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追放された俺は逆行転生した〜TS吸血姫は文化を牛耳る〜  作者: 石化


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白1

 

 都が平安京へと遷都された。

 その間、夜は、基本的に都会近辺をうろうろしていた。

 一旦やりきった古事記の口述は確かに彼女の中に良い影響を残していたが、それにも増して、親しくしていた人を自分の手で殺しかけたあの大麻の夜のトラウマは大きかった。人の中に入ることに積極的になれない。


 オモイカネが呪いを用いてまで、彼女に古事記を語らせたのは、それを解決しようという意図もあったのだろう。

 それは確かに彼女に良い影響を与えてはいた。

 だが、ひところに構えて特定の人々と仲良くしようという気にはどうしてもなれないのであった。

 古事記の評判を聞いても、自分の作品とは思えず、小説に関しても少しずつで始めたくらいで彼女にとっては少々物足りない。


 竹取物語を読んだときには、作者のことを天才だと考えて、探し出す旅に出たが、どうしても見つからなかった。都で評判になる随分前に東国で書かれていたらしく、彼女の力を持ってしても、作者の消息は不明なままだった。


 ●


 道中立ち寄った因幡国で、俺は、なんだか懐かしい気配を感じた。


 気配を辿ってみると、白木でできた美しい神社があった。

 規模はそこまで大きくないようだが、近隣住民からの信仰は熱いらしく、よく整備されている。


 自分が妖魔に類するものであるという自覚はあるが、何年も高天原にいたため、神道系の聖域は、慣れ親しいものと言える。


 あれだな。戦国時代になって、キリスト教が入ってきたら、危ないかもしれない。

 本物のヴァンパイアハンターとかいるかもしれないし。

 ちょっと気をつけておこう。


 それより気になるのはこの懐かしい気配だ。

 親しみと、柔らかな手触りを思い出す。


 神社の名前を確認する。


 白兎神社。

 そう書かれていた。


 高天原で仲良くなった兎の姿が目に浮かぶ。

 久しぶりに会いたいな。


 会えないかな。


 ちょっと祈ってみよう。

 2礼2拍手して、白に会えますようにと祈る。

 一礼して下がる。

 作法は多分オッケーだけど、行けるかな⋯⋯?


「夜—!!!久しぶりー!!!元気してた?」


 神社が開いて奥から白い毛玉がみぞおちに突撃してきた。


 えっこんなに簡単に会えるの?

 神様なのに?

 これならもっと早く調べるべきだったかもしれない。

 あとでウズメの神社にも行ってみよう。


 とりあえずひっついてくる白を強引に引き剥がす。

 こっちも結構な剛力なはずなんだけど、かなりの抵抗があった。


「夜のことは気になってたけど、私も神社の運営があったから、探しに行けなくて。オモイカネさまから会ったって聞いたから、私も会えないかなって思ってたの。」


「私も会いたかったわ。」


 白の毛皮がもふもふしていて癒される。


「夜それ好きね。」


「久しぶりだから。やっぱり、白の毛並み気持ちいいもの。」


「ふふふん。でしょう。天界一のおしゃれ兎なんだから。」


 凄そうな称号だ。兎の中では。


「とりあえず、積もる話もあるし、中に入ってよ。」


 白の招きに素直に応じることにした。


 神職でもないのに、本殿の中に入る機会が多いぞ俺。




 白が入れてくれたお茶を二人で飲む。


 高天原の頃を思い出すな。

 よく三人でお茶したものだ。


 今の方が最高の小説を作るという夢に近づけている気はするけど、あの頃もどうしようもなく懐かしい。


「ねえねえ、夜。悩み事、あるでしょ。」


「そりゃ、あるよ。悩み事の一つや二つ。人間だもの。」


「人間かどうかは怪しいと思うけどね。」


「ひどいこと言わないの。意識は人間なんだから。」


「はいはい。だから、悩める夜を、私が神様らしく導いてあげようかなって。」


「具体的には?」


「もうちょっと感動してもいいのよ! おほん。前に聞いた、あなたの夢。最高の小説を作る、だったよね。私の未来視の力を付与して、それが叶うかどうか、見せてあげる。」


「そんな職権乱用許されるの?」


「大丈夫大丈夫。私は敬虔けいけんなる信者の祈りによってこの地に降臨したんだから奇跡の一つや二つ、起こせなくてどうするのよ。」


「そりゃ、ありがたいけど⋯⋯。」


 確かに、どうなるか見てみたいってのはある。

 いつまで経っても紙が普及せず、この五百年。小説の実力が伸びている気がしないのだ。このままで、究極の小説を作ることなんて本当にできるのか。


 そのことに対する危惧や恐れがないと言ったら嘘になる。

 攻略本みたいなものがあるのなら、俺は使う派だ。


「決まりね。どこが見たい?何年後にあなたは最高の小説を書いていると思う?」

「それは⋯⋯。」


 俺は悩んだ。

 この五百年のことを考えると、同じ時間で急激に小説の才能を伸ばすことができるとは考えにくい。やはり、刺激を与えあえるライバルがいてこそ、小説家は伸びる。なら⋯⋯。


「1200年後で。」


 なぜか俺の口はその言葉を紡いでいた。

 多分それは記憶をなくす前の俺が生きていた時代。

 いつまでに最高の小説を書かなくちゃいけないのかと問われたら、絶対にその時までには、書き終わっているべき時間だ。


「おっけー。ムラがあるから、ちゃんと1200年後とはいかないかもしれないけど、その辺りを観れるようにしてあげる。」


 白は自信満々に自分の胸を叩いて見せた。



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