2.
2.
トモヒロ:「異世界!?」
ヘイスケ:「うむ、ここは異次元をつなぐ空間でいわばトンネルのようなものじゃ。お前さんはこれからここを通って向う側に向かわねばならん」
トモヒロ:「何でですか!元の方向に戻れば・・」
ヘイスケ:「残念ながらこの空間は一方通行じゃ、無理に戻ろうとすると空間の狭間に落ちかねん」
状況説明:なんという理不尽。確かに今さっきまで現状に文句は言っていたがこの仕打ちはあんまりだと思うぞ。
トモヒロ:「・・・すぐに元の世界に戻れますよね?」
ヘイスケ:「それも難しいのう。なんせわしも戻れんかったからの。もっとも、わしは途中であきらめて向こうの生活を謳歌しておったからなんともいえんがの」
トモヒロ:「どうして諦めたんですか?」
ヘイスケ:「わしは、大正の生まれじゃ。結婚もせぬうちに戦争に行き死にかけたところを向うの世界に引っ張られて結果的に救われたからかの。日本にはわしを待つ家族もおらんかったからなおさらじゃ。」
トモヒロ:「・・・・」
ヘイスケ:「もっともそれも終わりじゃ。わしは向うの世界で寿命を迎え死んだ。死した魂は本来あるべき世界に戻るといわれておる。わしの魂も戻される途中だったわけじゃ」
トモヒロ:「・・・・向うはどんなところなんですか?」
ヘイスケ:「地球とはなるで違うな。向うはわしらの世界でいえば江戸幕府があった時代くらいのヨーロッパが水準かの。決定的に違うのは魔術や、超常的な能力が存在するくらいか」
トモヒロ:「!魔法とか異能が使えるってことですか!?」
ヘイスケ:「ずいぶん食いつきがいいのう。そうじゃ、向うでは魔術やスキルなどが生活の基盤となっておる。もちろん、危険も大きいがの」
状況説明:話を聞いて、急降下していた気分が急上昇し始めた。基本的に多趣味でいろんなことをしていたので、小説なんかもたくさん読んでいる。もちろんファンタジー小説、ゲーム関連もF〇や、D〇等冒険物は大好物だ。
ヘイスケ:「ほぉほぉ、どうやら興味がわいてきたようじゃの。わしとしてはうれしい限りじゃ」
トモヒロ:「地球に帰る手段が今のところないですし、こういうのも悪くないかもしれませんね」
ヘイスケ:「しかし、先ほども言ったように向うは危険が多い。今のままでは、ちっと危ういかもしれん」
トモヒロ:「そんなにですか?」
ヘイスケ:「魔術があるということは、魔物や悪霊などもいるということじゃからな。さてさてどうすればよいかの」
状況説明:平助さんはあーでもない、こうでもないとつぶやきながら考え込んでいたがふと顔を上げ手をたたきこっちを見ながら、さもいいことを思いついたといった表情をした。
ヘイスケ:「そういえば、いいものがあったわい。ほれ、手をだしてごらん」
状況説明:何をするのかわからず首をかしげていたが、顔で催促されたのでゆっくりを右手を挙げた。
ヘイスケ:「今からお前さんに渡すのはわしが向うで持っておった特殊なスキルじゃ。必ず役に立つじゃろう」
状況説明:そう言いつつ平助さんが自分の胸に手を当てると、そこから光を放つ球体が出現し俺の手の中に納まった。
トモヒロ:「いいんですか?」
ヘイスケ:「わしは死んだ人間じゃ。もう使えんものを後生大事にあの世にまでもっていくのもの」
トモヒロ:「どんなスキルなんですか?」
ヘイスケ:「スキル名はフリーメイカー、失われたスキルの1つで自身の経験をもとにしてスキルを自作できる便利なスキルじゃ」
トモヒロ:「自作?」
ヘイスケ:「そうじゃ、例えば剣術や魔術を使うにはスキルが必要じゃ。スキルは努力して身に着けることもできるが習得には時間がかかるし先天的なものも多い。しかし、これの力を使えば自分に必要なスキルが好きな時に好きに作れるのじゃ」
トモヒロ:「・・それって結構なチートじゃ?」
ヘイスケ:「チート?なんじゃそれは?」
トモヒロ:「いえ、何でもないです」
ヘイスケ:「ふむ?もっとも何もせずに好き勝手にスキルが作れるというわけではない。これは、自身が経験してきたことを糧にしてスキルに変換する。簡単に言えばそんなところじゃ」
状況説明:いわゆる経験値ってやつか。RPGゲームでもおなじみのシステムと同じだ。
トモヒロ:「経験を糧にするってどうやってやるんですか?」
ヘイスケ:「その辺は、向うに行ってからのお楽しみというやつじゃ」
状況説明:平助はそういうと、向う側に顔を向け楽し気に笑った
ヘイスケ:「向う側は確かに危険が大きい世界じゃ。しかし、それに勝るものが沢山あるとわしは思っておる。ゆえにお前さんにも向うの世界では大いに楽しんでもらいたいの」
トモヒロ:「平助さん・・・・・」
ヘイスケ:「おっと、そろそろ時間のようじゃな。それでは、お前さんに幸多からんことを」
状況説明:そういうと、彼は立ち上がり反対側(地球)に向けてゆっくりと歩き出した。
トモヒロ:「平助さん、ありがとうございました。」
状況説明:振り向かずに手を振って別れを告げてくる彼に、俺はずっと頭を下げ続けた。