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現実世界で平凡な俺。ぱーと5


お嬢様は恐ろしい程、真剣な顔で俺の話を聞いてくれた。

所々質問をしたそうな顔をしていたが、話の腰を折るまいと我慢してくれたみたいだ。

何度か、どうぞ。と言ったが、「話を続けて」との事だった。


そんなに長い話にはならないと思ったが、話始めると意外としゃべってしまった。

たぶん相当余計な事も言っただろう。

それでも注意深く、それでいて確実に俺の話に相槌を入れてくれていた。

こんな若くて、話聞きがうまいとなると将来が心配ですね。


「わかったわ」


ようやく話し終わると、どっと疲れてしまった。

さっきゲストルームからもってきたソフトドリンクもアッという間になくなり

でも話をやめられなくて、喉もカラカラだ。


「ありがとう。すごく興味深いわ、私も考えをまとめたいから、シャワーをあびるわね」


どんな脈絡かさっぱりだが、あえて突っ込むまい。

きっとお嬢様はシャワーを浴びながら考えを整理するタイプなのだ。


「あなたもさっぱりするといいわ、一緒には、さすがに入れないけど、シャワーなら狭いけど、もう一つあるし、脱衣所に飲み物もあるから好きに飲んでちょうだい」


さらっとえぐい事を言ってのけたが、冗談だとすぐにわかった。

お言葉に甘えさせてもらおう。

スーツも汗でぐっしょりだ。

この部屋温度高くない?


さて、お嬢様の狭い、シャワーとは何か。

きっとお嬢様が今使われているシャワーとは、学校の教室くらいの大きさなのだろう。

このシャワー室、俺の部屋くらいはあるのだが。

まあいい、遠慮なく使わせてもらおう、どうせこんな良い思いはもう二度とない。


飲み物も充実している。

ここにきてビールをぐっと飲みたいが、これから帰るのだ。

我慢しよう。

俺は、ミネラルウォーターを一つとり、その場で飲み干した。

よほど喉が渇いていたのだろう。

着替えも、容易がいいな。

俺のサイズにピッタリのスーツが用意されていた。

今日、俺がシャワーを使わなかったらどうするつもりだったのか・・・。

いやはや、お金とは怖い。

パキパキのシャツに袖を通したが、さすがにズボンとジャケットは気が引けた。

だって、アルマー〇とか、着たら最後請求されても払えんし、ジャケットは下の階にあるし。


脱衣所から出ると、もうお嬢様がお待ちになっていた。

早く話がしたかったのか髪も乾かさず、バスタオルを頭に巻いている。

服は・・・。バスローブだ。

おい。



「あなた、シャワーも遅いのね。待ちくたびれたわ」


このお嬢様、もし俺が本気を出したらどうなるのかとか考えないのか。

俺も立派な成人男性である。

20代の若い、美人の女性が無防備にバスローブで、目の前にいれば頭の一つもおかしくなるぞ。


「何をじろじろみているの?ああ、また私に見とれているのね、でもダメよ。さっきの話についていくつか聞きたい事があるから」


それでは話が終われば、OKという事なのか。違うか。

これも俺に質問に答えさせる状況を作り出す、演出の一つなのか、そうであってくれ!


「変な顔をしていないで、そこに座りなさい。」


俺は、言われるがまま、席に着いた。


「じゃあ聞くけど、あなた。独身?」


・・・な。


「重要な事よ」


「残念ながら」


「そう」


何がそうなのか。

お金持ちの考えはさっぱりわからん。


「あなたその異世界に行ってきなさいな。それってすごく幸運な事だと思うわ」


「ではお嬢様は俺のさっきの話を本当だと思うのですか」


「もちろんよ、こんな場所に呼ばれて、こんな時間に、この私に聞かれて、嘘を言える人間なんてそういないわ。お父様くらいね」


やっぱりそういった魂胆があったか。

いやでもまさにその通りになったわけだが。


「しかしお嬢様、俺にも生活がありますし、もし万が一・・・」


「わかったわ、こちらでの生活の一切を私が面倒を見てあげる。だから行ってきなさい」


うえ・・・さっきの話を聞いてくれるモードとは、真逆でこちらに話をさせる気がない。。。


「ただし、無料でとは言わないわ、向こうの異世界とかの珍しいものを私に送りなさい」


そういう事か、でも。


「お嬢様、ご配慮誠にありがとうございます。ですが、向こうでの事がまったくわからないのです、せっかくのご厚意を無駄にしてしまっては」


「では今、エリスとかいう女に連絡を取りなさい、今、今よ」


うぐ・・・

なんだろうか、この生まれながらにして女王とは、女王だから女王なのか。

いや、自分でもよくわからんが、逆らえる気がしれない。

俺は気が付くと携帯を取り出し、エリスに連絡をしていた。

頼む出ないでくれ!


「…エリスです。君。今度こそOKを貰える…」


「あなた!異世界とかいう世界の人間ね!」


このお嬢様はたぶん無敵だ。

かなうわけがない。」


「…まず、あなたが誰かと聞きたいけど、もしかして君の大切な人の事かな?そう、私はエリス、あなた達からすれば異世界の住人だよ」


お嬢様は、その言葉を聞くやいなや、特大ジャンプ!大喜びだ。

待て待て、その恰好ではしゃぐな、ジャンプするな、くっつくな。色々不味い。



「そうね、私は藤堂 ユイ。あなたがこの男をこちらの世界で面倒をみている上司というやつよ。わかる?」


「上司、わかるよ。上官と同じ意味だよね。なるほど。で、なんの用かな?僕としてはこちらの世界に来る返事がまだなんだけど」


「それは決まっているわ、OKよ」


おい、本人の意思はどこへ言った。

が、そんな事を言葉にできるわけもなく、変な顔しかできん。つらい。


「うーん、君はいいの?ずいぶん迷っていたけれど」



「ええ、いいの」


おい、だから俺に聞いているのでは。


「この男が心配していたこちらの世界の不安はすべて私が請け負う約束をしたわ」


「それはよかった。じゃあ今からでもこちらに」


「それはちょっと待って」


「え・・・」


「確認があるの、これは交換条件と言っていいわ。この男をそちらに送れば、私の立場がなくなる。それでは、こちらが無条件に損をする事になるわ」


「…まあ、そうなるのかな?」


「ええ!そうなの。とても困るわ。この人がいないととても困るの!」


大げさな声を出しながら、俺にウインクしてくる。

俺。どんな顔をしていればいいのですか?


「そこで!そちらの物品で、こちらからすると珍しいものを送ってもらいたいの。いいでしょ?」


押し込みがうまい。

さすがお嬢様。エリスは少し考えた上で。


「本当はダメだよ。そちらの世界の均衡が崩れてしまう可能性だってある。おーぱーつだっけ?おーばーてくのろじー?というやつだね」


「…本当は。というのは、どういう意味かしら、はっきり言葉にしてもらわないと心配でこの人をこちらの生活が不安になってしまうけれど」


今日初めて会話をして、あった事もなくて、しかも相手は異世界人ときてる。

そんな相手にお嬢様は、全力で脅しているんだ。

なにこの人こわい。


「ああ!わかったよ。なんとかする。それでその人がこちらに来てくれるのなら、うるさいじいじを黙らせてみせるさ」



「交渉成立ね!話が分かる人でよかったわ。今度お茶しましょ。…あなたはこちらにこれるのかしら?」



俺が聞きたい事、疑問に思っている事をあっさりと聞けるところ、このお嬢様やはり只者ではない。

もうこの人が行った方がいいのでは。


「それは今、答えられない。なぜなら、今の段階では無理だけど、最後はいけるかもしれないからね。あと、ユイさん、あなたもこっちには来れないから多分、扉の場所を聞いたと思うけど、下手な事はしないでね」


「それは残念…。でも物品はやり取りができる。のよね?」


大事な事だ。

これで俺が向こうに行き、あちらからは帰れない。誰も来れない。

こちらからもいけないでは、約束のしようがない。


「ええ出来るわ。実際、その人が使っている携帯電話もこちらで細工をしたものを使っているの、だから私の話が出来るのよ。ユイさんの携帯では通じないからね」


て事はGPS的なのも無理と。

いやいや、俺の携帯いつ仕掛けたの?


「なにかルールはあるのかしら」


それからは、物品の受け渡しについて、エリスとお嬢様はずっと話をしていた。

俺はずっと蚊帳の外だったが、本格的に眠くなってきた。

時計を見るともうとっくに日付も変わっている。

お嬢様、明日休みなのかな。

俺、遅刻したらやばいんだけど。ああ、明日から異世界か。


ふと意識がなくなり、次に目が覚めたら、お嬢様のベットでふたりで寝ていた。

服の着用は聞かないでくれ…。


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