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洞窟編 6

ここから、更新を毎週一回に変更させていただきます。

できる限り完結させますのでよろしくお願いします。

「・・・」

引き続き、今日も声出しをしていません。あのまま、ただずっと、騒ぎ続けても、誰も助けに来ないだろうし。ちげーし、いじけてねーし、俺ドラゴンだからつえーし、サイキョーだし。うっせー、バーカ、ばーか。


あ、おざーす。略さず言うと、おはようございます。今日の挨拶は先日のショックからちょっと軽くします。


やっぱり、こんなに騒いでも叫んでも誰も来ないのは、人にも竜にも助けてという意味が分からないのでしょうかね?それとも、ほんとにここら周辺には誰もいないのでしょうかね?やっぱりここの外の情報が欲しいな。


うーん、外の情報を手に入れるために、しゃーない、先に、まずはここがどこら辺なのか、あいつらに絡まれたあたりのことを思い出そう。先日、黒歴史でもショッキング映像でもない、幼少期の一幕からかなり深刻なダメージ食ったので、やりたくないけど、現場百辺、落とし物探しは来た道もどれ、迷子は動くなというし、とにかく、目覚める前はどこにいたのか思い出そう。


私、あの頃って、自分のことを我とか呼んじゃう子供だったし、加えて、前も言ったけど、少しばかりやんちゃだったのよね。えーと、初めは、確か、えーっと、森に捨てられて、サバイバルして、山を登って、山から出て、太陽沈む方向に進んで海に、戻って森に行って、また山に行って、山の上から街を見つけて、見に行って、あー、いろいろあって、今までで一番大きな街から西の海に向かって飛んでいる最中に、前に燃やして、壊した街の上を飛んだ時に、急に風が集まらなくなって、


なんだこいつらは、なんなのだこいつらは、ゴミが、我に、我に何をする!

ふざけるな、巫山戯るな、触るな、寄るな、近づくな、クソが、くそが、糞が、殺す、殺す、殺す。


最強の竜王たる我が、ただの“人”に“今”襲われた。


殻を破り、世に生を受け、血を分けた同輩を飛び越して、一人いち早く世界に飛び出した。

格上には噛みついて、同格は殴り飛ばして、格下はどちらが上か理解させた。

敵う者がいなくなるまで短くにない時があったが、そこからは延々と続く今日までの日々の中で、我は唯一最強だと確信した。


爪で裂き、牙を立て、炎を吐き、唯一最強を名乗るようになってからは近づく者はただただ殺し、喰らった。我の叫びは雲を散らし、我の怒りは全てを地に伏せさせた。我の姿を一目すれば、生者は果てのない絶望を知り、物言わぬ死者と成り果てた。


伝え聞く、創造神も天上の神もその使いどもも、闇より生まれる魔神も悪魔も、我を恐れ、姿を見せず。

四元の大精霊、その眷属の死のない万物の精霊どもも、祖霊に英霊、死霊も、我を恐れ、姿を見せず。

命を持つ今を生きる矮小な生き物たちは、震え、怯え、竦み、嘆き、悲しみ、恐れ、怖れ、畏れ従った。

鬼人も魔人も翼人も巨人も獣人も亜人に只人共は、我の気まぐれの下、従えばよい。

我は唯一無二、最強の竜王である。天上から、東の日の昇る地平の彼方から、西の日の沈む此方までの支配者だ。

我を前に挑み喰われ死んだ者。竦み、恐怖し喰われ死んだ者。覚悟し、解らぬまま捧げられ喰われ死んだ者。みな我の中、我の血肉となる。

恐れる。敬う。怖れる。仰ぎ見る。畏れる。

そうだ、我以外は皆それでいい。


それが、定命の、無力の、無能の、人共が我に剣を向ける?我の道を塞ぐ?

馬鹿が、馬鹿が、馬鹿が、踏み潰して、すり潰して、焼いて、割いて、叩きつけて全て殺す。


我が行く手を遮る人の集団、声を上げ、我の前に対峙する。

巨木を切り裂く風の爪を受け止める大盾の集団、切れぬなら燃やす。正面の集団に向かい火を吐きかけようとしたところ奴らの後ろから石の雨が降りかかる。何をするのか、睨みつけると奇声をあげて、剣を持つ者が近づき光る刀身が我が体を貫いた。そちらに目を向ければ、また、盾の手段の後ろから、今度は火の玉が生まれ、我が叫び打ち消せば、今度は、また違う方向から、矢が飛び、鼻先、眼球に当たった。痛みよりも、また怒りが生まれ、自然と叫びが口から出て、暴れまわった。


我の思考は怒りの色に染まる。怒りが、我の中を巡る。

迫る剣と炎と光を生み出す不思議な術をいかにせんと思考する。

我の爪も牙も炎も叫びも怒りも届いていない、届かない。

怒りが届かない、すぐに、死ぬゴミのくせに、クズのくせに、われに従えばいい、糞のくせに、

すぐには、殺さない。虐める。いたぶる。そして、殺す。

逃がさない、全部、一匹ずつ、ゆっくりと殺す。


ちまちまとした人の攻撃は、我に致命的な一撃を与えることはないと考えて、その後のことばかりを頭の中で考えていた。徐々に、こちらの爪が、牙が、炎が、相手の集団を減らしていた。


どのくらいが経ったのか、火の玉も、氷の塊も、石の槍も雨も、剣も弓矢も向かって来なくなった。

もう、抵抗がなくなったと思い、更に、追撃の炎を吐こうとした瞬間、大きな音と共に光が走った。頭上に痛みと熱がいた。今まで、受けたことのない尋常じゃない痛みが全身を走り、グラッと倒れた。

その瞬間は、記憶にないが、地に伏せたのだ。ただの一撃で、我が倒されたのだ。


ほんの数瞬、我は倒された。すぐに身を起こしたが、頭の中は何が起こったのかそれだけでいっぱいだった。体はしびれ、叫びも炎も生み出せなかった。


どうすればいい、どうすればいい。どうすればいい?どうすればいい!

我の思考は、今までどうやっていたのか、どう切り抜けてきたのか、全てを思い返そうと、頭の中をせわしなく働かせて、思考していた。

思考は生まれてからの間を往復し、答えが出せずにいた。


強大な力を感じた、頭を向ければ不可思議な術の使い手が集まり何かを唱えている。

更に、思考が走り始めた。やっと体が動かせた。声が出せた。


今までよりも大きな叫びを発し、地を揺らしつつ、飛ぶための翼を大きく無駄に動かしてとにかく、風を生み出し距離を詰めて、後ろの不可思議を殺すことを優先させる。爪でも牙でもなんでもいい、届かせなくては、正面の盾の奥にいる不可思議こそが、なんとかしなくてはいけない者達だ。

さっきの光の術を受ければ、体が硬直し、また、埋めた距離取られる。今度は、きっと殺される。


私の下から、痛みを感じた、石塊の尖った槍が襲ってきたのだ。我はそばから一歩分後ろへ下がることを無意識に行い、下がった結果、更に上からの石塊の雨を多量に浴びた。


最強たる存在を、唯一無二たる我が人に退いた?

あり得ない、あり得ない、あり得ない・・・、私は、竜王なのだ。


自分の行動に驚愕し、次の瞬間に迫る輝く剣への対応に遅れが生まれ、腹部を深く突かれた。痛い、痛い、いたい、私は、炎を吐き出した。今までの、殺すための相手に向けて放つ炎ではなく、逃げるための炎を吐いた。

周囲を巻き込む、大きな炎は彼らと私の間にある距離を開けてくれた。体のしびれは完全になくなり、翼を広げることも、風を集めることもできるようになった。風が集まれば、生まれた炎が更にその勢いを増して、轟轟と強くなった。


人間どもの体勢が崩れたこの瞬間に合わせて、翼を広げ、さらに風を集めた。周囲の炎が火の粉を巻き、加えて、石や土が舞い上がり、そのまま、風に乗って山の方角に飛んだ。そして、翼を広げ逃げ出した。


三日三晩飛び続け、日の沈む西の地から、山を越え、日の昇る東の果てへと飛び続けて、東の海を見つけ、海の中にある森の島で翼を休ませようと上空を飛んだ。


眼下には、生まれた山の麓に広がる大きな森に負けない、大森林が広がる。飛びながら後ろから音が聞こえた。もしやまた、何かが自分に襲いかかるのではないかと、迫るものがないか警戒する。


急に背中に熱と痛みを感じた。また、同じように、最初は、痛い!と感じ、次に熱い!と感じた。しばらくすると体にしびれがあり、上手く飛べなくなっていた。ものすごい勢いで地面が迫った。先の光と比べ物にならない強いしびれで、我は受身も取れぬまま、ものすごい音が周りに鳴り響かせて、地面に叩きつけられた。


人の気配はしない。先の光も今の光も曇天の中から物凄い音と共に生まれている。


冷たい雨が降り、今まで聞いたことのないような物凄い稲光と音が響き、これこそが、伝え聞く神の怒りだと思った。もしかしたら、ここは、神が眠る神殿のある島ではないのか?

急にそんな事を思い出した。まずい、今のままでは、戦えない。

飛べない体で這うように、体を引きずりながら進み、ある山の麓に洞窟を見つけた。こんなに大きな体なのに何とか入ることができた。


体を休めろ、傷を癒せ、落ち着け。ただの雷だ。運悪く当たっただけだ。

ここは無人島だ。上空から見て、人の住んでいる形跡はなかった。傷を癒して、体を休めて、また空を飛べばいい。


頭の中で今の状況を説明する声がした。これは何だ?雷とは何だ?無人島とはなんだ?頭の中がいっぱい、いっぱいになったとき、洞窟の奥から大きな光生まれ私を飲み込んだ。

私を追ってきたやつらかと思ったが、何がなんだか分からにままその光の中で我は意識を失った。


気づくと、洞窟の奥にいた。光の届かない本当に暗い、くらーい洞窟の奥に私はいた。

光は私に結局とどめを刺すことはなかった。しかし、体から自由を奪った。翼は全く動かなくなり、やっと動く口をほんの少し動かして、助けを叫んだ。そして今日まで寝ては起きて助けを求める毎日となった。


うーん、思い出せるのはこんなところかな?いやー、なんであんなに怒っていたんだろう?というか、火の玉とか氷とか石の雨とか、こいつはつまり、魔法ってやつすね!

イヤッホー!!ドラゴンがいるのだから、魔法もあると思っていたけど、やっぱりだ。

ファンタジーだよ。これ、リアルなのにファンタジー。いやー、これは凄いね。なんかこう、余計に外に出たくなった。こうなりゃ、意地でも外に出てやるぜ!


さてまず、思い出せた範囲で、おさらいしよう。襲われる→逃げる→海に出る→雷に当たる→洞窟に入る→光を浴びる→ここにいる。

えーっと、まずここは、おそらく島。しかも無人島。飯盒の煙も、切り開いた形跡もなく、船の航路なんかからもはずれている場所だから、ここはおそらく、未発見の無人島。しかし、洞窟には、ドラゴンを捕まえる術を使えるなんかやばい奴がいるぽい。でも、今はいない?


うん、やばい。なんか、また、頭が痛くなった。


でもとりあえず、先日まで、私を悩ませていた問題は、めでたく解決いたしました。

おそらく、言葉が通じないのではなく、この声が届く範囲に人がいないということです。よかった。僕、無視されていたわけじゃなかった。


しかし、さらなる問題が生まれました。

あれほど、自由に動き回り、暴れまわった強いこの竜が、重量を無視し、空すら飛べるこの竜が全く動けない封印をかます、超ツエ―野郎が実はいたのです。オラ、ワクワクしてきたぞ!

嘘です。

本当に怖いっす。怖くて、震えるっす。

何か、魔法って本物の得体のしれない力が、あるということが分かってマジで怖くなってきました。


私ドラゴン。マジ、ビビる。


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