重力波地下観測所-1
「……よぉ、見えるか? 『門の前』が」
デンジが双眼鏡を覗き込むフォレスターに顔を寄せる。
見つめる先は、300メートル程離れた谷の対岸にある古い建物だ。
「ええ、見えますよ。門の前に政府のエレクトロイドが2体……警備でしょうね。何しろ彼らは電源ケーブルさえ接続しておけば、24時間365日を連続して警備出来るわけですから」
フォレスターが、じっとその様子を伺っている。
「あーあー、とっくに使ってない筈の施設を『警備』? これ以上無いくらいに『分かりやすい』わよね」
ミズキも小型の双眼鏡で対岸を見ている。
「そうだな。……『重力波地下観測所』か。さて、警備体制もそこまで厳しくないと分かったし、あっち側に回るぞ」
デンジが立ち上がって、足についた土を払い落とした。
―― それは、2日前の事だった。
デンジが『超破壊兵器』の獲得を宣言してから、チーム・デンジは『兵器は政府が秘匿している』という仮定のもと、その隠し場所について洗い出しを続けていた。
もし仮に『政府が隠し持っている』のだとして、『それ』は何処にあるのか。
その場所にはいくつかの条件が必要になる筈だ……というのがデンジの読みだった。
「いいか? まずは政府が自分自身で管轄出来る場所だ……そうでないと、他人の立入り等を制限出来ないからな。それから『都市部には無い』と思っていいだろう。どういう兵器を使うのか知らんが『暴発』という危険も考慮する必要があった筈だ。人里離れた場所と見るべきだ」
「……あのぉ、軍の施設という可能性は無いですか? そこが一番安全じゃないかと思いますが?」
オレンはそう提示したが、それに首を横に振ったのはミズキだった。
「いんにゃ。それは無いと思うよぉ。『身バレ』するからあんまり言いたく無いけども、アタシが居た頃から陸軍の中では『何故、政府は堂々とエターナル社と戦う事をしないのか! 自分達は飾りなのか!』と不満が爆発してたし。もしも『それ』が軍内部にあったら、ソッコーで噂が広まると思うけど?」
それに対し、フォレスターも同意を示す。
「私もそれは賛成です。私が海兵隊に所属していた時にも、そんな噂は全くありませんでした」
「うーん。無いかぁ……ですよねぇ。空軍は『陸地』が少ないんでアレでしたけど、確かに聞いた事がないですね」
オレンも天井を仰ぐ。
「軍ではない……そしてなるべく見つかりたくないし、目立ちたくないとなれば……逆にかなり絞れるかものぉ。例えば墓地とか、何かの記念公園とか……」
テーブル型の大型モニターに地図を映し出し、フグアイが『政府関係組織』をマッピングしている。
「今、検索条件の絞り込みをしておるが……おほ? ここなんかどうじゃ? ここから100キロメートルほど離れた先の山奥に『重力波地下観測所』っちゅうところがある」
「それ、面白そうですね……アーカイブに記録が残ってますよ」
フォレスターがパソコンを操作してネットから古い記録を検索していた。
「うむ……遥か宇宙の果てからやってくる『重力波』を観測するため、地下300メートルの場所に巨大な設備が眠っておるんじゃ。もっとも、ワシが子供の時分にはすでに役割を終えて、元の『廃鉱山』になっておったと思うがの」
フグアイは顎を撫でながら、昔の記憶を引っ張り出している。
「デンジさん、見てください」
フォレスターが振り返った。
「衛星写真を拡大しようとしたら、そこだけ『エラー表示』になります。どうも、何らかの検閲があるようですね」
指差すモニターに『この場所は拡大表示出来ません』の文字が映っている。
「……とりあえず、お散歩に行く価値はありそうだな」
デンジは無表情なまま、ベルの方に顔を向けた。
「ベル、済まんが『ピクニック』に行ってくる。食料の準備を頼む」




