんにストーカー皇女様の四人。何か心配です」


 強いが基本のほほーんとしたカチュア。ドジをやらかしたら、その場が、被災化にさせていしまう程の力を持つ、ドジっ子エドナ。人見知りでパニックになると、未栄もなく斬りつけるユミル。そして、ストーカー皇女のマリン。確かに心配だ。


 ユミルの臣下であるソフィアは主君を置いて、セシル王国へ戻って行った。まあ、ユミルがカチュア達と同行したい、とのことで、ユミルはセシル王国へは戻らなかった。主君を置いて帰ってよかったのか?


「いや、ストーカーではなく、愛を求める狩人だぜ」

「え? マリンさんも狩をするんですか? 今度、一緒に狩をしましょ」


 エドナが思っていた「狩」ではない気がするんだが。


「でも、大丈夫だぜ。もう一人、旅の同行者がいるぜ」


 同行者? マリンの臣下かなんかか? 皇女だから、いるにはいるか。


「久しぶりだな」

「あ! いつかのイケメンさんですわ」


 どこから、現れたんだよのか。帝都を初日訪れた時に、出会ったイケメン男性だった。


 ユミルの顔が赤くなっている。恋する女性のような表情をしている。以外と惚れっぽいところがあるのか?


 あれ? あの人って確か……。


「あ! でも、女の人なんですよね?」


 ユミルが萎れている。


「よく、間違われるんだ」


 そうなんだ。一見、イケメン男性に見えるが、実は女性なんだ。それなのに、カチュアはよく女性と分かったな。あの後、聞いても「どこからどう見ても女性だわ~」てしか、答えてくれなかった。


「そう言えば、名を名乗っていなかったな。……僕はアイラだ」


 何か、名前に聞き覚えがあるような……。


「アイラさんよろしくね~」

「カチュアさん! 其方、気づいていないのですか?」


 ユミルが驚いた表情をしていた。ルナも同じだ。


「アイラって、どこかで聞いたことがあるんだよ! どこだっけ!?」

「二十年前に悪帝を倒した空の勇者の一人です」


 思いだした。確か、八歳で空の勇者と呼ばれる英雄になったんだっけ?


「そうなんだ~。よろしくね~」

「よろしくなんだよ!」

『リアクション薄いな』


 相変わらずのお二人さん。


「あなたが、アイラさん。だから、ロゼッタさんに似ていたんだすね」

「どうしてですか?」

「ロゼッタさんのお母さんはユンヌさん。ユンヌさんとアイラさんは従姉妹なんです」

「じゃあ、ロゼッタさんの叔母さんなんですね」

「血縁関係は遠いが間違えではない。ただ、叔母さんって、言われるのは……彼女とは十歳違いだし」

「でも、何で行方のわからなかった、アイラさんがここに?」

「まあ、色々と事情があってな。僕のことは誰にも言わないでくれよ。僕がここにいることは、皇帝を含めた、二十年前の僕らの仲間は知られたくないんだ」

「は~……」


困惑しているが、頷いたルナ。


「それよりも……」


アイラはカチュアがいる方を見て。


「カチュアだっけ? 旅に出る前に、あんたと、手合わせしてみたい」


 いや何故! いきなりすぎる展開!


「何で?」

「これから一緒に旅に出るんだから、互いの力を知って、おくべきだ」

「なるほど~。わかったわ~」

『え? そんな、あっさり』

「まあ~、いいかな~?」


 


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