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現実世界で平凡だった俺が、異世界転移しても平凡でした。


異世界でも平凡な俺。ぱーと1


なぜだろうか。

お嬢様とエリスが、異世界と現実世界の物品のやりとりについて話し合っていたところまでは覚えている。

眠気があった事も十分に理解をしているが、不自然な程に記憶がない。

寝落ちにしても、なぜベット?二人で?そしてこの格好。

もしや、やってしまったか、いや、やられてしまった。


「あら、早いのはあれだけかと思ったけれど、朝も早かったのね」


あれとは。

それだけは聞くまい。もし俺の想像通りのあれならば、言及してはいけない。

まず、覚えていない。これは最悪だ。もし事実ならどうして俺は覚えていないのか!

それから、かましているだけの場合。

俺はそもそもいい思いをしていないにも関わらず、利用されてしまう。何もかも。

ここは沈黙が金である。


「その顔だと覚えていないのね。あそこまでして私の体に赤面するなんておかしいもの。私だって不慣れではあったけれど、…頑張ったんだから」


もういいです。

私がすべていけません。

していても、してなくても、お嬢様と関係を持ったかもしれないで十分生きていけます。



「今日は準備ね!用意をしなくてはいけないものもあるし、あなたはいいのよ。会社へは私から指示を出しておくわ。そうね、あなたの事をもっとも嫌っていた人を次の室長にしましょうか」


朝一、天使の笑顔で、このお嬢様は恐ろしい事を言う。

では俺は何をすればいいのだろうか。



「ひとまず、あなたは、ここに居ていいわ。あまり動かれると探すのが面倒だし、それに朝に私と一緒にこのビルを出るとやっかいよ?」


なにせ・・・と、お嬢様が話を終える前にコールがなる。


「なに?」


あれ、スイッチ入りました?


「ええ、わかったわ。すぐに足止めをして。それからこの人を隠して、痕跡もなくね。多分下の階に上着もあると思うから焼却して、いいえ、破棄ではないわ。焼却よ」



それだけでどんな会話かわかってしまうあたり俺も相当なものだ。

恐らく会長かそれに近い人が来たのだろう。

愛娘が普段は使わない、プライベートビルに泊まっていて、どうやら誰かを呼んでいるらしい。

父親として気にならない訳がない。


しかし、その相手が、なんの権力もない、むしろクズである俺だ。

まさにお嬢様は、この件を灰にしたいという訳だ。



「勘違いをしないでね。私、あなたとの関係をなかった事にしたい訳じゃないの。ただ、今は私にその力がないだけ。でもきっと、いえ、必ずそうなってみせるわ。だから今は隠れて、私のSPはとても優秀だけど、お父様を5分と足止めは出来ないわ」


お嬢様に連れられて、ある部屋に着いた。

ここはお嬢様のガチ私室?


「ここまではさすがにお父様であっても隅々までは見られない。さらにそれを読んで調べるかもしれないけど、お父様にも教えていない。私しかしらない秘密の部屋があるの。ここのタンスのここよ。これを開けてその奥に」


このタンスの中は、お嬢様の下着がいっぱい入っているのですが、

それを今見せられて俺はどんな顔をしたらいいのでしょうか。


「ほら!何顔を赤くしているのよ!下着くらい、昨日も見たでしょうに。そうその小箱の中にボタンがあるわ。押してみて」


あまり直視は出来ないが、手探りでそれらしいボタンがあった。

それを押したら、タンスの下から取っ手が出てきた。


「この向こうに、1か月は耐えられる施設が用意してあるわ、私が迎えに来るまではそこにいて、携帯も預かるわ。中にモニターがあるからそれで連絡を取ります。」


さらっと携帯を取り上げられたが、かなり急ぎの様子。

言われるがまま、取っ手を引き、梯子をつたって下に降りていった。



「あとはお父様ね。どこから情報を嗅ぎつけたのかしら。うちにねずみがいるか、もしくは」



「ユイ!」


「お父様!どうして、急に!ご連絡を頂ければお迎えに行ったのに」


「それはいい。お前がここを使うなど、珍しい事だ。何かあったのだろう。話をしないさい」


お父様はいつもそう。

私の話を聞くと言って、いつも自分の事ばかりを優先してきた。

でも、そのおかげで、今、私はあの人と繋がれている。

このチャンスを絶対に逃がしてたまるか。

脱衣所のすべての飲み物に遅効性の睡眠薬を仕込んだし、

ありもしない既成事実を丁稚あげてでも、関係性を掴んだ。


ここで私の野望が潰えてなるものか。



「ふむふむ、そうであったか。で、男か」


「お父様、話を聞いてましたの?男性ではありません。お得意様のお嬢様と楽しくお話をさせて頂いていましたとそうお伝えしました」


「ああ、だから聞いたのだ。そのお得意様はお嬢様ではなく。男なのだろう。時間がなかったと見える。匂うのだ」


そんなはずはない。

まず、そんな行為はしてないし、シャワーも浴びて、この部屋にあの人の匂いが残る事はない。

男性感があるものはすべて灰になっているはずだし、これはお父様の感。


「それは相手方に失礼ですわ、確かに女性らしさが欠けていたかもしれませんが、その分いいお話がまとまりそうですの」


「ほう、話とは」



食いついた。

お父様にとって私の価値は、お金で決まる。

私に対しての心配など、下手な男に捕まるよりも、上流階級の男とつなげたいだけ。

この界隈では、初物の女性が重宝される。

キレイな女性など、金でいくらでも用意できるが、初物はそうはいかない。

お父様はずっと私に純潔を守らせている。

でも、お金の話で逸らせれば。


「この携帯が唯一の連絡手段として、相手方からお預かりしております。でも相手方も慎重ですわ、相手からの連絡に対して、私の指紋と声紋が必要なんですの。今御聞かせできないのが残念ですが」



この携帯はあの人のもので、ぎりぎり、本当が混ざっている。

信憑性はかなり低いが、お父様の知らない携帯が今、目の前にある。

これだけでも、誰かがいた証にはなる。


「ふむ、して、相手方は?」



「朝お早くご帰宅されました。相手方もお時間に余裕がないらしく、今頃は海外ではないでしょうか」



「臭いな。が、いいだろう。お前にそこまでの事をさせるのだ。よほどの事であろう。して、その商談はいつ、はっきりするのだ。いいか。いつも言っているが、曖昧な言葉は通用しない。いつだ。」



「…明日ですわ」


「よかろう。明日、必ずだ」



正直明日、どうにかなるとは思えなかった。

でもお父様は明日以外を受け付けない。

それ以降になると時間も詰めてくる。

明日だけは、時間を詰めてこない事は実体験からわかっていた。

今日中にすべての準備を行い、あの人に異世界に行ってもらう。

エリスとかいう女には悪いけど、明日までに異世界の商品をこっちに転送してもらう他はない。


まったく根拠はなかったが女の感があった、たぶん問題なくそれは出来る。

が、あの女のいう通り、向こうにもルールがある。

今回は向こうが欲しがっているおの男を送り込むのだ。それ位はのんでもらう必要がある。



これ以上はないと踏んだのか、お父様はあっという間に退散した。

それこそ跡形もなく。


秘密の部屋のおの男を呼びにいく。

しかし、その3畳ほどの秘密の部屋にあの男はもうすでにいなかった。



「ここは」


お嬢様の秘密の部屋は、豪勢なビルのルームとは打って変わり、恐ろしく狭く必要最低限の荷物しかない。

一切の贅沢がないというイメージだった。


しかし、ここでどれ位の時間を過ごせばいいのだろうか。

会長がいなくなれば出られると思っているが、準備もあるだろう。


俺は、手当たり次第に暇がつぶせそうなものを手探りで探し、狭い部屋に似つかわしくないモニターの電源を点けた。

設定されているチャンネルは全て映らない。

まあ音が出てしまっては、困るのだろうから当然といえば、当然であるか。

それでもつながるチャンネルがあるのではないかと、パチパチとチャンネルを回した。


「君」



声に出して驚いた。

一瞬だが、画面に何かが映った。

まさか映ると思っていなかったから、通り過ぎてしまった。

しかし、気のせいか、エリスの声な気がした。

何度か、チャンネルを戻してみたが、そんな事はもうなかった。

ふいに眩暈がする…。


次に目を覚ました頃には、あたり一面があの草原だったのだ。


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