6-2 ナギサイド (場面変更)
「は~。まったく! 何をやっているのでしょうか!?」
ルナが大きなため息を吐いた。
カチュアの活躍でコルネリア帝国はヴァルダン王国に勝利を収めた。そして、カチュア達は、現在、コルネリア帝国内にある帝都ナウザを訪れていた。
帝都ということだけあって、アヴァルの街と比べ物にならない程大きな街ね。中央にあるのは王宮のようね。あそこに皇帝が住んでいる見たいだね。
何故、帝都に来たかというと。私こと、ナギがカチュアの体から引き離す方法を探すためだ。
まあ、これはロゼッタから、どうせ、旅を続けるなら、何か、目的を持ったらと言われて、私の話になった。やはり、ロゼッタはカチュアの中に私がいることに気づいていたらしい。
と言うのも、最近、カチュアで話をする時に、おかしな現象が起きてしまう。変になる前、引き離した方がいいと言われ、ルナが手がかりがないか、帝都にある大図書館で調べるためにここに来た訳だ。
私自身も、何者かが知りたいし、まあ、引き離しても、記憶が戻るるとは限らないけど。記憶と言えば、出来れば、記憶を失う前の私は、悪の組織の関係者じゃないことを祈っているよ。
ところで何で、ルナがため息を吐いたのか? それは、ここに来て問題が発生したからだ。まあ、帝都に向かうと決めてからずっと、ため息付いていたんだけどね。
何の問題かって? 決まっているでしょ?
ちなみに、現在、カチュアはいつもの、ルナ、ユミル、ソフィアと一緒にいる。
もう一度言おう。現在、カチュアはいつもの、ルナ、ユミル、ソフィアと一緒にいる。
皆んなの名前を挙げてみたが、いつもの、あの子の名がない。そう、問題というのは……。
「もう! 何処に行ったんですか!? エドナさんは!!! 何で、ルナたちと逸れるのですかな!!?」
ルナが叫び出す。
帝都に着いて、しばらく歩いていたら、いつの間にかエドナがいなくなっていた。
カチュアは気づいて、皆んなに伝えたが、周りが騒ついていたため、カチュアの声ではかき消されてしまった。そのため、私が代わりに知らして、今に至る。
「も~。よりによって、広い帝都で逸れるなんて! エドナさんのことだから、何処かで転んで壁に穴とか開けちゃうのでは。最悪、帝都中にある小川に落ちちゃったのでは? 帝都の小川は物凄く汚いから、入ったら何かしらの病気になってしまいます」
「いや! 政治をする前に美化活躍しろよ!」
思わず、表に出てしまう。
小川の話もそうだが、帝都の中の道端に、ゴミが、あちらこちら落ちているし。ゴミのポイ捨てを平然とするんだな。アヴァルの街の方が街中綺麗だった。
そう言えば、「あなたはもう十歳何だかマナーを守りなさい」って、バナナの皮を捨た、十歳といっていたからたぶん子供? が、そのお母さん? らしき人に注意されていたっけ。「ごめんなさい、お母さん」と言っていたし
あの親子を見て、まずツッコミたい。十歳。確かに十歳と言っていた。そう言っていただけ。とても、十歳と思えない背丈とマッスルボディに老け顔だった。何気に謝る際、ポーズ決めていたし。
というより、あのマッチョ息子、前回の賭博場に参加していたマッチョ選手に似ていたような……気のせいか?
「しかし、騒がしいですわ。何のお祭りかしら?」
ソフィアの背中に隠れているユミル。やはり、人が多くいるところは苦手か。騒がれるよりかはマシだが。
「ヴァルダンとの戦争の勝利宣言をするそうですよ」
「一応、ヴァルダン王クレイズを倒したのはシグマ様と言うことになっています」
「でも、クレイズを倒したのはカチュアじゃあ……」
「ん? クレイズを止めて、犠牲者を最小限に抑えたことには変わりないよ~。だから、誰か倒したかは問題じゃないわ~」
「カチュア殿は功績なんて、どうでもよろしいのですね。英雄譚に出てくる英雄以上の活躍をしたのに」
「英雄になるかよりも、誰かの助けになることが重要だと思うわ~」
聖人の名言だ。
「あ! それよりも、エドナさんを見つけないとですわ」
「あら~。そうだわ~」
「あれ? ルナか! 来ていたのか?」
「兄様!」
そこには、ルナの兄であるアルヴスの姿があった。
「怪我の方は?」
ルナが心配そうに尋ねる。
「ああ、良くなってきた」
「それは良かったわ~」
そう言えば、ルイドの街の魔物脱走騒動で怪我を負っていたんだっけ? 元気そうで何よりだ。
「それよりも、カチュアとユミル様は今日は怪しげな格好じゃないんだな」
「はい、ソフィアさんにコーディネートして貰ったんです」
さすがにフードで隠すのは怪しいから、ソフィアの提案で、マントはそのままで、フードではなく、角のように尖った帽子を被っている。
まるで、魔女みたいな格好だ。まあ、カチュアは魔術が使えないが。一応、蒼い炎を纏えるが、ルナ曰く、魔術の類いではないそうだ。
「ところで、その人は?」
「ああ、強盗犯だ。店の金を盗んで逃げたところを捕まえたと通報があったから、連行しているんだ」
「あの~」
おそろおそろと尋ねるユミル。
「どうしましたか?」
「さすがに引きづて連れて行くのは、ちょっと」
カチュアたちが、アルヴスと最初に会った時もこんな事していたんだったのね。アルヴス強盗犯の足にはロープを巻かれていて、アルヴスはそのロープを持って強盗犯を地面に引きづりながら連れっていた。
ルナが言うには、サドは入っているが、普段は気遣いが出てきる人として、尊敬が出来る。しかし、外道に、気を使うのが面倒臭いそうだ。だから、こんな杜撰な連行の仕方をするらしい。
てか、これ、教育上よろしくないのでは? 当然、子供もいて、見ているわけだし。
「ところで、カチュアがここにいるのに、いつも一緒にいるエドナの姿が見えないんだが」
「迷子になっているんですよ」
年下に迷子って言われているよ。エドナさん。
「ひょっとして、あれかな?」
「あれって?」
「いや、この強盗を捕まえたのが、どうやら、見た目が子供で胸だけが大人な子だったらしい」
誰がどう聞いても、それはエドナだな。
「それはエドナさんだ!」
「エドナ殿ですね」
「エドナさんですわ」
「きっと、エドナちゃんね~」
ものの見事にハモったな。でも、何で、強盗を捕まえているんだ? カチュア達が迷子のエドナちゃんを探している間、何があった?
「何処ですか?」
「俺は見ていないが、強盗犯の被害になりかった、店なら向こうの『ももさん』という、店だ。ルナは場所知っているよな?」
「そこなら分かりますー。いきましょうー」
気のせいかな、ルナの瞳というより焦点が端っこに寄っている。
「じゃあ~、走って向おう~」
「あ! 歩いて行きましょう! こ! こんな大勢いるところで、走ったら危ないですよ!」
「それもそうね~、じゃあ~、歩いて行きましょ~」
必死だな、ルナは。まあ、カチュアの背中に乗って超猛スピードで走るカチュアの特急便の主な被害者だから。
「着きましたよ。ここです」
ようやく着いたか。
店の看板を見ても読めない。でも、ここが目的地なら、この店が例の『ももさん』という店か。
「ん~、いい香りだわ~」
あー、美味しそうな匂いがするのね。私にはわからないが。食事をする必要はないが食べる楽しみがないのは残念だわ。
『ももさん』という、店から出てくる、お客は串で刺さった焼き肉を持っていた。あのお肉、タレが付いていてお肉そうだな。ということは『ももさん』って、焼鶏屋かよ。『ももさん』のももって、ひょっとして、もも肉のこと?
「初代店主がもも好きなんですよ。それも、人でも、鶏でも。それでもも肉を使った拘りのメニューを提供しているんですよ」
食欲が無くなってくるエピソードだな! ただの太ももフェチじゃん。
解説しているルナには覇気が感じられないし、寧ろ、引いているし。だから、焦点がこっちに向かないで端っこに行っていたんだ。現在も進行しているし。まあ、この屋台が出来た経緯を聞くと、そうなるよね。
「取り敢えず、中に入りましょ~」
店の中に入ると。
「あ! カチュアさん達だ!」
なんか、見覚えのある女の子がテーブルにいるし。うん、エドナだね。本当にいたわね。……てか、カチュアたちは、あなたを探していたのに、何食べているんだ?
「この人達がエドナの付き添いか?」
「はい」
誰? よく見ると、物凄くイケメンな男性だ。その人が、エドナの隣に座って焼き鳥を食べていた
「エドナさん! もう! 探しましたよ! この広い帝都で逸れたら探すのは大変だから!」
「はうう、ごめんなさい」
頬を膨らませるルナ。
「いや~、お嬢ちゃんはこの店の恩人だ」
この店の店主らしき人が姿を出した。
「お嬢ちゃんは逃げる強盗に突っ込んだんだ」
アルヴスの言った、強盗犯を捕まえた話か。如何にも、エドナらしい捉え方だ
「あたし、バナナの皮を踏んで滑っていった、だけだよ」
「今までのエドナさんの転び方の中で古典的ですね」
古典的って、昔は流行っていたのか? 一昔は皆んなバナナで滑っていたのかな? 記憶のない私には分からないが。
「偶々、僕も現場に居合わせたんだけど。この子はババナの皮を踏んで滑って転んだんじゃなく、滑り進んだんだよ。氷の上で滑るように」
居たね。バナナの皮を捨てた、マッチョ。なるほど、その捨てたバナナの皮をエドナが踏んだわけか。
てか、その時から、エドナがいなくなっていたんだ。バナナの皮を踏んで滑って、強盗犯にぶつかるまで滑り進んでいたのか。
「お嬢ちゃんの活躍でワシは決心した。二十年間、ワシはもも肉だけを極めていたが、お嬢ちゃんとその付き添いの方の豊満なボディを見て、太ももにしか、興味がなかったワシの心が動いた。これからはもも肉だけに拘らず、他のお肉を使っていこう」
焼き鳥屋って、普通そう言うものじゃなかったけ? 寧ろ、よくモモ肉だけで、二十年間も続けられたね。確かに、あの部分は、美味しい記憶があったよう、なかったような。
「エドナ殿の活躍で、店主に新たな決心を生みましたね」
「何か、嬉しくないんだよ」
「何気にエドナさんは、英雄よりも名が残されますわ。きっと」
アヴァルの街では、ちゃっかりエドナの銅像が立っているし。
「ついでに店の名前を変えようか。『エドナ』と。ついでにお嬢ちゃんの肖像画や銅像も。それと、エドナちゃんをモチーフにした商品も提案しよう。鳥の胸肉では物足りないな。この際、牛の肉を」
それはもう、焼肉店じゃないか! まあ、一言も焼き鳥店とは言っていない気がするような……。
「よく見たら、君ものスゲェー胸をしているのー! 顔も見たら美人さん。瞳も蒼色で綺麗じゃのー」
瞳だけ、蒼色は珍しくないのか。
「嬢ちゃん、名前は?」
「カチュアよ~」
「君も肖像画や銅像それと、カチュアちゃんのモチーフにした商品を提案しよう。それと店の名前を『エドナアンドカチュア』にしようかな」
「あら~。ありがと~」
変態に動じないな、この子。それにしても、この、きょ……ウシ乳コンビの影響力は、太もも一筋の、太ももフェチを胸に視野を入れさせるなんて、恐ろしわね、この二人は。
お店に出たカチュアたち。ついでに、イケメン男性も一緒に。
「それでは、僕はこれで」
イケメン男性は手を振りながら去って行った。
「そういえば、あの人は?」
ユミルがエドナに尋ねる。
「名前……そう言えば、聞いていなかったんだよ。あの人も強盗犯を捕まえようとしていたんだよ。兵士さんが来てからは、その人たちに任せて、一緒に店に入ったんだよ」
「あなた、それでよく、一緒に食べていたわね」
相変わらず、初対面でも、気さくに接しられるよな。カチュアもだけど。
「でも、カッコいい人でしたは、わたくしのお兄様の様に」
ユミルの顔が赤くなっている。一目惚れか?
「ユミルさんにお兄さんがいるんですか?」
「数年前にお母様と一緒に亡くなられたんです」
「カッコいい人って、誰のこと~?」
「誰って、あの男の人だよ」
「……」
カチュアが黙り込んでしまう。
「さっきの人だよね〜? あの人は女性だよ~。見た目は男の人だったけど」
「そうなんですか?」
「うん。間違いないわ~」
あのイケメンが女性? 確かに、男性にしては声が高かったような。
ユミルの方はなんか、萎れている。
「うん、それに」
「それに?」
「ロゼちゃんに、少し似ているのよ」
そう言えば、ロゼッタを大人でボーイッシュにした様な見めだったわね。親戚か?




