意外な遺物-1
次の日。
ルルル……
電動ヘリが奏でる空気を切り裂くローター音が、いつになく静かな機内に響く。
今日は事の外、この音がよく耳に入ってくる。
「で……今日はどちらに偵察を?」
フォレスターがデンジに尋ねる。
「おう、普段あまり行かないところだな。どうすっか……そう言えば低番号の古い電井はあまり行ってないな。よし……」
デンジが荷室から操縦席へと顔を出す。
「オレン、少し遠くて済まねぇが第6電井へ向かってくれ。そう言えば、一度も見に行った事が無ぇはずだ」
「了解です、リーダー!」
オレンが軽く敬礼をして、操縦桿を第6電井へと切って行く。
「……気の所為かも知れませんが」
長い足を投げ出したまま、フォレスターが呟く。
「今日はヘリの荷室が『静か』ですね。少し拍子抜けするほどです」
「ま……だろうな。何しろ『ミズキ』とかいう『スピーカー』を搭載して無ぇからよ」
へっ……!とデンジが肩で笑う。
「直前まで『着いて行く!』と駄々をこねてましたが……何しろ38.5℃の熱ではねぇ……無理はさせられません。ベルさんが『ただの風邪だろう』と笑ってましたから任せてきましたが」
「そりゃそうだろうよ。あの馬鹿、シャワーの使いすぎで貯湯タンクの湯温が下がってんのに無理して使おうとするからヒーターが追いつかなくなって最後は水みたいになっちまって……そりゃ、風邪も引くわな」
普段はほとんど笑う顔を見せないデンジが、少しだけ頬を緩ませた。
「ははは……そうですね。でも、お陰で今日は好きに行動出来ますから。何しろ普段は『アタシがこっちに行きたいからこっち!』と『ご指示』が飛びますからねぇ」
「まったくだ! 遊覧飛行じゃあるめぇし、誰がリーダーか分からねぇってもんだぜ!」
「……デンジさん、フォレスターさん。見えて来ましたよ、第6電井です」
オレンが荷室に声をかける。
「見えたか……やはり初めて来るな」
小窓からデンジが外を眺めていると。
「お……や?」
不意に、顔が険しくなる。
「おい、フォレスター。何だ、あれ」
そこは電井からは100メートルほど離れた場所であった。
デンジの指差す先に、何か木々が膨らんで見える部分がある。それも一部ではなく、まるで小さな山脈のように曲がりながら連なっているようだ。
「……何でしょうね。どうも下に何かあるようですが」
フォレスターも窓からその『盛り上がり』を見つけたようだ。
「オレン! あの真上でホバリングに入れるか? オレとフォレスターで降下して、少し様子を見てくる。お前は第6電井の管理棟に着陸して待機しててくれ」
デンジが降下の装備を準備しだした。
一方、その頃。
「ふぁ……ふぁ……ふぁっく……しょん!」
ミズキが簡易ベッドの上で、大きくクシャミをする。
「あーあー、ミズキさん。やっぱりダメでしょ? 大人しく寝ててくださいね。あと、お薬はちゃんと指示通り飲んでくださいね」
ベルが薬と水の乗ったお盆をミズキの元に持ってきた。
「うぅ……! 違う! 今のは風邪のクシャミじゃない! 絶対に誰かがアタシの悪口を言ったんだわ! もう、絶対そうだから! 間違いなく犯人はあのデンジよ! あの陰湿野郎……アタシを置いてきぼりにするだなんて! 帰ってきたらブン殴ってやんだから!」
「はいはい。そんなに元気なら、すぐに良くなりますよ」
ベルが笑いながら、ミズキの上半身にシーツを掛け直した。




