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スカイクラウド ―それは復讐の物語―  作者: 青木珊瑚
第1章 「俺はシリアス。シリアス・スカイクラウド。記憶を探す旅をしている。」
15/16

2

 俺が目を覚ました時、路上に倒れていたのを覚えている。

 後頭部に強い痛みがあった。

 しかし、何度考えてもその答えが出ない。

 何故こんなところで倒れていたのか。

 何故後頭部が痛むのか。

 俺は誰なのか。


 大通りに出ると、まばらながら人通りはあった。

 それなりの街の規模のようだが、どうも人に覇気を感じない。

 まともに話を聞くような感じには見えなかったので、少しばかり歩いてみた。

 まるで層のようになった街並みは、上に行くほど豪華になっていく。

 上に行けば、少しくらいまともな人がいるだろう。

 そう思い、階段にもなっていない坂道を上がった。

 

 しかし、最悪という言葉しか出ないほど、人は腐っていた。

 俺の事を貧困層の人間だとか、近寄るな等、なかなかの言われようだった。

 むかついた俺はその街を出た。

 あとからアラトスという街だという事を知ったが、二度と行くことはないだろう。

 貴族の連中とは金輪際関わりたくないものだ。



 ☆



 この街もアラトスとそう大して変わらないように見える。

 どうも貴族という存在は上の方が好きらしい。

 そして貧困層も下の方が好きらしい。

 たまには下に貴族。上に貧困層という街も見てみたいものだ。

 冗談はさておき、この街はアラトスよりも酷い惨状であった。


 その最たるものが、目の前にいる少年達。

 ニーとロクに、礼がしたいと連れられてやってきたのは、親のない子だけで生活する1つの集落のような場所だった。


「ロク! ニー!」


 2人に駆け寄ってくる数人の子供だが、その後ろにいた俺に警戒して立ち止まる。


「大丈夫だよ。ロクを助けてくれたんだ」


 ニーがそういうが、やはり警戒してか近くには寄ってこない。

 しばらくすると、ちりじりに離れて行ってしまった。


「ニー。俺は来ないほうがよかったんじゃないか?」

「気にしないで。皆ゼロの事で警戒してるんだ」

「ゼロ?」


 俺がそう聞くと、しまった。という顔で口を手で塞ぐ。

 しかし、ロクはよく分かっていないのか、その続きを話す。


「ここのリーダーだよ。皆は兄ちゃんって呼んでるけど」

「おい、ロク」

「別に大丈夫だよ。悪い人じゃないんでしょ?」

「それは、そうだけどさ……」


 ゼロという人物について話したくないのか、ニーは難色を示す。


「そのゼロって人はどこにいるんだ?」

「……捕まっちゃったんだ」

「捕まった?」


 それが何を意味するのかは分からないが、彼らにとって深刻な問題のようだ。


「皆、生活のために上層から物を取ってくるんだ。けどある日、ここに貴族が来て、盗んだ物返せって。でも誰も取ってなくて。怒った貴族がここを壊そうとしたんだ」

「そしたら、ゼロが、俺がやったって。ゼロは絶対にしないのに。ここを守るために嘘を言って、捕まったんだ」


 段々と彼らの顔が暗くなっていく。

 なるほどな。この街にも色々あるということだ。


「シリアスは旅人なんだよね! 強いんだよね!」

「ロク! これは俺たちの問題だ!」

「でも!」


 泣きながらロクはニーに訴える。


「兄ちゃんが! 兄ちゃんは何も悪くないのに!」


――お兄ちゃん。


「ロク!」

「シリアス。兄ちゃんを助けてよ!」


――お兄ちゃん。助けて。


 誰かの声がする。

 誰かは分からない。

 でも俺は知っている気がする。

 それが俺の記憶と関係しているなら。

 俺は記憶を探す旅をしている。その旅からは逃げられない。


「ニー。ロク。その連れて行った貴族というのに覚えはあるか」

「シリアス!」


 ロクの目が俺を見つめる。

 しかしニーはそれを静止する。


「おい! これは俺たちの問題で……」

「そう。君たちの問題だ。だから気にするな。俺が勝手に行くだけさ」

「……なんだよそれ」

「さっき言ったろ? 俺は記憶を探す旅をしているって。何か思い出しそうなんだよ。だからちょっと寄り道するだけ。な?」


 嘘は言っていない。

 俺を呼ぶ声。その正体が分かれば、少しでも記憶が思い出すかもしれない。

 ニーは少し考えたように顔を伏せ、そして俺に言った。


「……分かった。でも俺たちの邪魔はするなよ」

「迷惑にならないよう気を付けます」

「……」


 ニーは何かを言いたそうだったが、黙ったままだった。

 ロクはいまいち俺の言っている意味が分かっていないのか、ポカンとしていたが、それでいい。

 何も知らないほうが幸せってこともあるもんだ。

 俺も思い出さないほうがいい記憶があるのかもしれない。

 だが、唯一覚えていたこと。


――誰かに殺されなくてはいけない。


 何故そんなことを思ったのか。

 何故それだけは覚えていたのか。

 その理由を探すのが俺の旅の目的だ。

次回更新は24日20時30分頃予定

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