表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第四章 再会
44/348

4-回想 ルナサイド

 ルナの兄であるアルヴスは、あの日を栄に、笑わなくなりました。


 いいえ、笑顔は見せます。しかし、兄様の見せる笑顔は、心の底から笑っていないのです。


 寧ろ、兄様の見せる笑顔は、恐怖しか、感じられなかったのです。


 今でこそ、そんな不気味な笑みを浮かべる兄様ですが、昔は、よく笑っていた。表情だけでなく、心の中でも、笑っていた。




 ルナが五歳の頃。


 当時から母様は、病気がちで、家の外から、出られるのが、難しい体だったのです。


 魔道研究院の父様は、忙しさのあまり、家へ帰らることは少なかったのです。そのため、幼いルナの面倒を、主に兄様が積極的に見てくれました。


 しかし、そんな兄様も、幼いながら、父様と同じ魔道研究員だったのです。魔道研究員として、忙しいにも関わらずにですよ。


 そんなある日、ルナは、素性不明のならず者に、誘拐されそうになったことがあったんです。


 ならず者が、ルナに近づきそうに、なったところで、兄様が助けてくれました。


「ルナ! 大丈夫か?」

「だいじょうぶです。それよりも……にいさまは、だいじょうぶですか?」

「俺なら平気だ。誘拐野郎は、俺の魔術で倒した」

「でも……」


 兄様は、得意な火の魔術で、ならず者を倒しました。倒したのはいいのですが、兄様は放った火の魔術は、幼いルナでも、明らかに人向けて、放ってはいけない、火力だということは、理解していました。


 そう、余りにも火力のある、火の魔術のため、ならず者は、全身、真っ黒に焦げていました。


 下手したら、死んでいますよ、これ。


「やり過ぎですよ、にいさま! テキさん、まっくろになっていますよ!」

「はっはっはっ! ……俺の実力では、手加減が出来なくって……。でも、ルナが無事なら、それでいいぜ」


 笑いながら、誤魔化しました。しかも、さり気なく、自慢も入っていましたよ。


 今、思い返せば、わざと、かもしれません。多分、兄様は、ルナのことを誘拐しようとした、ならず者で、魔術の練習か実験体に、したのですね。


 そう考えたら、ならず者は、ルナのことを誘拐しようとしたことによって、真面な法による罰よりも、悲惨な末路を辿ってしまったのですね。


「悪い人を捕まえないと、いけないのは、ルナは分かります。でも、だからと言って、悪い人を殺しちゃったら、逆に、にいさまが、捕まって、しまいますよ!」

「はっはっはっ! その時は、その時だな! 俺の中では、妹の安否優先。それ以上に大事なことは、ない。それだけだ」


 また、笑って、誤魔化しましたよ、この人。その内、本当に、捕まりますよ。


 だけど、ルナのことを大事にしてくれる、兄様が、ルナは大好きだった。あの頃の兄様の笑顔は素敵でした。兄様が笑顔を見せた時、自然と安心できるんです。




 だけど、ルナが六歳の頃、全てが変わり果ててしまいました。


 ルナ達の父様が、謎の死を遂げました。当時のルナは『父が亡くなった』としか、知らされてなく、なぜ死因までは、分からなかったです。


 これにより、母様は、ただでさえ病弱な体にも関わらず、父様が亡くなられたショックで、さらに症状が悪化してしまいました。もう、何日か、食事を取らなかったことが、ありました。


「とうさま……どうして?」


 父様の遺体を目の前にして、泣き崩れるルナは、兄様の懐へ抱き着く。


「大丈夫だ。ルナはにいちゃんが守るよ」


 兄様はルナに笑顔を見せた。


 だけど、当時のルナでも感じられていました。いつもの笑顔を見せていた兄さまですが、あの笑顔は、心の底から笑っていなかったように感じ取れました。




 母様に関しては、ルナが八歳になった頃、兄様は、あの悪帝を倒した八人の勇者の一人にして、現在、皇帝を支える八人の将、八騎将であるシグマ様に仕えるようになったんです。シグマ様が、手配してくれた、お手伝いさんに、母様の面倒を見てもらい、ルナは魔術の勉強を頑張っていたのです。シグマ様には感謝しきれません。


 お陰で、魔術に関しての、勉強する時間が作れて、最少年で魔術研究員になれましたから。


 一方、兄様の方は、あの頃から、笑ったと、言うべき笑いをしなくなりました。


 同時に、兄様はルナのところへ帰ってくる回数が少なくなってきた。たまに、帰ってきた日は、体がボロボロで、ご飯を食べる元気すら残っていなかったようで、すぐにベッドに横になってしまいます。母様も心配していました。


 いくら、兄様に、何かあったのかを聞いても、答えてはくれませんでした。もう、心配で、心臓に悪いですよ、体がボロボロになって、『何もない』って言い切るのは、無理があります。


 もう、体が弱い、母様を心配かけないでください!


 時が過ぎ、めでたく、ルナが十歳で魔術研究員になった年の、ある日。


 何のきっかけかは、忘れましたが、ルナは悟ったりました。兄様の笑顔を見せなくたった原因を。それは、兄様は、父の死の真相を探っているのではと。


 そう、自分の感情を殺してまで。そう思い、ルナは、兄様を密かに探ることにしました。


 魔術研究員になったルナは、魔術研究をしながら、兄様の動向を探っていました。


 何も、話さない兄様が悪いんですからね。


 探っているうちに、兄様は貴族の家柄関係の者や、騎士願望の者には、あまり、よく思われていなかったことを、知ってしまいました。


 理由は、遺族の家柄ではないうえ、英雄の力という、勇能力を持ってないのもは関わらず、八騎将の側近になっていたから、らしいです。


 実力さえあれば、家柄関係なく、出世できる帝国。力さえ、あれば、個々の実力もそうだか、身分、財力、兵器の所有。そう、力さえあれば。


 だけど、国を守る、将となれば、力を高めなければならないのです。そのため、いくら高貴で身分であっても、勇能力という強力な力を所持していなければ即位ができない。もちろん、その側近も。そんな中で、まだ、歴史は浅い、コルネリア帝国で、勇能力を持たない兄様は異例の出世を果たした。しかし、納得できないものが、多く存在していて、兄様は日々陰口を叩かれていた。そして、ルナが十二歳の時にシグマ様の、もう一人の側近となったロゼッタさんも。


 本当に国を守る人達の言動なのか、疑ってしまいました。




 そして、ルナが十三歳、現在。兄様は、アヴァルの街にしばらく、拠点を置くとのことで、ルナも付いて行きました。アヴァルの宿を借りて、魔術研究をしながら、兄様の同行を探っていました。


 決して、ストーカーではありません!


 しかし、そんな中、事件が起きました。


 それは、隣国であるヴァルダンの連中が、コルネリア国内で、襲撃を起こしたのです。


 ヴァルダンは蛮族と呼ばれる程の連中。しかし、襲撃してきた、ヴァルダンは強敵だったと報告を受けていました。


 その秘密は恐らく武器。まるで、生き物の亡骸で作られたような武器は、勇能力の持ち主ですら、手こずらせれていたらしいです。


 何とか、ヴァルダンが使っていた、武器を入手し、その武器をサンプルとして、魔術研究の拠点であるタウロの街に運ばれました。


 兄様は、その解析作業を手伝うため、タウロの街へ向かうことに。ルナも着いていくと言ったのですが。


「とにかく、俺が帰ってくるまでお前は留守番だ、いいな?」

「もう! 兄様たら!」


 やはり、断れてしまいました。兄様はルナを置いて、一人で行ってしまいました。


「このまま、何もできないのかな? 兄様のあの顔は見ていられないのに」


 一人で、背負い込もうとする兄様の背中を見ることしかできなかった、ルナ。本当に、悔しいです。


 魔術研究員でも、所詮は子供です。何も、できないのです。このまま、無茶をする兄様の帰りを待つしかできないのでしょうか?


 そう思っていた、瞬間でした。


 ドーーーーーン!!!


 え!? 何の音?


「エドナちゃん、だいじょぶ?」

「いたた……、なんとか……」


 音がする方を見ると、立っている女性と、地面にお尻が付けているルナぐらいの小さな女の子の姿が。


 特に目が言っていたのは、立っていた女性の方です。


 綺麗な蒼い髪をしていて、さらに瞳の色も綺麗な蒼色だったのです。蒼い髪に蒼い瞳、それは、誰でも知っている、蒼炎伝説の英雄、女将軍のシェリアと同じ特徴を持つ綺麗な女性だったのです。


 本当に、そういう人がいるんですね。ルナの記憶では、髪と瞳の色が同じ蒼色の人は見たことありません。珍しいです。


 あ! 見とれている場合じゃなかった。


「大丈夫ですか?」


 駆けつけました。


 奇妙な出会い方ですが、これが、ルナとおっぱ……じゃなかった! カチュアさん。そして、おっぱ……じゃなかった! エドナさんとの出会いだったのです。


 この二人合わせて、おっぱいにしか目が行かないのですが……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ