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現実世界で平凡だった俺が、異世界転移しても平凡でした。


異世界でも平凡な俺。ぱーと4



エミリアとの怠惰な日々を送り続け当初の目的を忘れていた俺であったが

決してエミリアに飽きた訳ではないと念頭においた上でエミリアに聞く事にした。


「エミリア、エリスという名前に聞き覚えはないか」


エミリアは、驚き、引きつった表情をして、なんで…と言いたそうな顔だ。


「エリスお姉さまは、もうここには居ない。でもどうして君がその名前を知っているの?」


おや、姉妹だったのかな。

俺は、エリスとの携帯を使った連絡方法や、俺の世界での事、お嬢様との事は言わなかったが出来る限りを伝えた。


「なるほど、そんな手段があったとは。…君と初めて会った時、ムジュラの事を少し話したと思うのだけど、エリスお姉さまはムジュラにいる。」



それからはムジュラなる集団の話を聞く。

そもそもムジュラとは、エルフ族の自警団から始まった。警察みたいなもんか。

それこそ里の子供たちが憧れ、里のエルフたちからは尊敬のまなざしを受けるべき集団だったそうだ。

それが、ある時魔族の召喚した異世界人がその不遇な待遇で怒り、この4つの大陸を巻き込む大戦の日。

当然ムジュラはエルフ族の代表として戦った。

その時、問題は発生をした。


主に魔族との戦いが多かったが、エルフと魔族が交わってしまったのだ。

その経緯は、詳しくはわからないそうだが、無理やりにしろ、同意の上にしろ、異例の魔族とエルフの混血が生まれてしまった。


当初は、生まれて間もないその子供を生かせる場所などなかったが、大戦のさなかでその母なるエルフと魔族の血が入った子供は姿をくらましたそうだ。

大戦が終わってからは、ムジュラに対しエルフ族は罵声を浴びせた。

戦うべき相手の子を孕み、あまつさえ逃がしてしまうなど裏切りものがいるのではないかと噂になったのだ。

その姿を眩ませたエルフ族というのがムジュラのリーダーだったのだ。

不思議な事に、ムジュラのメンバーは何も語らなかった。

その罵声を受け、謝罪も反論もせず、ただ受け入れた。

しばらくして、ムジュラの存在が憧れの存在から、山賊の様なビランになっていった。


新たなメンバーは増える事はなかったが、ある日、里一番の魔力保持者であるエリスがムジュラに参画したと噂がたった。

確かに変わり者であったエリスがムジュラに興味を持つ事は、想像にたやすい事だった為、興味本位であろうと誰もが思った。

すぐに帰ってくる。

あの屈託のない笑顔で、ばつの悪そうな顔をして、あっさりかえってくると誰もが思っていた。


だから誰も追わなかったし、探さなかった。

その噂は少ししてみんな忘れてしまったそうだ、それからしばらくして里がムジュラに襲われた。

ムジュラが食料を求めて襲ってくる事は、珍しい事ではなかったが、そんな時必ずエリスがあっという間に蹴散らす為誰もが危機感を失っていたそうだ。

ああ、また来たのかと。

しかし、エリスがいなくなった事を皆が思い出す。

大慌てで対応をする里のエルフたちだったが、その日は違った。

そうムジュラの部隊にエリスが居たのだ。

あっけにとらわれている間に里の食料はもっていかれてしまった。

こうしてエリスが、ムジュラの幹部になった事が里に広まり、エリスの名は悪名高いものとなったそうだ。



「では、俺を呼んだのはムジュラって事か。しかしいいのか?俺がここに居るってことは、里にムジュラが攻めてくるって事にならないか」


「おそらくはそう…だね。君がエリスを知っているって事は。でもエリスお姉さまは君がここにいる事をたぶん知らない。」


つまり、一時的なのだろう。

ここに居ては里の戦いの種になる事は決まっていた。


「出ていった方がいいのだろうな」


あの長老が聞けば普通はそうだろう。


「でも行く当てがないでしょう。かといってムジュラに君が利用される事も里としては危険だし、このままここでいいんじゃないかな」


やはり、この異世界人に対して過大な期待をしているようだが、俺には何の能力もない。

ここでエミリアには伝えておくべきだろうか。


「なあエミリア」


むしろ伝えておいた方がいいと思い、思い切ってエミリアに打ち明けようと思ったその時。


里中に、大きな爆発音が轟いた。


「エミリア!ムジュラが来た。その方を隠せ!」


美形な男性エルフが突然家の外から大声を上げる。

これはなんというフラグ。

ムジュラの話をしていると現れるやつ。

これは本当に現実なのだろうか、所謂ゲームの中に入ってしまった的な事なのだろうか。


「なんでそんなに落ち着いているの!早く隠れて!」


それもそうか、なんだか危機感とやらがどっかに行ってしまったらしい。

むしろ頭の中がクリアになって、よく思考が出来る。

それに俺の予想だと、どこに隠れていても見つかるパターンだ。


俺がだらだらしているものだから、さすがにエミリアも怒って俺を隠し部屋に押し込んだ。

とにかく狭い。


しばらくして、爆発音やら怒号が飛び交い、静かになった。

エミリアは大丈夫だろうか。


足音がする。

ああ、これくるやつじゃん。

足音からして女だ、たぶんエリスじゃあないかな。

そいつに隠し部屋を開けられた瞬間。



俺は地の荒野にたたずんでいた。


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