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メキシコの伝説 天の射手  作者: 三坂淳一
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天の射手

メキシコの伝説


天の射手


 この伝説はメキシコを支配していたイツコアトルの後継者であったアステカ皇帝、モクテスマ・イルイカミナという名の若者の名前に関連する伝説です。

 アステカ帝国が最盛期を迎えたのは、モクテスマ・イルイカミナが治めていた時でした。

 彼の名前は「天」を意味する「イルイカトル」という単語から派生しています。

 そして、「ミナ」という言葉は「矢」という意味です。

 射撃の腕前が凄く、筋骨逞しく敏捷な両腕から放たれる彼の弓の力はとても強かったので、帝国の高官と戦士は彼のことをこのように呼んだということです。

 また、夜ごとにこの若者は星に向かって矢を放ちながら鍛錬しておりましたし、伝説の語るところによれば、的と見立て射たところ、この「天の射手」の矢によって疵を受けた星が落ちて来るのが見受けられたということです。

 星に向かって矢を放つというこの練習によって、星を射落とすことが出来たという多くの芸術的な挿話が残されているのです。

 このことは疑いなく、イツコアトルの死を受けて彼が王座に昇るということに味方をしました。

 アコルワカン族が敵であるイツコアトル(アステカの死んだ王で、専制君主マストラから王座を奪い取ることでネサワルコヨトル王を助けたことで彼らから憎まれておりました)の死で饗宴を開いている間に、メキシコ宮廷の高位高官たちはメキシコ・テノチティトランの支配者として、「天の射手」を選任しました。

 チャルコ族がアステカ族に脅威を与えていた時、新しく皇帝に指名されたモクテスマ・イルイカミナは軍隊を編成してチャルコ族と戦うという決心をしました。

 この戦いは非常に血生臭い戦いになったと記録されています。

 チャルコのほうから、彼らの神カマシトリの祭儀を行わなければならないということを理由にして、停戦を望むまで戦いは続きました。

 その祭儀が終わり、戦いが再開されると、モクテスマ・イルイカミナは200人以上の敵を矢で射殺しました。

 彼が放つ矢は非常に遠くまで飛び、雷の稲妻のようであったと云われております。

 チャルコ族に勝った後、テノチティトラン都市に大勢の捕虜を従えて帰還して来ました。

 その捕虜は戦争の神、ウィツィロポチトリに捧げる生贄となる運命でした。

 かつて経験したことのないような神聖な生贄の儀式を行いながら、モクテスマはメキシコ王位を高めていきました。

 伝承によれば、天の射手・モクテスマは生贄を乱用し過ぎて、神々の怒りを買ったということです。

 神々を怒らせた結果、湖に造られたこの都市を嵐が連続して襲うといった神々の怒りが続き、神殿の上まで水に浸かるといった洪水に見舞われました。

 神々の怒りを和らげ、暴風雨のお祓いをするために、モクテスマは彼と同じくらい勇敢な臣下が担ぐ輿に乗って、テオカリスを訪問せざるを得なくなりました。

 そこに着き、首まで水に浸かりながら、暴風雨のお祓いをしようとしたということです。

 天の射手・モクテスマは何も恐れず、それ故に毎晩、あえて星に向かって矢を放つことをした、と伝えられています。



- 完 -


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