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現実世界で平凡だった俺が、異世界転移しても平凡でした。


異世界でも平凡な俺。ぱーと2


この草原には見覚えがある。

そうだ、あの書店の襖、あの奥に広がる草原と間違いがない。

俺は、だらんとしたワイシャツを整え、あたりを見回す。

ここは、異世界なのだろうか。



遠くから声が聞こえる。

エリスだろうか、しかし、俺はどうやってここに来たのか。

そもそも俺はエリスとしか面識がない、いや、会ってはいないが。

なんか原住民とか、わからんが、敵やモンスターに襲われたら一発で終わる。

何しろ俺には武器もなければ、武道のたしなみもない。

狂暴な犬でも、俺を殺す事は難しくないだろう。


連絡手段と思い、ポケットを探るが、携帯はお嬢様に取り上げられていた。

ひとまず、この場所は隠れられる場所がない、少し離れた所に森がある。

危険性も高まるが、ここでじっとしているよりもマシだ。

俺は少し小走りに茂みに入り、身を隠した。



「おかしいな、この辺だと思うんだけど」

「しかし、本当なのか、転送に成功したというのは」



二人組の誰かが来た。

エリスの顔でもわかればいいと思ったが、面識はないし、あの二人はターバンのようなもので顔を隠している。

わかる訳もない。あれ、俺の視力と聴力こんなによかったっけ?


「間違いがないよ、賢者様が言っていたんだ、向こうと繋がっているのは聖域の丘だけだし、大丈夫だと、思う」


「まあ賢者様がそう言っているなら、そうなんだろうけど。でもいくら聖域と言っても魔獣は出るのだろう」



まて、魔獣だと。

なんとなく、たぶんエリスっぽい感じはするが、違ったら事だ。

もう少し様子を見てみよう。



「この時間では森に近づきさえしなければ、魔獣は来ないさ。でも早く見つけないと」



おい。

森って、この森か?

お約束通り、俺の背後から草木が揺れる音がした。

わかっているよ、これ振り返ったらヤバイやつだよね。



しかし振り返らない訳にいかない。

何かわからんうちに死んでしまう訳にはいかない。

俺は恐る恐る振り返ると、そこには映画や漫画で見た事のあるエルフってやつがいた。

そいつは、人差し指で、静かにするようにポーズをとると、あの二人組に弓を引いた。


おいおい、何がどうなっているんだ。

お前がエリスか?


そのエルフは弓を弾き、反対側の森に矢を放った。


「音がしたぞ。」

「向こうの森だね!」


音に連れられて、二人組は姿を消した。

これでよかったのだろうか。


「こんな場所でそんな恰好をしているのは、向こう側の人だね。危ない所だったよ。」


エルフってやっぱすごい顔が整っているんだな

男か女かわからん声だし、顔だし、エリスっぽいかもしれないけど、こちらの情報は閉まっておこう。


「さっきのふたり組はなんなの?」


「あいつらはムジュラ。この聖域の丘を狙っている集団さ。私たちも対応に困っていてね、さあ、あいつらが矢に気づく前にここを立ち去ろう。矢の向きでこの場所もあぶない」



何となく、話し方からエリスではない事はわかったが、今の俺に危害を加える様子もないし、ついていくしかない。


しかしこのエルフ、いいスタイルをしている。お嬢様とどっこいじゃなかろうか。




☆現代☆



「お嬢様、このビルを隈なく探してみましたが、対象を発見する事は出来ませんでした。」


「そう、わかったわ」


あれから総動員をしてビルを探したけど、あの男を見つける事は出来なかった。

そもそも、秘密の部屋から出て行った形跡もなければ、この目であの部屋に入る所をみた。

私の知らない通路などないわけだし、どんな手段をもってもあの部屋からは出れるはずがない。

お父様との約束もある上で、どうしても焦りが出てしまう。

冷静になる。

もしや、異世界に転送されたのだろうか。

しかしあの女がいうには、本人の意思を抜きにして転送は出来ないはず。

昨日の夜に、同意をした事で、条件は満たされてしまったのか。


あの男の携帯から、エリスと登録がされているラインに電話をかけてみる。

しかし繋がらない。

メッセージも入れてみた、しかし返事も既読もない。

このままでは。



★異世界★


「ここまでくればもう安心だよ。」


そこは、バカでかい木々がある森の奥深く、漫画で見たそのままのエルフの暮らし、そのものだった。


「ようこそ、バハムートへ!異世界人歓迎しよう。」


なんだその口から破滅のブレスを出しそうな名前は。


「まずは、長老に会いにいこうか。ここでは、異世界人はまず、長老に会ってもらう決まりになっているからね」


そんなお前たちの都合なんて聞いても仕方がないが、今の俺に出来る事はない。

恐らくはチュートリアルであろう。


「そういえば、名前を言ってなかったね。僕はエミリア。このバハムートで親衛隊をやっているんだ。君の事もパトロールの次いでに気が付いたんだよ」


ほいほいと木に登りながら、そいつは自己紹介をしやがった。

俺も挑戦をしたが、うん、無理。


「おや、クライミングは出来ないのかな。では、この木の裏側から階段で登ってきてくれ」



はじめからそうして欲しいね。

この町では、まず木登りが試練にでもなっているのだろうか。


俺はでっかい木の裏側まで移動をし、それだけで息が切れてしまったが、階段を見つけた。

これ、無事にたどりつけるかな?



「ずいぶんと時間が掛かったね。異世界では階段はないのかな?」


こいつ、バカにしやがって。

悪態をつく余裕もないまま、エミリアについていく事でやっとだった。



「長老、異世界人だ。ルールに従い、僕が連れてきたよ」



垂れ幕の向こうから、しゃがれた事で「入れ」と聞こえた。

エミリアが、どうぞとばりにポーズをする。

ここ、入るのだいぶ勇気が必要なんだけど。



「異世界人、バハムートでようこそ。」


うん、長老っていうし、声もしゃがれていたからご老人かと思ったけど、普通のおじさんだね。

エルフって寿命が長いから、実年齢はそうとうなんだろうけど。



「して、こちらにはどのようなご用件で参ったのか」



「俺にも詳しくわからないんだ、気が付いたらあの草原に居た、そしたらこのエミリアが助けてくれたんだ」


ここでエリスがどういった人物かわからない以上、名前は伏せておこう。



「迷い人か。では、エミリア、しきたりに従い、お主が面倒を見よ」



「よっしゃ!了解だよ」



なにがうれしいのか、エミリアは飛び跳ねるように喜んでいる。

あとで事情は教えてくれるのだろうか。


「迷い人よ、混乱ももっともだが、このエミリアがお主にお仕えをする。聞きたい事は山ほどあるかと思うが、のちに聞いてくれ。」



わかったと、うなずき。エミリアに先導をされて移動をする。


「異世界人さんよ、よかった。これで僕もパトロールから解放されるや」


「エミリアさん、どういう事なんだ」


「エミリアでいいよ。親しい友達はリアって呼ぶし」


「じゃあエミリア、俺はこっちに来て何も知らない。詳しい話を聞かせてくれ」



「もちろん、もうすぐに僕のスペースにつくから、そこでゆっくりと話しをしようじゃないか」



エミリアの部屋についてから、くそ苦い汁を飲まされ、この世界の事を聞く。


この世界は、4つの大陸からなり、それぞれの大陸にはそれぞれの種族が統治をしている。

北の大地は、魔族が、東の大地は人族が、西の大地にはエルフ族が、南の大地にはドワーフ族がいるらしい。

争いも当然あったのだけけれど、今は安定をしていて、それぞれの大地で静かに暮らしている。

エリスが言っていた、急を要する事はなさそうだけど。


それぞれの大地には、聖域と呼ばれる不可侵の地域があって、それは門と呼ばれたりしている。

恐らくは異世界へのゲートなのだろう。


かつて、北の大地に現れた異世界人に対して、魔族はこっぴどくひどい扱いをした。

たぶん奴隷のような扱いなのだろう。

異世界人は、皆特殊な力や知識をもっていて、内容によっては4つの大陸を全て制圧をしてしまう程のものもあったとか。


しかし、不遇の異世界人は、魔族に対して報復をし、当時の魔王を滅ぼしてしまった。

その情報を聞いた人王は、その争いに乗っかって、大陸を攻めようとしたのだが、

ドワーフ族に先を越され、挙句の果てに北の大地に攻めるその日に、エルフからの侵略を許してしまったのだ。


大きな争いの後、4人の王は話し合い。

改めて領地を分けた。魔族はだいぶ領地が減ったらしい。


それから、異世界人が現れた場合、まず保護をする事。

手荒な真似はしない事。

他国の異世界人を拉致、誘拐などで独占しない事。



大きくはこんな協定がなされたらしい。

特にエルフ族は、異世界人を最初に見つけた者が、保護者となり、面倒を見ると決まっているそうだ。

働かなくとも、生活が出来るようになるし、異世界人の待遇も考えて住む場所や権限も多く貰えるとか。

玉の輿みたいなもんだろうか。



「しかしエミリアよ、お前の家族とはいないのか?」


「エルフ族は150才を超えると一人立ちをさせられてね、僕の家族もこの森のどこかにはいると思うけど、めったに会わないかな。」


「そうか、では宜しく頼む」


「いいよ!僕としては願ったりかなったりの生活が出来るし、困った事があったら何でも聞いてね」



さっきの話では異世界人には特殊な能力とか知識があるらしいが。

今の所俺に変わった所はない。

しいていえば、視力と聴力がだいぶいいくらいだろうか。

だがそれも、意識を集中しているときだけで、常時発動ではない。

こんなん何の役に立つのだか。



エルフは肉を食わないらしく、昼食は豆のスープに草ばっかり。

健康にはよさそうだが、味がまったくしない。

エミリアがいうには、これでもかなり上質な食事なのだそうだが

向こうでの食事に慣れている俺にはもはや拷問に近い。


「夕食までは自由時間だから、ゆっくりしてね。僕は行くところがあるけど、たぶんついてくると嫌な思いをすると思うから、一人でいくよ」



じゃあと、エミリアは部屋を出ていった。

ゴージャスな部屋は明日から使わせてくれるらしい。

俺はというと、このままこの里で暮らしていけば良いそうだ。

なんたるニート。

特殊な力がないとなると追い出されるのだろうか。



一見すると周りは似た部屋ばかりだから、外に出てしまうと、究極的な方向音痴の俺は戻ってはこれない。

ひと眠りでもして時間を潰すほかないのだろうか。

RPG見たいにツボを割ってアイテムを手に入れる訳にはいかないしな。

疲れていたのか、思いのほか、あっさり眠りについてしまった。




「いったいどうなっている、今まで賢者様が予言を外した事はなかったはずだ」

「選抜隊が遅かったのではないか」

「よもや奴らに取られたのではあるまいな」

「だから、わしは言ったのだ」



「で、エリスよ。あのお方はこちらに来ていると本当にそうなのか」


たくさんの老人たち、この賢人会のじじいたちは、いう事だけは言う。


「はい、端末には、向こうの人物からその旨の連絡が入っています。間違いなくこちらにきているかと」


「では探せ。こちらも相当に労力を使っている。奴らに匿われて先を越されると手が出せなくなる」


「仰せのままに」



君は今どこにいるの?

一瞬連絡が取れたと思っていたのに、無理に転送してしまったから、きっとこうなってしまったんだ。

あの老人たちが急かすからこうなる。

君が心配だよ。




固い床で寝たせいか、体が痛い。

腰を摩りながら起きたら、もうあたりは暗くなっていた。

ぼんやりと見えるその正面には、誰かがいた。

暗闇で見えないが、これだけはわかる。服着てないよね?

君誰?


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