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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第三章 翼を持つ者
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3-4 ユミルサイド (場面変更)

「酷い……」


 わたくしとソフィアさんは、セシル王国にある、ユラ村に着きましたのですわ。魔物の襲撃に、あったと聞いていましたけど、わたくしが想像していた以上に、悲惨な状態ですわ。


 家の殆どが壊されていますわ。怪我を負って倒れている人も、何人か見えましたわ。


「ユミル様、余り見ない方が……」


 このような状況でも、ソフィアさんは物凄く冷静ですの。表情も一つも変えていないのですわ。


「わたくしは……、大丈夫ですのよ……」


 ……とは言っては、見ましたが、わたくしの、体はガタガタと震えていますのよ。


「無理はしないでください」


 やはり、見破られてしまわれましたわ。ソフィアさんには嘘は付けませんですわ。


 ですが、怪我を負った者達への治癒を行いたくっても、この国に限ったことではありませんが、治癒術を扱える者は少ないです。だからこそ、治癒術を扱えるわたくしが怪我を負った方々の治癒をしなければなりませんわ。


 だから、怯えるわけには……。


「お待ちしていました。ユミル様」


 声がする方へ、顔を振り向けて見ると、そこには、鎧が、わたくしの元へ向かってきましたわ。


「いやーーー!!! 鎧を着た、魔物ですわーーー!!! たーすーけーてーーー!!!」


 思わず叫んじゃいましたの。きっと、これは、鎧だけの魔物よ! 何で、ここに!?


「あの……、私は、鎧を着たセシル兵です」


 兜の中をよく見たら、人の顔がありましたわ。背中の辺りには、翼もがありましたのよ。よかったですわ。思わず、鞘に納めている刀を抜こうとしましたのよ。魔物だったら斬るところでしたわ。


「それで状況は?」

「あの~。スルーですか?」

「なんか、言いましたか?」

「い! いいえ! 何でもないです!」


 いつも思いますのよ。ソフィアさんは、なぜか、表情一つも変えてもしないうえ、特に怒った顔もしていないのに、物凄く寒気がしてきますのよ。


「魔物の方は、我々が退けました。……ただ」

「ただ?」


 兵士さん。なんだか歯切れが悪いです。なんか問題が、あるのかしら?


「あそこにある魔物の死骸を見てください」


 兵士さんの指をさした方角を見ると、魔物の死骸が。パッと見てみると、ほとんどが狼型に魔物の死骸ですの。


 村の周りも見渡すと、狼型の魔物の死骸が、大量にありましたの。


 だけど。


「何か問題でも、ありますの?」

「なるほど……」


 ソフィアさんは、魔物の死骸を見て、納得したかのように、頷きましたわ。


「ソフィアさんは、何かに気づいた見たいですわね。どうなのですか?」

「襲ってきた魔物は全く種類の違う魔物なのです」


 よく見ると、魔物の死骸は、全て同じ種類ではなく、何種類かの異なる魔物ですわ。同じ狼型でも、わたくしがよく知る四足歩行の狼型の魔物に、二本足で歩くマナーガルム。そして。


「あれは……、ありえないですわ。この死骸はフリーズガルム。……確かに妙ですわ」


 あれ? 確かにフリーズガルムがいること自体おかしなところですよね。魔物は高い生命力を誇ってはいますけど、弱点の属性魔術で、苦戦は免れませんが対処ができるますわ。


 そう、フリーズガルムって、確か、寒い地方にしかいないはずですのよ。だから、暖かいセシル王国で活動するのは、全くではないものの、自ら、向かって行く場所ではありませんわ。


 それなのに、なんでここに?


 考えれば、考えるほど、頭が痛くなりますのよ。


「あ! そうですわ! 怪我人の治癒をしないと、なりませんわ!」


 村を襲ってきた魔物のことは、気になるところではありますが、村人さんたちの怪我を治さないとですわ。


 わたくしは、怪我をしている人のところへ駆けつけ、治癒術を掛けていきましたわ。わたくしは次々と怪我人の治癒を始めましたのよ。


 普段のわたくしは人見知りのせいで、自分から進んで、人と接することはしませんわ。本当にわたくしは、情けないですわ。接するにしても体を震わせているのですのよ。ソフィアさんといった、ある程度慣れている人には、普通に話せますのよ。でも、人見知りだからと言って、怪我をしている人を放置はしませんのよ。しっかりと、お勤めを果たさないと、いけませんといけませんわ。




 今、治癒をかけている方で最後ですわ。


「これで最後ですわ」

「おお、ありがとうございます。助かりました」


 この村の村長さんがお辞儀をしましたのわ。


 時間は掛かりましたけど、ようやく、村人さん達の怪我の治癒が終わりましたのよ。取り敢えず、死人がいなくって、よかったですわ。


「お疲れ様です」


 背後から、急に、声を掛けられてしまいましたわ。だから、わたくしは、つい……。


「いやぁぁぁぁぁぁー------!! 魔物ですかぁぁぁぁーーーーーー!!!? 助けてくださいぃぃぃぃぃぃーーーーーー!!!」

「あの~、ユミル様。わ、私です」


 よく見たら、さっきの鎧さん。ではなくって、兵士さんだったですわ。


「あ! あ! す、すみません! 魔物だと思いましたわよ!」


 また、刀を抜こうとしましたのよ。危なかったですわ。もう少しで、自軍の兵士さんを斬るところでしたわ。


「うちの姫様を怖がらせないでください」


 兵士さんは、ソフィアさんに注意されていますのよ。何だか、兵士さんには申し訳ないことしちゃいましたわ? 


「あの……、私が悪いのでしょうか?」


 兵士は、何も、悪いことをしていませんですのよ。絶対に。


「ユミル様、お疲れのところすみませんが、何か来ます!」

「え?」

「……後ろの方ですね」


 シュ!!


 ソフィアさんは、後ろへ、振り向くと同時に、四本のナイフを投げつけましたのよ。わたくしも、後ろを振り向くと、体中、火で燃えている狼の姿が。魔物に分類される狼ですわ。


 六匹はいますわ。ですけど、そのうちの、四匹は倒れていましたわ。いいえ、死んでいますわ。その四匹は、ソフィアさんが投げた四本のナイフが、四匹同時に額に命中したのですのよ。額に命中したが、ナイフは額に突き刺さっただけではすみませんでした。ナイフは狼型の魔物の体を貫通したのですわ。


 まだ、この魔物のサイズから見て、下級系の魔物ですから、魔術を纏ったナイフで体を貫通はできたのです。これが普通のナイフや拳なら、いくら相手が下級系の魔物でも体を通すことは不可能ですわ。


貫通したナイフ四本は、既に地面に突き刺さっていますわ。ナイフはまだ、「バチバチ」と音を立てていましたわ。


 四本同時に投げて、四本とも、当てるなんて、ソフィアさんのナイフ投げの腕前は凄いですのよ。


「これは狼型の火属性魔物、デッドガルム。気を付けてください」


 残っているデットウルフのうち一匹が、わたくし目掛けて、襲い掛かってきますわ。慌てて、刀を抜くと。


「いやぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」

「言うまででも、なかったですね」

「いやだぁぁぁ! いやだぁぁぁ!! 来ないでくださいぃぃぃぃぃぃーーーーー!!!」

「あの……。ユミル様~~」

「もうぉぉぉ!!! やだぁ! やだぁぁぁーーー! やだぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」

「ユミルさまーー、あの~、もしもーし~」

「やぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!! やぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」

「ユミル様~、それを解体しても、魔物の肉は毒なので食べれません」

「はぁぁ!!」


 我を戻ったら、魔物が切り身になっていましたわ。わたくし、また、いつもの、あれになっていたのですわ。


 恥ずかしいかったわ~!


 わたくしは、同様するともう、無我夢中で刀を振り回すようで気が付けば、攻撃対象の姿がなくなっちゃうようなのですわ。


「ユミル様、怖いです」


 もしかして、引いちゃったかしら?


「いいえ、逞しいの間違えでは?」


 ソフィアさんは怖い目で兵さんを睨みつけていますのよ。


「あ、すいません」


 ソフィアさんの一言で、兵士さんの体がより一層、震えてきていますわ。


 ふっと、ソフィアさんを見ると。


「あ! 危ないです! ソフィアさん!」


 そう言えば、デットウルフは、もう一匹残っていましたわ。ソフィアさん目掛けて、デットウルフが真横から襲い掛かってきますわ。


 危ないですわ! ……デッドウルフの方が。


 ソフィアさんは、デッドウルフの方へ振り向かずに、ナイフを投げつけましたのよ。



 そして、命中しましたわ。相手を見ないで、当てられるなんて、凄すぎます、ソフィアさん。


 ナイフは、デッドウルフの体を貫通しましたわ。そして、飛んでいった、ナイフは地面に刺さったのですわ。そのナイフは「バチバチ」と音を立てていましたのよ。


「何がですか?」

 

 ソフィアさんは、笑顔で、わたくしの方へ、振り向けましたのよ。


「いいえ。何でも、ありませんですわ……」


 ソフィアさんは、とても、爽やかな笑顔を浮かべましたのよ。


 ソフィアさんは、普段はナイフを武器として扱いますのよ。それと加えて、雷系の魔術も扱えるのですわ。さっきのナイフには、電気を付着させていたのですのよ。


「さすがですわ」

「ユミル様、奴らが、また来るかもしれません。急ぎましょう。取り敢えず、村人を連れて、この近くにある、アレル村へ行きましょう。今、ポッポ便で応援要請をしました。ただ、国中、同じ騒動ですので、期待はできません」


 ポッポというのは、通称、伝書鳥と呼ばれていますわ。ポッポは、手紙などの届け物を届けたい相手に、確実に配達してくれる不思議な鳥ですわ。


「わかりましたわ。わたくし達も、そこへ向かいましょう」


 わたくし達は、ユラ村に人達を引き連れ、アレル村へ向かうことにしましたのよ。


 そこで、わたくしは、あの人達と、運命的な出会いをしますのよ。


「この国は、戦闘部族の国だったのかな?」


 あら? 薄っすらですけど、何か聞こえたような、気がしましたわ。


 ……気のせいでしょうか?


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