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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第四章 再会
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4-1 エドナサイド

「はわわ!!! すごーい! 大きな街なんだよ! それに、見たことのない、大きな建物がいっぱいあるんだよ!」


 あたし達は、コルネリア帝国内にある、ルイドの街に、今さっき、着いた、ところなんだよ。


 カチュアさんは勿論、フード付きのマントを着ているんだよ。カチュアさんの特徴と言える、蒼い髪がフードの中に隠れているんだよ。


 でも、何で、そんな物を身に付けているのかな? 


 ルナちゃんが言うには、カチュアさんの容姿が目立ち過ぎて、汚物よりも臭い帝国貴族達に目をつけられたら、カチュアさんの場合は、配下にして、扱き使われるか、奴隷にされる恐れがあって、大変な目に会うかもしれないから、なるべく目立たないようにして下さいって、猫さんのような細くさせた目をしながら言われたんだよ。


 ……どういうことかな?


「エドナさん! まったく、子供みたいに、はしゃいで! あの人、ルナよりも年上なのに」

「あら、あら~、エドナちゃんたら~」

「えー!? こんな大きな街を見たらはしゃぎたいものでしょ?」


 ズコッ!!


「あ?」


 ドーーーーーン!!!


 どこかに、躓いて、転んじゃったんだよ。その拍子で、思い切り、お顔をぶつけちゃったんだよ。


「もう! エドナさん! 何やっているんですか!?」

「はうう……。また、やっちゃったんだよ……」

「エドナちゃん、だいじょぶ~?」

「はい……大丈夫です」


 とはいえ、顔が痛いんだよ。はうう……。


「ところで皆さん」

「どーしたの? ルナちゃん。猫さん見たいな顔をして?」


 はうう! ルナちゃんが、猫さんの目みたいに、目を細くして、あたし達のことを睨んでいるんだよ。


「目付きは、生まれつきです! そうではなくって! 何で、皆さん、ルナの後を、付いてきているんですか? カチュアさん達は、セシルに滞在するのではなかったんですか?」


 実は、あたし達は、コルネリア帝国へ戻る、ルナちゃんを密かに追って、来たんだよ。


 あたし達は三週間ぐらい、セシル王国に滞在していたんだよ。何故だか分からないんだけど、ルナちゃんだけが一旦、コルネリア帝国に戻ることになったんだよ。


 だけど、カチュアさんが、ルナちゃんの動向が、気になっていたから、着いてきたんだよ。セシル王国の魔物騒動も一旦、落ち着いていたことだし。


 始めは、ルナちゃんにバレないように、尾行……っていうんだよね? それをしていんだよ。だけど、もう少しで、ルイドの街に着くところで、あたしが転んで、その拍子で、木にぶつかって倒しちゃったんだよ。そのせいで、ルナちゃんに、尾行がバレたんだよ。


「それは、勿論、ルナちゃんが、心配だから、着いてきちゃったわ~」

「あたしも、気になったんだよ!」

「あー。そうですかー……。で、カチュアさんとエドナさんが着いてきちゃったのは、ともかく……」


 ルナちゃんは、あたしの隣にいた、ユミルさんと、ソフィアさんに視線を向けたんだよ。


「何でユミル様とソフィアさんも、ついて来ているんですか?」


 あたしとカチュアさんだけでなく、ユミルさんと、その側近であるソフィアさんも、着いてきたんだよ。


 ユミルさんは、カチュアさんと同じフード付きマントを着ているんだよ。ソフィアさんは、本当は別の変装物を着させたかったんだけど、急にあたし達に着いてくることが、決まったから、用意ができなかったそうなんだよ。


 あたしは、ユミルさんを「さん」付けで呼んでいるんだけど、以前はユミルさんを「様付け」で呼んでいたんだよ。


 だけど、ユミルさんからはしたしく、呼んでくださいって、言われたんだよ。だから、今は『様』で呼んでいないんだよ。ルナちゃんもユミルさんのことは、『さん』付けで、呼んでいるんだよ。


 ユミルさんは鳥人族で、鳥人族は背中に翼があるんだけど、なんでも、翼を小さくすることが、出来るみたいで、今はちぢめいて、マントの上からは目立たないようにしているんだって。


 そう言えば、ソフィアさんって、初めて会った頃から、翼が見えなかったんだよ。あれは翼を縮めていたんだね。


「わたくしも、ルナちゃんが心配で、カチュアさんと一緒に着いてきましたわ。それに、しばらく、カチュアさんの勇姿を、もう少し見てみたくって」

「見た目とオドオドした性格に、似合わず、アクティブな方、なんですね……」


 ユミルさん、最初会った時は、オドオドしていたのに、今ではイキイキとしているんだよ。


「これでも、伝説の女将軍のファンなんですよ。後は『災害戦争』の時代の剣姫もそうなんです」

「ああ、そうなんですね……」

「『災害戦争』! それ知っているんだよ! 当時の厄災が、このマギ大陸を飲み込むほどの大津波を起こしたんだよね? そこに剣姫と呼ばれていた人が、津波を、真っ二つに斬ったと、伝われているんだよね!」


 ユミルちゃんとは、気が合いそうなんだよ!


「ソフィアさんも付いてきたんですね」

「私はユミル様の行くところへ、どこでも着いていきます」

「ですねー。わかっていましたよー。ソフィアさん、召使いですもんねー。というよりかは、腕っぷしからして用心棒?」


 ルナちゃん、顔はあたし達がいる方へ、向いているんだけど、何でか、わからないんだけど、目線が、あたし達がいる方へ、向いていないんだよ。


「ふぅ。用心棒ね〜。そっちの方が私には、似合うね」

「否定はしないんですね」

「ところで、なんでルナちゃんは、ここに~? しかも、一人で〜。危ないわよ〜。外には、危険種がたくさんいるんだから〜」

「カチュアさん達には、関係がな……」


 ルナちゃんが言い掛けようとしたんだけど。


「ルナちゃんが心配なのよ〜。わたしは〜」

「圧が強いですよ! 顔近づかないで下さい! というか、デカいオッパイをルナの顔に近づかせないで下さい!」


 カチュアさんは、笑顔で、ルナのに近づいたんだよ。というよりかは、ルナちゃんの顔に胸を当てているみたいなんだよ。


 それにしても、カチュアは、笑顔をしているはずなのに、何だが、雰囲気が怖いんだよ。


「分かりました! 話します! ……は~。ちょっと、兄様に関して気掛かりなことがあって、その……」


 どうしたんだろう。ルナちゃんが、話の続きを話すのに、躊躇っている、見たいなんだよ。


「訳ありかな? それも、何だが、言いにくそうだな。カチュア、ここは、あまり触れない方が良さそうだ」


 カチュアさんの瞳の色が赤くなったんだよ。


「この感じ、カチュアさんでは、ないですね」


 ソフィアさんが尋ねるんだよ。


「ナギさんだよ。カチュアさんの中にいるんだって」

「瞳の色だけでなく、雰囲気も違う。二重人格ですか?」

「私が表に出ているけど、その間の記憶はちゃんとあるみたいだから、二重人格ではないみたい」

「そうですか?」

「あー。ソフィアだっけ? あなた、まったく動じないようだけど、別の精神体が宿っているって、信じるの?」

「普通に信じますよ」

「即答かよ! 根拠は!?」

「余りにも、カチュア殿と雰囲気が違いますから。カチュア殿は演じるのは苦手な印象はありますし」

「わたくしも、始めはビックリしました。でも、こういうことって、あるんですね」

「そうそう、あるものじゃないと、思っているのは、私だけかな? それに、ユミルはユミルで、結構、能天気なんだな」


 ナギさんも、ユミルちゃん、ソフィアさんと打ち遂げた見たいなんだよ。良かったんだよ。




 街中を歩いていると。立派な、というよりかは、派手な服装をした人を見かけるんだよ。祭りでも、やるのかな?


「おや、おや、貧乏人が、せっせっと働く姿、惨めぜザマス」


 声がする方を見ると、街中で見かけたような派手な服装した、まん丸太った、おばさん二人と、その反対でボロボロの服を着た女の子が蹲っていたんだよ。


 見ている限り、まん丸太った、おばさん達が、女の子をいじめているように、見えるんだよ。現に、まん丸太ったおばさんたちは、女の子を蹴っているんだよ。


「なんか、嫌な感じがするわ~、腐った匂いもするわ~」


 カチュアさんが、匂うって言うから、あたしも匂いを嗅いでみたんだよ。だけど。


「ん? 腐った匂いというよりも、お花の匂いかな? でも、匂いが凄くキツイんだよ。あたしは、好きにはなれないんだよ! この匂いは!」

「エドナさん。カチュアさんの言う、腐った匂いはそう言う意味ではないですよ」

「じゃあ、どういう意味ですか?」


 ルナちゃんに尋ねるたんだよ。


「ここは、特に貧困の差が激しいのよ」


 あれ? あたしのことをスルーされているんだよ? もう! カチュアの嗅いだ匂いが気になるんだよ!


「ひんこん~?」

「お金を持っている人が入れば、お金を持ってない人がいるよ。お金を持っていなければご飯も買えないのよ」


 街も大変なんだね。あたしが思っていた街とは、違うんだよ。


「あまり、目立たないようにしないと……」


 ルナちゃんが注意を促したんだよ。


「あれ? カチュアさんは?」


 あれ? 本当なんだよ。さっきまで、あたしの隣にいた、カチュアさんが、いなくなったんだよ。


「やめてあげて~」


 カチュアさんが、まん丸太った、おばさんたちに、近づいていたんだよ。


「カチュアさーーーん!! 何をやっているんですか!!?」


 ルナちゃんが大声を出したんだよ。


「なんですか? ボロいマントなんか着て? 見窄らしいザマス」

「蹴るなんて酷いわ~。人として、どーなのかしら~」

「ふん、金を持たない貧乏人が貴族に歯向かうではないザマス」

「お金がないと生きられないって、貴族って、不便ね~。じゃあ、お金がなくなったら、まず、生きてこれないのね~。生きるために知恵を付けないとだわ〜」


 カチュアさん、凄いです。まん丸太った、おばさんたちに……圧力? を掛けられているうえに、笑顔でいられているんだよ。


「まあ! わたくしらを、侮辱するザマスか? こうなったら、我々の家来に、お前をボコして差し上げますザマス」

「その時は~、わたしも対抗するね~」


 カチュアさんは、拳を丸めた右手を、左側の平手に重ねたんだよ。すると。


 バーーーーーン!!! シューーーーーン!!!


 カチュアさんと、離れていた、あたし達に突風が襲い掛ってきたんだよ。一方、まん丸太った、おばさん達も、襲い掛かる突風に待機れなくなったのかな? 地面に腰が付いたんだよ。


「ひひひ!!! お! お! 脅しザマス!!?」

「けど、やばいザマスよ!!! このアマ!!!」


 まん丸太った、おばさんたちは、慌てて、逃げていったんだよ。


「だいじょぶ?」

「ありがとうございます」


 立ち上がった女の子は、お辞儀をした後、何処へ行ったんだよ。


「カチュアさん! もう、行動は慎重に! 助け出すなとは、言いませんが、貴族の人達に目を付けられたら大変ですよ! もう、手を出していますけど」


 ルナちゃんが、頬を膨らませたんだよ。


「ごめんなさい」

「もうー! ほら、人が集まってくる前に、ここから離れますよ! ほら、行きますよ!」


 ルナちゃんはカチュアさんの腕を掴んだんたまよ。


「ルナちゃん~、ちょっと~」

「てか、突風起こせるなんて、どんな力があるんだか」

「ナギさーん。表に出ていますよー。気をつけて下さい」

「すいません。カチュアにツッコミ入れようとしたら、つい」

「つい、だけで、人格切り替えられるんですか!?」


 ルナちゃんは、カチュアさんの腕を、引っ張って歩くんだよ。


 あたしは、カチュアさんとルナちゃんを追いかけようとする、ところに。


「エドナ殿。ちょっと、よろしいですか?」


 ソフィアさんに止められたんだよ。


「はい、何ですか?」

「カチュア殿と、始めて会った頃から、思ったんですか、カチュア殿は何処のお嬢様でしょうか?」

「お嬢様って、ユミルさんみたいな、お姫様って感じでいいのかな?」

「概ね、その認識で構いません」

「そうは言っても、分からないんだよ。カチュアさんとは、最近知り合ったばかりなんだよ」


 頭を抱えていると、ユミルさんが。


「わたくしも、薄々感じていました。カチュアさんは、実は、どこかの、高級な家柄出身じゃないかと。のんびりした雰囲気なカチュアさんは、確かに、美しい方ですわ。ですが、それ以上に、どこか、品の良さを感じる気がするのですわ」

「少なくっても、ドブ水で生息しているのが、お似合いの、あの豚貴族よりかは、貴族らしい雰囲気があります。戦っている姿も、美しいですし」

「わたくしも、思わず見惚れてしまいますわ。多分、カチュアさんなら、活躍次第で、歴史に名を残す偉人になると思いますわ」


 う~ん、ソフィアさんの言う、豚貴族って、さっきの、まん丸太った、おばさん達のことかな? あの人たちは、豚だったんだ。ユミルちゃんのような亜人の一種かな? 


 それよりも、カチュアさんのことだよね。今思えば、カチュアさんって、七年前に旅に出たと言っていました。だけど、その前には、何処で育ったのかを、聞いたことがないんだよ。


「そう言えば、気にしたことが、なかったんだよ」

「よく、素性も、わからない方と仲良くできましたね」

「そうかな?」


 そういえば、以前、ルナちゃんにも似たようなことを言われたような。初対面で、仲良くすることって、そんなにないのかな?


「エドナさーん、それと、後のお二人さーん。早く来て下さーい」


 ルナちゃんが呼んでいるんだよ。


「あ! すみません! 今行きます!」

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