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異世界でも平凡な俺。ぱーと10
「ヒューマンがなぜここにいる。一人か?」
女騎士は剣を収め、質問してきた。
しかしここで、正直に全ての話をする程、俺も危機感がない訳ではない。
「む、ヒューマンではないのか?言葉はわかるか?」
一瞬、相手の勘違いに乗ってみる事も考えたが、それは悪手だとすぐに理解する。
なんと言葉を発するか迷っていると、女騎士が続けて話をする。
「困ったな、私も任務中の為、保護が出来ない。かと言ってこのまま放置するにも場所が悪い。悪いが私についてきてもらうぞ」
そういうと、女騎士は俺の腕をつかみ、強引に引っ張ってきた。
もしこんな所をアリアに見られたら事だが、ひやひやしながらも、何も起きなかった。
せめて何かアリアに残してやりたかったが、そんな時間もなく、あとで謝るしかない。
何もできず、ただ言いなりになるしかない自分が本当に情けない。
しばらく林を歩いたのち、少し開けた場所にテントが張られていた。
周りには、別の女騎士が多数いる。
「セブン騎士団長。その者は」
俺を連れてきた金髪の長髪女騎士は、騎士団長らしい。
そしてこの青髪短髪女騎士は部下のようだ。
「この先で保護をした、ヒューマンらしいのだが、どうやら言葉が通じないか、話せない。道中察するにこちらの意思は伝わるようではあるが、場所が場所だ、保護をした」
この騎士団長はセブンというらしい。
だが、そもそも、騎士団長がひとりで、場所が場所だとかいう危険地域にいたのか。
「承知しました、しかし私達の分しかテントはありませんが。」
「わかっている、私のテントでいいだろう。私もこの者を置いていき、すぐに戻る。」
「しかし、騎士団長のテントでは」
「仕方ないだろう、私専用のテントと言えど、他の物と変わりはない。盗られて困るものもないしな」
わかりました。と部下であろう青髪騎士に引き継がれ、騎士団長はどこかへ消えた。
これから俺はどうなってしまうのだろうか。
騎士団長のテントに連れて来られたが、どう見ても他のテントとは違うし、
内装も外装通りの見た目だ。
しかし、ここで窃盗をして逃げ切れる程の能力は俺にはない。
おとなしくしている他ない、情けないが。
「貴様、ここでおとなしくしているのだな。もし意味がわかるなら2回頷け」
俺は頷いた。
このままヒューマンの国に連れて行かれてしまうのか。
もし俺が異世界人と分かれば、ヒューマンも俺に子作りを強制し、自国の勢力を強めるだろう。
俺の子供達も捕まっているのであれば、現状ではヒューマンが他種族の中で一番の力を得る事になる。
均衡が崩れてしまえば、この世界はどうなってしまうのだろうか。
とにかく俺は自分が異世界人である事は隠す必要がある。
しばらくすると外が騒がしくなった。
もしかするとアリアかと思ったが、詳細はわからない。
このテントに連れてきた女騎士から、絶対にテントから出るなと言われていたので、
耳を澄ませて、外の声を聴く事しかできない。
どうやら、騎士団と誰かが戦っているようだ。
アリアでなければよいのだが。
★★★少し前★★★
「お父様、お待たせしました。ですがこの辺りの状況が・・・」
「お父様?」
私は洞窟の中も念入りに見た、お花を摘みに出ている事も考えたが、一刻を過ぎても戻ってこない。
「まさか」
私は魔力を集中させ、周囲の痕跡を探知する。
明らかに、お父様以外のべつの痕跡がある。
状況から見るに争った形跡もない、お父様も戦闘が得意でない事を考え、おとなしく捕まったと考えるしかない。
「私が遅かったから・・・」
絶対に見つける、助ける、何があってもお父様を守る。
お父様の状況がわからない以上、軽率に動く事は出来ない。
自分の気配を消して、ゆっくりと魔力の痕跡を辿った。
「いた」
お父様は、ヒューマンの騎士につかまれ、テントに幽閉される瞬間を見れた。
よかった。
しかし、ヒューマンの軍勢を推し測るに、軽率な行動をしなくて本当によかった。
何せ、お父様を盾に取られてしまったら、敗北は必至。
私は慎重に現状を見定め、チャンスを窺った。
幸いにもお父様はひどい扱いを受けている様子もない。
幽閉されたテントも他のテントと違い、豪華だ。
ヒューマンからすると、お父様の価値をきちんとわかっているらしい。
それでも、テントの前には常に監視がいる。
交替の隙をつくつもりだったが、この騎士団は優秀らしい。
そのような隙は無かった。
このままではお父様に負担をかけ続けてしまう。
私は賭けに出た。
「魔王軍の残党だ!こちらに迫っているぞ!」
魔法で少しだけ声を変え、大声で叫んだ。
テントからもわらわらとヒューマンが出てきた。
しかしこれだけでは、すぐに嘘とばれてしまう。
私は少し離れた所に遠隔の魔法を放った。
少し大きめの爆発系魔法だ。
「陣営が崩れた」
今は最大のチャンス。
私が飛び出した先には、一際光を放っている女騎士が居た。
「貴様何者だ!」
「お父様を返せ」
「先ほどの男の事か。しかしお前・・・魔族だな」
女騎士は、光の剣を抜いた。
私の直観が危険と告げる、が、逃げるわけにはいかない。
「王国騎士団 団長セブンだ、貴様は」
「お前に名乗る名はない!」
「いいだろう、剣が貴様を認めた。もうただでは鞘に収まらない、その実力拝見しよう」
★★★
そこらで、炸裂音やら剣戟の音が聞こえる。
状況を確認する為に、入口ではない、テントの隙間から無理やりに顔を出し、
危険を承知の上で外を見た。
アリアだ。
それに俺を連れてきた騎士団長と戦っている。
やはりこうなってしまった。
俺が飛び出してしまうとアリアが危険だし、騎士団長の剣が、恐ろしい程危険な光を放っている。
ラノベ知識では、聖剣の類な気がする。
こんな時、何もできない自分が歯がゆい。
アリアは、他の騎士からの攻撃をうまく躱しながらも、立ち回っている。
しかし多勢に無勢だ。
このままでは、ジリ貧になる。
どうにか気をそらせないものかと考えている時、それは突然に訪れた。
「エルフだ!」
「こんな時に、、、団長!」
「陣形を作れ!この魔族は私が相手をする。エルフはお前達に任せるぞ!」
エルフだと。
このタイミングは、こちらにとっては絶好のタイミングだが、アリアと騎士団長の戦いには間違っても近づけない。
「…お父様!ご自身の状況で構いません!」
アリアは俺の置かれている状況を正確に判断したようだ。
さすが俺の娘。
俺は一瞬の隙をつき、テントを脱出。
目の前の雑木林に走り出した。
団長はアリア。他の女騎士たちはエルフの相手で、誰も俺を追ってくる様子はないが、このまま捕まってしまえば、もうどうしようもない。
俺は全力で、走り続けた。
アリアも俺が居なければ、もっと派手に戦えるかもしれない。
そう信じて。
しばらく走り、あっという間に息が上がる。
少し後ろを確認したが、何かに衝突した。
木だ。
衝撃で倒れ込み、息を整える。
「やあ、やっと会う事が出来たね」
どうして俺はこうも、問題が起きると誰かに会うのだろうか。
しかし、この声は確かに聞き覚えがある。
「まったく君は…心配したよ?」
俺がこの世界に来た一番の理由。
「さあ、もう時間もない。いこうか」
その声のイメージ通りの美しい容姿、堂々たる風貌。
「どうしたの?私がわからないかな。エリスだよ」
ここに来て、ようやく俺達は出会う事になったのだ。




