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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第六章 皇帝の血筋
76/348

6-5 ナギパート

 翌朝。


 ルナは帝都にある、大図書館という場所で調べ物をしている間、エドナの好奇心でカチュアたちは、帝都内を見物することになった。


 おまけ付きで。


「さて、交流会がてら、何処の飲食店とかへ行きやがりますか」


 そう、おまけというのは、この皇女様だ。これじゃ、表に出して喋れないじゃん。


 てか、あんたは、この国の皇女様だよね? 堂々と顔を隠さないで大丈夫なのか?


「あの~」

「どーしたの?」

「あなたはマリン様ですよね。何でここへ、いらっしゃるのですか?」

「それを言ったら、セシル王国の姫様が何故他国にいるんだって話だよな」

「でも、皇女さんが顔隠さないで、大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないか? 案外バレないものだ。まさか、街中に皇女が護衛を付けねぇで、出歩くわけねぇだろ」


 それ以前に、こんなガラの悪い喋り方をする、皇族がいるかって話だが。


「寧ろ、女将軍のような、見た目とデカ乳を持つカチュアの方が目立ちやがるよ」


 有名人じゃなくっても、目立つよな。周りをよく見れば、蒼髪は見当たらない。金髪は結構見かけるが。胸に関してもエドナより大きい人が見当たらない。


 そう考えると、ユミルはカチュアと違って、顔と髪を隠さず、翼だけ、隠せば、誰だが分からないのでは? 


「あれ? あなたは皇女様? 何故ここに?」


 この国の兵士らしき人が話しかけてきた。やっぱり、気づかれているよ。周りも「皇女様」に反応して、こっちへ向いてきた。


「ウッセーーー!!! 人違いだーーー!!! ここに、皇女様がいるわけねぇだろー!!! てか、皇女様と間違えらるなんて、皇女様に失礼だろーーー!!!」


 ごろつきか! って、言いたいぐらい、ガラの悪い口調で叫び出した。


「ひぃぃ!!! し、失礼しましたーーー!!!」


 力技かよ。怯えて逃げていったよ。周りの人も、怖くなったのか、こちらに視線を向けようとはしなくなったり、「皇女様じゃないわよね」と言いながら去っていった。中には「蛮族みたいな女だな」なんて、言っている人もいた。寧ろ、あれで皇女様といっても信じてくれないだろう。


「あれ? お姫様が、大いなる実りに突っ込んでいやがるけど、どうしたんだ?」

「マリンちゃんがいきなり、大声出すから~」


 マリンの怒鳴り声で、怯えたユミルは、カチュアに抱きついた。ユミルの頭はカチュアの憎たらしいほどの、デカい胸で埋もれていた。


「そー言えば、ソフィアの姿が見えないわ~」


 あ! 本当だ。ユミルの付き人なのに、彼女の側にいないなんて。


「ソフィアさんなら今朝、お父様から伝達があって、今は帝都の外にいるセシルの方と話されていますのよ」


カチュアの胸に埋もれたまま喋っているよ。


「ただ……」

「ただ?」

「何故かを手紙を読み終えた後、雷の魔術で手紙を焼いていましたのよ」


 確か、ユミルの父親って、王様なのにセクハラまがいの発言を連発していたおっさんだっよね? 


 もしかして、あの手紙には……。考えるのはやめよう。


「嬢ちゃん達危ない!!!」


 振り替えて見ると、カチュアたち、目掛けてたるが転がってきた。


 しかし、カチュアは転がってきた、たる全部、受け止めた。いや、全部ではない。


 一樽ひとたるだけ、空へ飛んでいった。正直何でこうなった? まあ、こんな事にしてしまう人物はいる。


 それは現在、地面にお尻を付いているエドナだ。


 エドナは転がった樽を避けようとした際、やはり、転んでしまう。樽に当たらなかったのは幸いだ。だが、その転がっている樽を転んだ拍子で蹴飛ばし、そして、空へと飛んでいった。


「大丈夫か?」

「はうう……大丈夫です。でも……」

「ああ、一樽は何処へ行ってしまったが、嬢ちゃんに怪我がなくってよかった。それにそちらの嬢ちゃんも樽を止めてくれてありがとうな」

「いえ、いえ~」

「迷惑を掛けた、お詫びにうちの店で食事を奢るよ。うちの店はニラニンを使った料理がベースだ。この樽にはニラニンをエキスにしたものが入っているんだ」

「ニラニンって~」

「美味しって、癖になる食材だな」

「でも、あれって、結構臭いのではありませんの?」


 美味しいけど、臭く、ニラニンという名の食材か。そのニラニンって、ニンニクか、ニラの親戚か? 知らんけど。


「村長さんから、聞いたことがあるんだよ! ニラニンを食べた後は匂い消しのハーブを食べるんだよ」

「おお、嬢ちゃん、よく知っているな。安心してくれ、匂い消しのハーブも提供しているから、食後の臭い匂いは気にはならないから」

「じゃあ~、せっかくだから~、いただきましょ~」




 おじさんの店でご飯を奢ってもらった。カチュア達は店から出て、再び、帝都内へ歩き出す。


 相変わらず、食べるよな、カチュアとエドナは。後、マリンも結構食べていたな。


「美味しかったわ~」

「あのー、エドナさん。わたくし、匂いますでしょうか?」

「くんくん。大丈夫なんだよ。匂わないんだよ。そんなに気にしなくっても~」

「いや、仮にもユミルは姫なんだから見だりとかは、気にするだろ」


 やば! 表に出してしまった! 一応、声自体はカチュアのだから、気づかれないと思うが。本当に気をつけないと。


「きゃー! 変態よー!」


 女性の悲鳴が。


「何なの~?」


 目の前には男女一組が揉めていた。


「いや、俺はやっていない!」

「嘘よ! この下着が証拠でしょ!? これは私のよ! あなたのポケットに入っていたわ。ポケットが膨らんでいたから、もしかしてっと、思ったら」


 女性の手には、女性物の下着を掴んでいた。


「俺はやっていない! やっていないんだー!」


 どうやら、下着泥棒の現場みたいだ。


「何かあったらの?」

「聞く限り、下着泥棒じゃねぇか?」

「下着泥棒?」

「あそこに銭湯があるな。あの女性が入っている間に盗まれたということか?」


 よく見たら、男女が揉めている横側には立派な建物。看板には何が書いているかは、分からないが、マリンが「銭湯」って、言っていたから、銭湯なんだな。


「でも、銭湯って、他のお客がいるうえ、男女別ですわよね? 男の人が入ってきたら目立つのでは?」

「建物自体大きいだろ。あそこは確か、個室銭湯で一部屋に五、六人は入れる浴場があって、着替え場には他の客は入れねぇ」


 カチュアは二人の元へ向かった。何する気だ?


「ちょっと待ちなさ~い」


 おい! また厄介ごとに手を突っ込んで!!


「何よ?」

「嘘はダメよ~。あなたでしょ? この人のポケットにパンツを入れたの~」

「何よ、あんたは!? 関係ないでしょ!?」

「酷いわ~。あなたのように悪いことした人、を掘って置くっていうのかしら~」

「うぐぐっっっ」


 この女の人、完全に目が泳いでいる。カチュアの言う通り、この女性が悪者なら、冤罪を引き起こそうてしていたことになるよね?


「ふん! 証拠はないでしょ、証拠は!?」

「あなたがやったんでしょ?」

「ひぃぃぃ!!」


 のほほーんとした表情なのに、何処からか、威圧見たいのを感じ取ったのか、女性は悲鳴を上げた。


「カチュア! 確かに、この女、被害者というより、加害者の顔をしているが、この女がやったという証拠がねぇと」


 まあ、心が読めて、嘘だと見破っとも、それに納得しろって、言われても、無理がある。


「誰が、加害者の顔だって!!」


 確かに、顔だけ見れば、悪女の顔だよな。


「……しかし、そうよ! 私がやったという証拠だしなさい! まあ、ないでしょうが」

「証拠はある」


 あるんだ。


「ハッキリ言って奇跡としか言えんが」


 奇跡?


「あんた! ついさっき、この辺に樽が落ちてこなかったから?」


 マリンは下着泥棒で、疑われている男性に、尋ねる。


「ああ、仕事終わりに銭湯に行く途中で俺の目の前に落ちてきた。落ちた衝撃で樽が割れて、中は臭いエキスが出てきたんだ。幸い俺は手だけだった。未だに匂いが落ちない」


 それって、エドナが蹴り飛ばした、ニラニンエキスが入った樽だよね? それが、この男性の、目の前に、落ちてきたわけ?


「そう。このパンツはそこにいる女が、ポケットからパンツを出した。だけど、このパンツにはニラニンの匂いが付いていない。盗むには、手で掴まないといけないのに、どういうことかな? 樽が落ちてきたのは、大分前の話だぜ。それに、ニラニンの匂いは水で流しただけでは、匂いは落ちないぜ。勿論、匂いがする間は、匂いは移るぜ」

「それは……」


 すると、人混みの中にある老人が。


「そういえば、ワシは見ておったぞ。この男性が銭湯に入る前に、この女が入ったところ」


 女性……冤罪女へ指を刺した。


「その時に入れたんでしょ。この銭湯は個室。周りを気にせづに、侵入ができる」


 マリンは冤罪女の方へ、睨み付ける。女は目線を逸らした。


「狙いは金? ……では、ねぇようだな。目立ちすぎる。だとするなら。態々、下着泥棒の罪を着せるからには、目的は社会的の死。あんたはこの女に見覚えは?」

「え? ん~。あ! この女、見覚えあると思ったら。万引きしたのを取り押さえたことがあるんだが、その時の!」

「なるほど、動機はそれだな。腹いせか」


 圧倒されるわね。マリンという子、ガラの悪い口調の割には、冷静に物事を見れるのか。冤罪が起きてもおかしくないのに、この現状を逆転させた。


 いや~、それにしても、この冤罪を晴らしすきっかけを作ったのが、まさかのエドナのドッジによって、引き起こしたことだった。奇跡だ。


「くそ!」


 女はポケットから、何かを取り出した。それはナイフだ。女はナイフを持って「どけー!」と叫びながら逃げていった。


「待ちやがれ!」


 マリンは追いかける。


 てか、カチュアは? いつものカチュアなら、女がナイフを取り出す前に腕を掴んでいたと思ったが。


 肝心のカチュアは、地面の上でうつ伏せになっていた。


 急に寝たわけではない。カチュアの上には、エドナも倒れていた。いつものことながら、もう。


 きっと、私の顔は呆れ顔になっているに違いない。そう思っていたら。


 シューーン!! パコ! パコ!


「なっ!? なんなのよ!?」


 女の目の前には空から矢が降ってきた。それはエドナの矢だ。エドナの腰に掛けてあった筒には、矢が一本も入っていなかった。エドナが転んだ拍子に、矢が空高く飛ばされていったのが、落ちて来たんだ。


 女は、目の前に矢の雨が降ってたため、左側へと走る。


「危ない!!!」


 女の目の前には、ユミルが。


「いやーーー!!!」


 ボコ!! スカ!!


 ユミルは女がナイフを持っているにもかかわらず、女の顔面を殴りつけた。


「いや! いや! いやーーー!!!」


 ボコ!! ボコ!! スカ!! スカ!!


 ユミルは女の顔をタコ殴りにしている。ユミルはパニックになると刀を振り回して、相手を塵残さず斬りつけるんだ。それの拳版。さすがに、生身の人相手に刀を抜かないか。


 若干、鞘から刀が、抜けていたが。


「ちょっと、殴り過ぎ……」


 ユミルが「あっ!」と言って、拳を止めた。ユミルに殴られた女は後ろへ倒れといった。


「あらあら~、梅干し見たいな顔になっているわ~」


 女の顔が、蜂に刺されたって、言うぐらい、目や口が隠れるぐらい顔が腫れている。


「ごめんなさーい!!!」


 ユミルが何度がお辞儀をした。


「今、治癒を」


 エドナが向かうと。


「あっ!」


 自分がばら撒いた、矢を踏んで、前方に飛んでいった。


 ドーーーン!!!


 エドナの頭が、女の顔面に激突した。更なる、追い討ち。恐ろし過ぎるだろ。


「はうう!! ごめんなさいなんだよ!!」


 いつしか、カチュアがガイザックを殴った後並みに、顔が凹んでいるよ。


「もう……お嫁に……」

「いや、あんた捕まるんだよ」


また、表に出てしまった。


「あらあら~、ますます、酷くなっているわ~、早く、エドナちゃんに、治癒してもらわないと~」

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