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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第四章 再会
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4ー9 ロゼッタサイド

 賭博場の騒ぎは、ようやく、納まった。


 怪我をしたアルヴスは、ルイドの宿屋の個室に運ばれた。


 エドナという、ルナよりも小柄な女の子と、ユミルの治癒を受けて、現在、ベットで寝ているアルヴスを見守る、私とルナ。


「ここは?」


 アルヴスの目が開いた。


「気がつきましたか」

「兄様ーーー!!!」


 ルナが寝てアルヴスに抱きつく。


「こら、泣くな!」

「だって! ……だって!!」

「カチュア達のおかげで、俺は助かったんだな。使命で自分を失うところだった」


 アルヴスが笑っている。あの不気味な、笑顔しかしないアルヴスが?


「ほんとね。でもね、あなたが潔く身を引いてくれた、おかげでもあるのよ」

「ロゼッタ? どういうことだ?」

むしろ、そこの……エドナだっけ? 私が彼女に聞きたいわ。まるで、狙っていたのかって」


 実際、狙っていたら、エドナって子は、かなりの悪女だわ。下手したら相手が死んでいたから。


「え!? あたし、なんかしたんですか?」


 しましたよ。てか、あなた、その場にいなかったっけ? 


「あなた、あの魔力の塊の矢を、持ちながら、転んでいたでしょ。その矢が床にあって、崩れていったけど」

「相変わらず、どうしたら、こんな、展開になるんんですかね?」


 ルナが呆れ顔している。その顔で、エドナに向けている辺り、普段から、あんな感じに転んでいるのね。


「好きで、転んでいるわけじゃないんだよ!」


 エドナは頬を膨らませている。


「話を戻すよ。魔物を放った連中、どうやら、私達が、戦った真下の階にいたようなのよ。それで、偶然、エドナが、その辺で転んで、どういうことだが、床が崩れて、どいういうわけか、偶々、真下にいた、その連中は、崩れた瓦礫に、埋もれていたのよ」


 カチュアが瓦礫の山に人がいるって、言った時は、ヒヤッとしたのよ。避難民を巻き込んじゃないかって。


「どんな、偶然ですか?」


 まったくね。


「そいつらは今は?」

「命に別状はない。格好からして、昼間に、私とカチュアが捕らえた連中は仲間のようね」


 まあ、何で、あの瓦礫の山に埋もれ生きていたのか、正直、ビックリしたよ。ゴキブリ……魔物並みの生命力の連中だったわ。


「そっか! 俺も怪我が治ったら、奴らの尋も……、奴らに聞き取りしないと、多分、話さないと思うが」


 今、絶対に尋問じんもんと言おうとしたでしょ? アルヴスは相変わらずだ。




 アルヴスとの話を終えた、私は宿屋から外へ出た。


 さてと、アルヴスが動け次第、帝都に戻らないと。その前に、カチュアに挨拶でも、しようかな。


 私は、街の出入り口へ向かった。多分、あの辺にいると思ったから。


 出入り口に案の定、カチュアがいた。マント着ていないけど大丈夫かな? 


「やっぱり、こんなところにいたんだ、カチュア」

「ん? どーしたの~?」

「いいえ、また、あなたに助けられたわね」

「急にどーしたの~?」

「いいえ! なんでも。ところでカチュアは、私の父のこと覚えている?」

「うん、凄い、優しい人だったんよね」

「昔、私が言ったこと覚えている?」

「確か、余り、評判はよくなかった、ってこと?」

「ん~、間違ってはいない。お父さんは平民から、成り上がった人で、貴族から余り思われていなかったのよ」

「貴族って、面倒臭いわね〜」


 まあ、そうね。コルネリアの貴族は滅びる前のアトラ帝国の貴族だったのよ。でも、今の貴族は、悪帝に手を貸さなかったり、戦いの際に不利だとわかって、寝返った者ばかり、それでも、国を再興するのには必要な方々だったのよ。最後まで、悪帝についた者は追放されたけど。まあ、現在の貴族も殆どが、腐った連中だけど、


「民のために、働いていた父は嫌みたらしく、偽善者って、よく言われていたのよ」

「昔、そんな話しを聞いたような〜」


 当時の私は父が民のために、働いているのに、何で周りは父に陰口をたたかれていたのか、わからなかった。


「アルヴスも、父と同じ、平民出身で、八騎将の側近になったことをよく思われていなかったのよ。私もそうだけど、まだ、マシの方よ。私は悪帝を倒した、空の勇者の一人ユンヌの母だから。一応、英雄の血が流れているから、父とアルヴス程ではありません」


 それでも、私には勇能力を持っていないから、陰口はたたかれていましたが。


「で、話しを戻して、昔の話しね。当時、カチュアに愚痴を言った後。カチュアはなんて言ったか、覚えている?」

「なんだっけ?」

「偽善者なんて言う人は心を理解しようとしない無能の言い訳だって」

「ん~、確かに言ったと思うんだけど、そんなセリフじゃなかったような~」

「これは、私風言うとね。当時のカチュアの言ったことを再現すると確か……『その偽善者って、ロゼちゃんのお父さんのことを、悪く言っている人たちは、きっと、人の心を理解しようとしないうえ、自分たちには、出来ないから、悪く言うしか出来ない人の……、え~と、こう言う時は確か、言い訳! そう! 言い訳をしているのね〜』……こんな感じだったわ」


 カチュアの口調を真似てまで、再現する必要あったかな?


「そーいえば、わたし、そんなこと言ったような気がするわ~」

「そうそう」


 その後も、「ロゼちゃんのお父さんの優しさは本当だよ~」とも言ってくれていたっけ?


「ん〜。わたしは嬉しかったのよ~、その後、ロゼちゃんが元気になってくれたから~、何故だか、わからないけど~」

「わからなくっていいよ、あなたの場合は」

「どーゆうこと?」

「ふっ、ふっ、ふっ」


 笑って誤魔化した。


「カチュアは、これからどうするの?」

「エドナちゃんと一緒に行動かな~」

「そっか。じゃあ、私はこれで」

「行っちゃうの~?」

「一度、帝都に戻らないと」

「そっか~……また、会えるかな?」

「まあ、そのうち」


 私はカチュアを置いて、その場を立ち去る。


「カチュア」

「どーしたの?」

「生きていてありがとう。本当に心配したんだから!」


 カチュアがいなくなった日、彼女をずっと、探していたけど、見つからなかった。それから、七年ようやく再開が出来んだから。


 本当はカチュアに聞きたいことが、まだ、あったが、今はやめておきましょう。




 街の入り口に入るところに。


「あ! ロゼッタさん!」


 エドナという、女の子だった。


「エドナだっけ? あなたのことは魔物騒ぎの後、ルナから聞いているわ。カチュアのことも」


 そう、この子の村で起きた悲劇やその後の話も。


「あの子のことを、よろしくね」

「はい」

「正直、心配していたんだ。この街に来ていたから」

「どうしてですか?」

「カチュアはこういった、人が多く集まるところへ行くと、体調を崩していたから心配なさそうね」

「え!? そうなんですか!? どうして、ですか!?」

「私には、わかないわ。でも、もう、心配はいらないはあの子、嘘を付けないし、わかりやすいから」

「ん?」

「ごめんね! 頭を混がらせちゃって。それでは」


 私はエドナの前から去っていった。


 あの頃、カチュアには悪いことをしてしまった。街にいったことのない、カチュアを街に連れていった時に、カチュアの体調を悪くさせっちゃったから。


 でも、今は大丈夫そうね。こんな、腐った連中がいる街。昔のカチュアだったら、体調を崩しちゃうから。


 私がいなくっても、大丈夫だよね。きっと。


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