5-9 エドナサイド
「ぐお、ぐお! ぐお! ぐおおおお?」
クレイズは言葉を発することはなく、まるで獣の鳴き声を発しているんだよ。
「カチュアよ~」
「何で名乗っているんですか!?」
「え? 『貴様、何者だー!』って、聞かれたから答えたのよ~」
「分かるんだ。いや、分かったとしても名乗る必要ないでしょ」
「それよりも、動き出したわよ~」
明らかに大きい剣。カチュアさんが使っている剣はカチュアの背丈よりも大きい剣なんだけど、その剣の倍以上はあるんだよ。
その大きいな剣がカチュア目掛けて振り下ろす。カチュアさんは自分の剣で受け止めた。
それから、剣と剣のぶつけ合いが始まるんだよ。クレイズは「ぐお、ぐお」と獣のような鳴き声を発しながら剣を荒々しく振っているに対して、カチュアさんはいつもの優しい表情で剣を振っているんだよ。
「何ていう嬢ちゃんだ。勇能力同等の力を得た相手と互換、いや、それ以上だ」
あたしの目でも分かるんだよ。カチュアさんは自分の持つ剣よりも大きな剣を振り回すクレイズを押し切っているんだよ。
そして。
「そ~れ~」
カチュアさんは受け止めたまま、押し返したんだよ。クレイズは後方へ飛ばされていったんだよ。
カチュアさんは続けて飛ばさている、クレイズの腹部を斬りつけたんだよ。
「ぐおおおおおおお!!!」
クレイズは飛ばされつつも、体制を整え、地面へ立ったまま着地。
クレイズの腹部には、カチュアが一斬り入れたはずなのに。カチュアさんが斬ったところ、傷がなかったんだよ。続けて、ロゼッタさんが槍で腹部目掛けて刺したんだよ。だけど、体は突き通っていないんだよ。
クレイズはロゼッタさん目掛けて剣を振り下ろしたんだけど、ロゼッタさんは下側に避け、カチュアさんのところまで下がったんだよ。
「どうして、傷ができないの?」
「あれが勇能力と同じ力を得られるものなら、障壁でしょうね」
「確か、体を守っているんだよね」
「そうよ。壊れるまで、攻撃を仕掛けないと、本体には傷を与えられないわ」
一方、クレイズは剣を地面を叩き付けたんだよ。
ドドドドドドドド!!!
すると、叩き付けたところから岩の柱が出現したんだよ。
その岩の柱はカチュアさんとロゼッタさん目掛けて、一直線に次々と出現したんだよ。
カチュアさんとロゼッタさんは襲い掛かる岩の柱を軽々と避けたんだよ。
クレイズは次々と、地面を叩きつけて岩の柱を出して、カチュアさんに攻撃を仕掛けているんだよ。一方、カチュアさんは襲い掛かる掛かる岩の柱を避けるんだよ。
「ぐお! ぐお! ぐお!!!」
「段々とヤケになって、いますよ」
そして、また、岩の柱が襲い掛かるんだけど、カチュアさんはさっきのように避けずに襲い掛かる岩の柱の前で止まったんだよ。
もう、岩の柱はカチュアさんの目の先なんだよ。
カチュアさんは地面を叩き付けたんだよ。叩き付けた前方にまた、岩の柱が出現したんだよ。だけど、クレイズのと違い叩き付けた一歩手前のところしか出現しなかったんだよ。
クレイズが作った岩の柱はカチュアが作った岩の壁かな? と激突。土煙りが舞い、カチュアさんの姿が見えなくなったんだよ。
すると、土煙りから縦回転している剣が現れたんだよ。その剣はクレイズの腹部に命中し、弾き飛ばされたかの様に剣が上空へ飛んでいったんだよ。
やっぱり、剣はクレイズに命中しても、傷はできていないんだよ。
ピカ! ピカ! ピカ!
そして、まだ治まらない土煙から光の矢が次々と出現したんだよ。
「あれは、ロゼッタの魔術だな。突きをするたび、槍の先から光の矢が出てきて一直線に飛んでいく」
だけど、飛んできた無数の光の矢はクレイズの剣技で殆ど、防がれたんだよ。
「ぐお、ぐお、ぐおおおおおおーーー!!!」
そして、本当に何が起きたのか分からないんだよ。カチュアさんが、クレイズの真上、空から現れて、落下しながらクレイズの背部を斬り下ろしたんだよ。しかも、それはカチュアさんがクレイズに攻撃が入ったとの違い血が吹き出たんだよ。
「ぐおおおおお!!!」
クレイズはうめき声を出しながら前方へ倒れていった。斬り傷からカチュアの体を纏っている蒼い炎が微かに燃えているんだよ。
「何が起きたの?」
「ああ、恐らく、あの嬢ちゃんは土煙りの中で、自分の剣を投げ飛ばしたんだ。それで空へ高いくジャンプして、上空へ飛んだ剣を取って、上空からクレイズにトドメ刺したんだ。ロゼッタの光の槍は、上空まで飛んでいったカチュアに視点を向かないようにするためか」
「でも、何で今度の攻撃は効いたんですか?」
「たぶん、投げ飛ばした剣を受けた時に、障壁が壊れたんですね」
「そんな早く壊れるものなのでしょうか?」
「以前、手配中の勇能力者と交えた時、カチュアさんは一撃で障壁を壊したことがあるんです。さすがに今回は一撃とまではいかなかったようです」
「あの蒼い炎の力か?」
カチュアさんを纏っていた、蒼い炎が消え、剣を鞘に納めたんだよ。
「終わったわ~」
カチュアさんが後方へ倒れていったんだよ。それをロゼッタさんが受け止めたんだよ。
すると。
「道連れだーー!!」
ヴァルダン兵の一人が、二人に目掛けて、剣を振り下ろそうとする。
ロゼッタさんもカチュアさんを抱えながら、片手で槍を振う。
「くう! 間に合わない!」
カキーーーン!!!
だけど、ヴァルダン兵が持っていた、武器が飛ばされていったんだよ。
それはあたしが放った、矢だったんだよ。いつもの魔術で構成させた、風の矢ではなく、普通の矢に、弱めな、風を纏っただけ。強い風を付着させると矢が切れちゃうため、普段は魔術で構成した矢を使っていたんだよ。
でも、今回はそれでも、十分だったんだよ。放たれた矢はヴァルダン兵には命中しなかったんだ。ヴァルダン兵の剣を持っていた手すれすれだったんだけど、通りがかった矢から風が吹き出て、風圧で、ヴァルダン兵が持っていた剣が飛ばされたんだよ。
ヴァルダン兵はロゼッタさんの槍で心臓辺りを突き刺されたんだよ。槍が抜かれると、後方へ倒れていったら。
「カチュアさん!?」
あたしたちはカチュアの元へ駆けつけたんだよ。
「大丈夫ですよ。寝ているだけよ」
「よかったー」
カチュアさんはすやすやと寝ているんだよ。
「まさか、蒼炎が……」
「伝説の蒼炎が再び、この時代に」
「うおおおおお!!!」
急に周りのシグマ様の軍の方々かな? が騒ぎ出したんだよ。
「静粛に!」
シグマ様が一言入れると、軍の方々が静かになったんだよ。
「彼女たちの手でヴァルダン王クレイズを討ち取った。だが、今見たことは誰にも言うな! 胸に留めておけ!」
軍の方々がまた、騒ぎ出したんだよ。
あたしはシグマさんのことで、ルナちゃんに聞いてみた。
「どうして、シグマさんはカチュアさんのことは誰にも言うなって言うの?」
「カチュアさんがこの国の将になりたいなら、この戦いの功績を事実通りカチュアさんにすると思います。将にならないなら、あの力のことを知られたら、その力を狙う輩がいるかもしれない。いや、絶対に逃さないわ」
ルナちゃんの目つきがいつもより、睨みつけるような目をして話してくれたんだよ。
ん~。そんなものかな。でも、外の世界では、それが普通のことなのかな。
でも、ルナちゃんが言っていた通りのことになるなんて、思いもしなかったんだよ。
でも、それは蒼い炎を纏ったカチュアさんではなく。
あたしのことだった。




