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The Diary  作者: 石榴矢昏
6/7

Day6

 


 久々に、()()()()()()()の夢を見た。

 現実の出来事かと錯覚するくらいに、生々しくリアルな夢だった。 


 僕は――否、僕に成り代わられた彼女は、いつもの散歩道である、森の中を走っていた。


 視界の中で揺れる長い髪。わずかな胸元の重み。弾む呼吸。

 自身の身体だけでなく、周囲の光景も、どこか違和感があった。

 

 あたりは不自然なほどに光に包まれていて、少し眩しいほどだった。

 まるでいつもの森そのものではなく、何もない空間にその映像を映し出し、余計な演出を加えたかのような、そんな不自然さを感じていた。


 とにかく僕は、大きな切り株のある最深部へと急いでいた。


 たどり着くと、先客が切り株に腰掛けていた。

 灰色の髪の青年は悠然と座りながら、僕に向けて微笑んだ。

 表情は白い霧のように覆われて見えなかったが、きっと微笑んでいた。


 ――君を待ってたよ、サラ。


 と、彼は唐突に僕の名を呼んだ。

 何故この青年は、僕の名を知っていたのだろう?


 ――君ならまた戻ってくると信じてたよ。


 初対面のはずの青年はそう言い、僕のほうへ手を伸ばしてきた。


 反射的に僕が何かを叫んだ途端、その光景はぶつりと途切れた。

 ベッドの上で髪をそっと撫で、胸元に触れ、やはり僕ではない誰かの夢だと確認できた。


 否、自分のままで『誰かの夢』を見る事などあり得るのだろうか。今まで『誰かの夢』だと自分に信じ込ませていたものたちは、すべて私の夢なのではないか。


 あるいはここ数日の幻覚も、僕自身の本当の姿なのかもしれない。


 きっと、そうだ。


 あれがきっと、本物の()なのだ。

 私はあの姿でいなければならなかったのかもしれない。

 これまでの僕を縛りつけ、深い井戸の奥底に沈めてでも、このように在れということなのか。


 だとしたら、これまでの僕は、一体誰だったんだ?


 ついさっきまで眼が冴えていたのに、急に強い眠気が来た。

 このまま机に伏してねむってしまおうか、


 手はかろうじてうごくけれどあしはうごかない。


 だれかぼくをよんでいる。

 そろそろいかなくちゃ


(解読不能の文字の羅列)


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