表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第六章 皇帝の血筋
86/348

6ー回想② サイド

 妾が四歳の頃。


「ゲラちゃん、今日も顔がムラサキでいやがるね。お酒は程々に飲まなきゃ、だめだぜ」

「もんじゃちゃん、今日もショクシュみたいなヒゲを生やしていやがりますね」


 妾は二つの人形で遊びをしていたところ。


「うっ、ひゃ、ひゃ、ひゃ!」


楽しく人形遊びをしていたところに。人を不愉快にさせる、品のない笑い声が聞こえ、いやがってきた。


「何処の野郎も大したことはない」


 そこに現れたのは、妾の当時六歳の兄だ。この時から、小さな子らしい、純粋な心は持っていなく、自分の持つ力、勇能力を他者に見せびらかし、見下し発言をするゲス野郎だ。


 やけに上機嫌でいやがる。また、他者をディスっていただろう。不愉快だ。人形遊びの邪魔だった。


「おい、人形遊びの邪魔だぜ、ゲス兄」

「て! 誰がゲスだ! てか、四歳がゲスなんて使うなよ! 品がないな! 四歳とはいえ、仮にも皇女だぞ、貴様は! 品性のない妹がいるなんて、恥ずかしいだろ!?」


 いや、あんたの笑い方も品がねぇだろ!


「テメェー、こそ、また、人の悪口ばっかり言っていただろ!?」

「兄に向かって! テメェーとは何だ?」


 顔を合わせてば兄妹喧嘩をするのが、日常だった。


「二人共! 喧嘩はいかんぞ!」


 この声がデカく、暑苦しい顔している人は若い頃の妾の親父だ。


「父上! マリンの奴、僕をディスって」

「ふむ、マリンの口調の悪さは、確かに問題だな。誰に似たんだが? ……まあ、それは置いといて、俺がここに来たのは、お前のことだ、ローラン」

「僕ですか?」

「また、訓練中の兵士に対して見下していただろ? 何だっけ? 『君たち凡人はいくら頑張っても、僕には到底追いつかない。精々、身の程弁えたうえで、国のためにせっせと働けよ』だっけ? とても、六歳とは思えないほどの、ゲスっぷりだな」


 全くだ。やはり、自分のゲスっぷりを披露していたか。熱血バカの親父は当時の話ではあるが、親父の子供とは、思えない程の、高飛車でゲスな兄だ。


 当時のハ騎将のゲブンやガロンや政治関係者には人望がなく、悪政を働くような輩はいなかった。だから、兄はそういう悪党並みの人達の影響は受けなかったはずなのに。


「訓練をバカにしてはいけない。確かに、お前は勇能力を持っている。だが、イコール強いと言うわけではない。強い力を持って生まれたなら、その力の重みを知るために訓練しなさい」

「嫌ですよ。そんな汗かくようなことをするなんて。それに僕は訓練しなくっても、強い……」

「人の話を聞いていたか!? このゲスヤローが!!!」


 大声でゲス兄を怒鳴る親父。関係ないと、わかっていても、妾に対しても怒鳴り散らしている気がしてくる。


「お前はゲスを極めるのではなく、己の精神を鍛えるために訓練をするのだ。強い能力や道具には善悪はない! あるとするならそれは使い手によって変わるものだ。強い能力や道具を持つことは己を強くするのと、同時に、悪になりえる、かもしれない物を、持つという責任を背負うのだ。分かったか!」

「ちっ、わかりましたよ。皇帝殿」


 ゲス兄は舌打ちをして、何処へ行ってしまった。


「親父! あれは絶対に訓練しませんよ」

「まあ、一筋縄にはいかないか……」


 親父はため息を吐く《つ》と妾の方へ振り向く。


「マリン。口調が悪いのは、多めに見るとして、お前は人を思いやられる優しい人になりなさい」

「分かったよ、親父」

「ははは、まだ四歳の子に、親父と呼ばれたな」


 こんな親父がどうして、あんな人情のカケラのない冷酷な皇帝になったんだろうか?


 問題を起こした兄を強く叱るところは変わっていねぇが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ