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現実世界で平凡だった俺が、異世界転移しても平凡でした。
異世界でも平凡な俺。ぱーと3
ここがどこで、自分が誰なのかくらいはわかる。
でも、君が誰かがわからない・・・
ここの人達は区別がつきにくいから、アクセサリーとか髪型に個性があるのだけど
一糸まとわぬその姿は、もう誰かわからない。
というより、誰でもいい。
「あれれ?わからないかな。確かに僕たちは、君からしたら区別がつかない風貌かもしれないけれど、言葉を交わせば、わかるよね?というか、君にこんな事が出来るのは僕くらいと想像できないかな」
もうわかった。
いや、わかってはいたけれど、勘違いかもしれないとそう思っていた。
エミリアは女だった。
短い髪、活発な言動、ただそれだけだった。
エルフの人達は、女性も男性も峰麗しい。
中世的な風貌で、筋肉も最低限だ、女性と男性を明確にする女性の象徴も慎ましやかである。
けして、俺が女性の特定の部分を重視しているわけではないが、
大きいのがいいとか小さいほうがキレイだとかは個人の感性である。
何がいいたかったかというと、男女の差がほぼないという事だ。
しかしながら、今目の前にいるエミリアの局部には、男性の象徴はもちろんない。
サイズの問題とかではなく、女性のそれである。
俺自身にお嬢様との経験がなければ、いや、厳密には、あったかもしれない経験で
俺の経験など、朝のその一瞬のお嬢様の裸体なのだけど、
それ位の情報でも十分にわかる。
エミリアは女だったのだ。
もうお分かりだろう。
俺は混乱をしている。
なぜ、というと人は答えに行き詰まり、最終的には言葉を失ってしまうものだが
今回は違う、確かに、なぜと思う事もあるのだが、ここはあえて言わせてもらう事にしよう。
「エミリア、なぜ」
これが精いっぱい。
エミリアの体は、薄暗い部屋の明かりの中で隅々まで明確に見えるというわけではないが
それでもわかる肌の極め細やかさ、美しさ、普段から狩りをしている影響からか
適切な運動から得る事のできる健康的な身体。
およそ形容しがたい、理想的なボディ。
けして、お嬢様と比較をするわけではないが、こちらは、異世界。
種族が違うのだ。
奥さんや彼女の可愛さと、海外のモデルとの違い。
その全てが今俺の目の前にある。
しかも、頂いていい目をしている。
「なんだか、変な顔をしているけど、まあいいんだけど。」
艶めかしい表情から一転、若干の興ざめた様子ではあったが、それもまたいい。
何を考えているのだ俺は。
「あのね、帰りが遅くなってしまって、ごめん。帰ったら君が寝てしまっていたから、説明は明日にして、事を先に済ませてしまおうと思ったんだよ。正直君のような人は滅多に紛れてこない。他の子も相当に君を狙っていると思ったし、証だけでも、はっきりさせておこうかと僕も必死だったということさ」
「エミリアには何の事かわからないと思うが、割と俺は、こんな状況を今まで脳内で何度となくシュミレーションしてきた。だからこそ、理解はあると思っている」
「ちょっと何を言ってるか所々わからないけれど、うん、聞こう」
「このまま流されてしまって、この先俺には何が待っているんだ?」
それをこの先の関係についてOKととらえたのか、はたまた我慢が出来なくなったのか。
先程の艶めかしい表情に戻ったエミリアに、力いっぱい押し倒された。
もとから、横たわっていたわけだけれど。
耳元で、それはお楽しみと囁かれてからは、本能のまま、エミリアを愛した。
その時、お嬢様もエリスもいなかった。
俺には目の前のエミリアしかいなかったのだ。
言い訳をするようだが、こんなにも可憐で俺がする事、なすことを肯定的に受け入れ
その全てを包み込んでくれる、しかしそれだけではなく、あくまでも対等に恥じらいながらそれでいていじらしい。
俺に我慢など出来るはずもない。
この状況下で出来るやつがいるのなら、代わってみろ。いや代わらんが。
俺の記憶の中では、初めての体験だった。
人類が存続できる理由がわかった気がする。
全てではないにしても、これは癖になる。
一度でも経験をしてしまったら最後、俺の存在はまさにこの為にあったのではないかと思えてくる。
先にひと眠りしていた俺の横で、俺に寄りかかるように目を閉じているエミリア。
何と愛おしいのだろう。
出会ったばかりだというのに、この先、エミリアの為に生きていく事に躊躇いがない。
童貞とは恐ろしい、呪いだと考えていたが、呪いではない。
もはや神の加護である。
こんな事を知ってしまったら、人類は崩壊をする。
怠惰で色欲の毎日を送ってしまいたくなる。
勢いで関係を持ったとしても、この先の展開は読めてくる。
恐らく俺の監視役として、エミリアは関係を持った。
少なくても、この美貌で言い寄られれば耐えられる男は少ない。
これでこちら側が女なら、それは美男子が付くのであろう。
そうして、異世界人を保護、良いように丸め込み、何かに利用するのか、まさか魔王を倒してくれなんて言われるのだろうか。
それも全て遅い、もう行為はしてしまったのだ。
明日の朝、エミリアからゆっくりと事情を聞く事にして、俺は本日2度目の眠りにつく事にした。
「おはよう」
俺が目を覚ました頃には、俺の横にエミリアは居なかった。
それに、どうやら朝食の用意をしてくれている様子。
「昨日の夜は、そのなんというか、ありがとう?」
無理だった。
エミリアは、服も着ずに、朝食を用意し、上目遣いで昨日の行為にお礼をいうのだ。
一度タガが外れた俺の理性には、ブレーキがない。
昨日に引き続き、怠惰と色欲の登場だ。
「あの・・・ダメじゃないんだけど、ごはん冷めちゃうし、話をしたいからね」
それも2度3度行為が終わった後のセリフだ。
俺はこんなにも我慢できない男でしかも早い男だったか?
「すまない。その、俺も初めてで、いや初めてじゃないかもしれないけど、記憶がなくて、だから初めてみたいなものだけど。すごくて」
もじもじと顔を赤らめて聞く、エミリア。
こいつもしかして宇宙で一番かわいいのではないだろうか。
「ごめんね。嬉しいのだけど、言っておかないといけない事があってさ」
きた。
所謂イベントシートいうやつだろうか。
これから無理難題な依頼があるのか。
それとも、制限のつく監視体制についてなのか。
「僕が君と関係を持った理由はたぶんわかっていると思うけど、こっちでは異世界人は特別でね。大切にしなくちゃいけないんだ。だからこっちの世界に来て初めてあった異性がお世話をする事になっていてさ、だから今回は僕ではあったのだけど。状況によっては僕じゃない事もあるから、気にしなくていいんだけどね。」
この子は何を言っているだろう。
まあ聞くか
「でも一番は僕が欲しかったし、1番に見つけたのも僕だった事に変わりはないのだから当然の権利というか、でもごめんね。君が感じているその高揚感は、僕の魔法なんだ、魅了っていう」
は?
「印はここにもう貰ったから、別に僕は1番でなくてもいいからね」
彼女の下腹部には、印が結ばれていた。
ある特定の状況でよくみる、アレだ。
「たぶんお昼には、効果がなくなると思うから、びっくりすると思って、今話をしてる。だからごめんね」
この愛はまやかしだというのか、信じられない。
というか俺は宇宙一愛しているというのに、エミリアは俺を愛していないかもしれないのか?
その日の昼まで、さんざんした。
エミリアも、黙って受け入れてくれた。
たくさんの思いを込めて、俺は己の限界まで、エミリアを愛し尽くした。
その瞬間は突然きた。
あんなに艶めかしかったエミリアが、自分よりも一回り年下の女の子位にしか感じなくなった。
俺はこんな子になんて事を何度してしまったのか。
「本当にごめんね。僕は十分愛してもらえたから、君の好みじゃなくてごめんね。さっきも言ったけれど、僕は一番でなくていいから、もう一番は貰ったから、たまに愛してくれればいいからね」
無理だった。
魅了とやらは切れているらしいが、おかしい。
この子が愛おしい。
「エミリアが一番だよ」
その日は夜まで、休む事はなかった。