意外な遺物-3
「へぇ……これが『それ』ですか」
デンジとフォレスターは、本来の目的地であった第6電井でオレンと合流していた。
オレンは歩きながら、撮影された画像をタブレットで面白そうに見ている。
「……それはいいが、特に変わった事は無かったか?」
デンジ達は管理棟を出て、発電タービンのある施設のドアを開けた。
「え?ええ、問題無いですよ。正常に運行しているみたいです」
先行していたオレンは、施設の中を一回りしてチェックしていたのだ。
「まぁ、『エレクトロイド』達がしっかり仕事をしてますからね……。よほどの事はないかと」
「ああ……そうだな」
デンジ達を無視して淡々と作業を続けるエレクトロイドを横目に、デンジが複雑な表情を浮かべる。
『エレクトロイド』は元々エターナル社の開発した汎用人形ロボットだが、別にエターナル社側だけが使用しているわけではない。
人が作業するには辛い職場……例えば漁船や農業・林業の現場や、こうした電井の施設運転の現場にも、エレクトロイドは活躍の場を持っている。
エターナル社がエレクトロイドを悪用している事から、市民の中には嫌悪感を持つ者も少なくはない。だが、現実問題として少ない数の人類で今の文明生活を維持するためには、こうしたロボット達の活用無くしてはありえないのだ。
「しかし『ロボット』ってのは何と無く抵抗感はあるよな。無論『コイツら』はこっちが支配権を握っているから無害だと知ってはいるが……何しろそれでも命令次第でどうにでもなるんだしよ」
ロボットに感情はない。メカトラブルが無い限り、24時間を連続して作業させる事が出来る。その代わり、『正義感』も無いから命令次第で殺人マシーンにも使えてしまうのだ。
「ま……エターナル社のエレクトロイドは知りませんが『こっち』のエレクトロイドのファームウェアには書換不可能領域において『人間を襲ったり傷つける命令は無視する』とプログラミングされてますから、安全ではありますが」
少し寂しげに、フォレスターが呟く。
「……別に『お前』の事を言ってんじゃねぇよ、フォレスター。お前はボディこそ機械だけど、首から上は『人間の時のまま』だろうが。それにお前の身体は事故で失って『仕方なく』だ。それは皆んな理解してるさ」
ポンと、デンジがフォレスターの硬い背中を叩く。
「しかし、デンジさん」
重い空気を切り替えるように、オレンが画面を見つめたまま話を変えた。
「これ、画像を見る限り内部から爆発したわけではなく、外部からの攻撃で破壊されたみたいですね。破片の端が全て『内側』を向いてますから。一体、何をしたらこんな事が出来るんでしょうか? とてつもない高熱にでも遭わない限り、こんな酷いことにはならないと思うんですが……」
「いや……現時点では何も分からん。もしかしたら本格的に調査したら何か出てくるかも知れんけどな。一度アジトに戻ってから、『彼女』とコンタクトを取ってみるかだな。アッキー達のチームに応援を要請してみるよ」
デンジが上着のポケットからタバコを取り出す。
ふぅ……と紫煙を天井へ噴く。
アジトにいる時や、近くにミズキがいる時には「臭いから吸うな!」と激しいクレームが付くので『こういう時』でもないと中々味わうチャンスが無いのだ。
もっとも、ベルに言わせると『その方が健康に良いですよ』だそうだが。
「応援か……そうですね」
その傍らで、木々に埋もれる『壊れた車両』の画像をオレンはじっと見つめ続けていた。




