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蒼炎のカチュア  作者: 黒桐 涼風
第二章 英雄の力
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2-4 ルナサイド

 翌朝。


 ルナは宿屋の入り口で、あのお二人さんを待っている最中です。


 さてさて。二人と会う口実ができたのは、いいんですけど、これから、どうしよう?


 あの二人が、ライム村の悲劇に関わったのは、確実です。そして、二人は生き残っているうえ、ライム村を襲ったヴァルダンの方々は、恐らく全滅。そして、全滅させたのは、あの二人です。しかし、昨日、一日だけで、二人は悪い人では、ありません。二人は自衛でヴァルダンの方々を倒したんでしょう。つまり、二人には、ヴァルダンの方々を倒せる程の実力を持っているに違いありません。その秘められた力はなんなのか、解明しないと、その力を持つ者に狙われる可能性があります。特に、コルネリアにいる、腐った権力者や、反逆者達に。


 でも、その要件がないとしても、放って置けないんですよ。あの二方は。第一印象は、人を疑うことを知らないような、お人好しだったし。会った、ばかりのルナ相手に気さくに話せるぐらいですから。


 だからと言って、その人柄が、決して、悪いことではありません。ルナが、今まで会ったことが、ある人の中では、一緒にいると安心するんですよ。


 なんせ、ルナの周りには、きな臭い人達が、溢れて程にいっぱいいたから。本当に、気分が悪くなってしまうぐらい。


 そろそろ、待ち合わせ時間の十時ですね。


「はわわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 バキーーーーーン!!!


 叫び声がした途端、宿屋の入り口扉を、破いて、例の二人の内の小さい方の、緑髪の女の子が、飛び出してきましまた。確か、あの子、エドナさんという名前でしたっけ? 


「何事ですか!?」


 ドーーーーーン!!!


 エドナさんは、転ぶと同時に、顔面を思い切り、地面へ叩きつけてしまいました。痛そうです。


「お待たせなんだよ!」


 何事も、なかったかの様に、接していますよ。この人。


「エドナさんですよね? 鼻血出ていますよ!」

「あ! やだんだよー!」


 エドナさんは、咄嗟に鼻を押さえました。


 この人、会った時から、転んでいたような。本当に、よく転ぶ方なんですね。


「大丈夫ですか?」


 宿屋のモニカさんが駆けつけてきました。


「うう、ごめんなさい……弁償します」

「いいのよ!! 悪意があって、やったわけではないから、気にしないで」

「はうう……」


相変わらず優しいですね。モニカさんは。


「ところでルナちゃん」

「どうしたんですか?」


 遅れて、宿屋から出てきた、カチュアさんが尋ねてきた。


「なんで、わたしだけ、マントを付けないといけないの~?」


 ルナが、昨日あげた黒マントを着たカチュアさん。本当にマント着るなんて、思いもしませんでした。


 マントを着るようには、しましたが、こうして見ると、かなり、怪しく感じてしまいます。


 でも、これを着ていないと、色々面倒臭いんだよ。この人、一番色々と目立つんですよ。


 エドナさんも、隠せるところは、隠していますから、特にマントなど着る必要はありません。


「鏡見てくださいよ。カチュアさんは、立っているだけで目立つんですよ! 特に、おっぱ……、あなたの蒼い髪と瞳は目立ちますよ」


 ルナは、生まれてから一度も、伝説の女将軍のような蒼い髪と瞳なんて見たことがないです。カチュアさんは、そんな見たこともない容姿をしています。それだけでも目立つのに。


「それにカチュアさんは、おっぱ……じゃなかった、おっぱ……じゃなかった、おっぱいがデカいんですよ! 無駄にデカい胸を持って、目立ち過ぎますよ」


 「おっぱい」と言わないように、何度か訂正しましたが、ついに、口を滑らせて、「おっぱい」と言ってしまったんです。


 カチュアさんの胸は、デカ過ぎます。ただ、胸がデカいだけでなく、カチュアさんは、今までは、あった女性の中では、一番の美人なんです。


 マントは、そんな容姿を隠して、男を寄らせないようにする、魔除けになります。……多分。


それに、この国の、主に貴族連中に目をつけられてしまったら、彼女の自由が無くなる恐れがあります。だから、できる限り、目立たないように、動かないと、いけません。……できれば。


「ちょっと~。無駄にデカいって、酷いわ~」


 カチュアさんの、その顔は、怒っている顔でも、しているのでしょうか? なんか、逆にかわいいです。


「ところで、ルナちゃんが持っている、それは何ですか?」


 エドナさんは、ルナの手に、持っている杖に、指を刺して尋ねた。


「これは、ルナの武器です」

「これが武器何ですか? これを使って、叩いて、攻撃するんですか?」

「確かに、護身のために、振るうことはありますけど、この杖は、棒術として、叩いて攻撃するものではなく、魔術発動のものです。この杖は魔道具の一種なんです」

「はわわ~。魔道具って、あたしの腕輪のように、アクセサリーの形だけじゃ、ないんだね! 初めて、見るんだよ!」


 好奇心旺盛な子供の目の様に、ルナの持っている杖を見つめています。本来、魔道具として、杖を使うのは、珍しいことでは、ありません。しかし、エドナさんには、珍しいことなんですね。結構、世間知らずの方なんですね。


「それよりも、この話は歩きながら。早く、行きますよ」


 このまま、杖の話をしていたら、日が暮れますので、話を一旦切りました。続きは話しますが、今日は、話しません。日が暮れますので。




 二人と合流したルナは、二人をある場所に案内すしました。ある意味、二人が生きていくのに、必要な施設へ。


 というよりかは、今のお二人では、あそこしか、お金を入手できませんので。


「いい天気なんだよ!」

 

 エドナさんって、元気な方ですね。あんなに、はしゃいで。もう、彼女の姿が見えないほど離れていきます。けど、なんで、案内しているルナより先に行くのでしょうか? 目的地は分かっているのでしょうか?


 いいえ、分かっていないですね。だって……。


「着きましたよ。エドナさん、ここですよ」


 目的地過ぎちゃています。エドナさんは目的のところまで戻る途中。


「はわわわわわわわわわわわわわわ!!!」


 って、またーーー!!?


 エドナさんは、前方へ転びました。顔から地面にぶつかりましたよ、この人。相変わらず、派手に転んで、ぶつかって、痛そうです。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。よく転びますから」


 だから、それ大丈夫なんですか? こんなに転んでいるのに、よく、生きてこれましまわね。というか、顔をぶつけたのに、鼻血が出ていないのが、不思議ですね。


 あっ! さっきは、出ていましたっけ? じゃあ、今回は当たりどころが良かったってことかな?


「さてと。ここが目的地です」

「ここは?」


 カチュアさん達が案内した場所は、お店を経営しているような建物です。


「ここは、ギルドです。酒場屋も兼ねている仕事探しの場です。ここには、仕事の依頼が持ち込まれているので、それを受けて仕事をこなすんです。そして、成功報酬として、お金を受け取れます」

「でも、なんでここに?」

「お金を稼ぐ手段を知って、おかないと。特にエドナさん、街は初めてでしょ? さあ、入りましょう」


 ルナ達はギルドに入っていきます。正直、あまり入りたくないんですよ、ここには。相変わらず騒がしいし、昼間から酒を飲んでいる方々もいるし、絶対に関わりたくない、ガラの悪い人が、いっぱいいます。


 けど、他に、お金を稼ぐ方法って、商売ぐらいしかないので、それ以外の稼ぐならギルドの利用するしかないです。お二人さん、商売とか、出来なそうなので。


 カチュアさんとエドナさんを、掲示板のある、ところまで案内します。


「これは何?」

「この掲示板には、依頼書が貼り付けてあるんです。この中から、自分ができそうな、仕事を探すんです」

「なるほど~」

「試しに挑戦してみたらどうですか? 誰でも受けられるから。ただし、仕事をキャンセルしたり、失敗したら違約金として、罰金されますから、注意してください」

「分かったわ~。やってみるわ~」


 いい返事ですが、罰金の意味わかっているのか、心配です。


「内容が分かりにくかったら、ルナに聞いてくださいね」

「わかったわ~」「わかったんだよ!」


 返事()()はいいですね。返事()()は。


 ルナも、何でも、いいから、簡単な依頼を見つけましょう。


 ルナの目的は、カチュアさん達の戦闘力を把握すること。そのために、街で暮らすために必要なお金の稼ぎ方を教えるの口実で、ギルドへ案内したのです。そして、危険種の討伐とかの依頼を探して、カチュアさん達の戦闘する姿を拝見するのです。


 やはり、彼女達を庇うにしろ、万が一のことを考えて、戦闘力は把握した方が都合がいいのです。


 でも、危険な依頼とかだと、ルナが、受付人から、制止されそうだから、できれば、ルナが同行できるような、簡単な依頼を探さないと。


 掲示板を眺めていると。


「おい! ちびっこ! よくも俺の酒を!!」


 何か、揉め事かな? 怒鳴り声がする方を向くと、小さな女の子が大柄の男の人に絡まれています。


 よく見たら、男のズボンが、何かで濡れています。床には、ガラスらしき破片が散らばっています。破片の形を見た限り、元の形はお酒を入れるグラスかな? となると、恐らく、女の子が、この男にぶつかって、持っていたお酒を零したんですね。


 どうしましょうか? 助けましょうか? 正直、この状況は掘って置けません。ルナの魔術なら、相手を消し炭にできますので、ここは……。


「も~。だめだよ~。そんな、変な顔で圧をかけちゃ~」


 ああ!! カチュアさんが首突っ込んでしまいました!! 


 というか、怒った顔をしているのに、変な顔って言っていますよ、あの人。


「なんだ!? 痛い目に、あいたいのか!?」


 女性相手でも、容赦がなさそうでね、あの男の人は。


「ん? どーして、わたしが痛い目にあうのかしら~?」

「あん!? 分からねえのか!? こうゆうことだよ!!」


 男はカチュアさんに殴り掛かろうとしてきました。だから、ギルトには、入りたくなかったんです!


 と言っている場合じゃなかった! カチュアさんが……


 シュ!!


「何!」


 カチュアさんは、襲い掛かる拳を避けました。慌てて避けた感じはしませんね。結構、余裕で躱しているように見えました。


「くそ!!」


 再び、拳で殴り掛かってきました。


「え~と~。じゃあ~~、グーには、グーね~」


 それ、ジャンケンだったら、相子になるのでは?


 カチュアさんも拳で対抗。だけど、カチュアさんの場合、殴るというよりかは、腕を上げただけ。そして、拳と拳がぶつかり合っいました。


 バキバキバキィ!!!


「い! いたぁぁぁぁぁぁーーーーー!!! 手が……手がががががががが!!!」


 男が痛がっている? 対してカチュアさんは痛ぶる素振りを見せていないです。


 それに、「バキバキバキィ!!!」と音が聴こえたような。そして、男が痛たがっている。もしかして、あの男の拳の骨、折れている?


「ちくしょーーー!!!」

「もう~。信じられないわ~」


 男は、手を痛めているにも関わらず、カチュアさんに殴り掛かろうとする。


「いやーーー!!!」


 突然、エドナさんの叫び声が聞こえる。上から? 見てみると、エドナさんが、宙に浮いていました。


 これは、どういう、状況ですか!?


 何がどうなったら、そんな状況になっているんですか?


 よく見たら、エドナさんの靴が濡れています。もしかして、エドナさんは溢れた酒の上に踏みつけ、滑ってしまったのでは。


 だからって、どんだけ、飛ぶんですか!? この人は!


 ドーーーーーン!!!


「ぐほぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!?」


 エドナさんは、空中から、男の脳天目掛けて、踵を落としました。踵落としが決まってしまいました。


 こんな、偶然、ありますでしょうか?


「ぐえええーーーーーーん!! 痛いよ~~~ーーー!! ママーーー!! たずけてぇーーーーーー!!!」


 男はギルドから出て行った。というより、逃げていった。それも、泣きながら。


「だいじょぶ?」

 

 カチュアさんは女の子に声を掛けました。


「ありがとうございます。お姉ちゃん達、強いんですね」


 達? ん? んん?


「……エドナさんは、転んだ、だけですよね?」

「もー---!!!」

「そうだ! あのね、強いお姉ちゃん達に、お願いがあるの」

「お願い?」

「うん、とても、急ぎなの」

「どんなお願いなの~?」

「ええとねぇ。ロブ村にいる、病気のお祖母ちゃんのために、薬を届けてほしいの。やっと、お祖母ちゃんの病気に効く薬を手に入ったんだ」

「ロプ村は、ここから遠いのかしら~?」

「ううん。近いんだけど、最近は凶暴な魔物がでると噂があるの。でも、あたちは戦えないから、ここに来たの」

「そっか~。それなら、わたしたが、この薬を代わりに届けるわ~」

「ちょっと、後先考えないで、依頼受けてもいいの?」

「いいのよ~、困っているんだから~。エドナちゃんも、いいかしら?」

「もちろんなんだよ」


元気な返事をする。


「大丈夫かな?」


 結構お人好しなのね。


 でも、立場がルナに置き換えても、多分、カチュアさん同等に、引き受けるつもりだったと思う。多分。


「ありがとう、お姉ちゃん達。これが、あたちが言っていた薬です」


 女の子からお薬を受け取った。


「そういえば、あなたのお名前は」

「ミカンです」

「ミカンちゃんね。必ず、届けるね~」

「お願いします!」




 女の子の依頼を、引き受けたルナ達は、ギルドを出たところです。


「じゃあ、行きましょうか」

「その前に、ちょっといいかしら~」


 カチュアさんが、話しかけてきましま。


「ルナちゃんに聞きたいことがあるの~」

「何ですか?」

「わたし達は、もしかして……試されているのかしら〜?」


 カチュアさんは、笑顔のままだったけど、何でだろうか。急に空気が……変わりました。


「どういうことですか?」


 カチュアさんが、何を言いたいのかわからない。


「嘘をついている感じはしないのよ〜。でも、うまく言えないけど、何か隠している感じがするのよ〜」


 もしかして、ルナのカチュアさん達の戦闘力を把握する目的がバレましたか? 口には出していないはずです。それなに、どうして?


 ……もしかして。


「あなたは、人が何を考えているのか、わかるんですか?」

「わからないわ〜。ただ、人の気持ちはわかるのよ〜」

「気持ち?」

「表では、笑っているんだけど、心が泣いているとか?」

「……そうですか。……それで、そんなルナと一緒にいて、いいのですか?」

「何で?」

「こっちが聞いているんですけど」

「でも、ルナちゃんは悪い人ではないわ~」


 断言する。この人の前では、隠し事はできない見たいです。かと言って、会ったばかりのお二人には、全部を放すわけにはいきません。

 

 少なくとも、あの話だけでも。そう、ルナが、カチュアさんのことで気になったことを、話しましょう。いいえ、()()()()()()()()()()()


「一つ聞いていいですか?」

「ん?」

「間違っていたら、すいません。もしかして、あなたにしか見えない、もしくは聞こえない生物か、なんか、います?」

「……」


 カチュアさんが黙り込んでしまいました。


「ナギちゃん今話せるかしら〜? ……え? いいのよ、心配しないでね〜」


 一見、一人芝居をしているようでが。やはり、ルナが思っていた通り、誰かいる見たいですね。


 カチュアさんが一回、目を閉じた。


「まったく、お人好しすぎるよ」


 目を開くと、カチュアさん蒼い瞳が赤い色になっていた。


「目は、赤くなるんですね」


 やっぱりですね。恐らく、この人は魔術の一種で、カチュアの中にいる可能性があります。


 魔術を使っていなければ、魔力は感じられない。魔道具もないのに魔力を感じられるわけですね。


 ただ、どんな方法で、カチュアさんの中に入っているまでは、分かりませんが。


「悪いけど、話はゆっくりしたところでしないかな? 正直、これは疲れる」

「そうですか。その前に、一つだけ聞かせて。あなたが、表に出なかったとしても、ルナの声は聞こえていたの?」

「あなたとカチュア達が、出会ってからの、会話は全部聞いているわ。それと、私は記憶を失っている。自分が誰かはわからない」

「そうですか。わかりました」


 説明する時間は省けそうですね。


「じゃあ、行きましょうか〜」


 正直、彼女達のことを知るために、ギルドの依頼を受けることを勧めて、見ましたが、そんな、周りくどいことをする、必要はなかったかな?


 ん? あれ? いない。ルナの隣には、カチュアさんしか、いないです。


「ところでエドナさんは?」

「あれ? 本当だ、エドナちゃん、どこだろう~」 


 もしかして、ルナとカチュアさんが話している間に先にいちゃったのですか? とにかく探さないと。……まったく、世話が焼けますね。

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