サラリーマンの早朝
ある日。早朝。
今日は少し肌寒い。休日に訪れた春の暖かさが恋しい。まるで冬に戻ってしまったようだ。わたしはスウェットの上着を羽織るとベッドルームからリビングに移動した。
朝の行動はすでに決まっている。温かいシャワーを浴びること。苦味のあるエスプレッソを入れること。目を閉じてゆっくりと瞑想すること。このあたりは昔からの習慣だ。さらに読書、運動、食事を新しく取り入れようと思っている。
本を読むのは好きだ。暇があればまず何をするかといえば読書だろう。もしくはゲーム。または映画だ。外出や運動には目的や意思の力が必要になる。読書の時間を朝に設けたのは、自分の好みに合わせた強みの強化が目的だ。好きなことを伸ばす。好きな時間を増やす。単純で効果が期待できる人生戦略だと思っている。
運動をするのは苦手だ。ウォーキングくらいはするが、おそらくだが平均をやや下回る能力値だと自負している。年々、集中力が低下しているのを感じる。一概にはいえないが体力の低下はその原因の一因だと思っている。これではダメだとスクワットを習慣化することにした。思い出したように意識的に行っているので、まだ習慣と呼べるほどではない。
食事を作るのは好きだ。約10年前に仕事で体を壊した友人がいるのだが、先日遊んだ時にはすっかり健康体だった。入院後、健康的な食事を取らざるを得なくなってから、食事には気を使っているらしい。朝は必ず、りんごとにんじんをミキサーでかき混ぜたドリンクを飲んでいるそうだ。自分も見習いたいと思う。
パソコンのキーボードを叩く手が止まる。冷めた珈琲を口に運ぶ。椅子にもたれかかると目を瞑って、出社した後のことを考えた。それから窓の外に視線を送る。庭木が朝日に照らされて、オレンジ色を帯びていた。雲に隠れた太陽が姿を現したのだろうか。わたしは席を立つと、ベランダの窓を開けた。雲に覆われた空の隙間から射し込む太陽の光が眩しい。次いで、車の走行音が聞こえた。道路には車の他にも自転車で移動する人の姿が目に飛び込んだ。
ああ、もう朝だな。みんな活動を開始しているんだなと思った。携帯のアラーム音が出社を促してくる。わたしはパソコンをそっと閉じた。