事故現場2
「ぼぼ僕も、僕も行きます!!」
僕は奈津子さんの返事も待たずに事故現場に向かって駆け出した。
もしかすると優香が巻き込まれているかもしれない。
まだ救助されてないかもしれない。
そう思うともう、いても立ってもいられなかった。
僕は救助に携わっていた一人のサラリーマン風の男性に声をかけた。彼の白いワイシャツはすでに血で汚れていた。
「俺にも手伝わせてください! お願いです!!」
彼は僕をチラッと見てうなずいた。
「助かる。人手は一人でも多い方がいい! 車内からけが人を運ぶ人間が足りてないんだ!」
事故車に向かう途中で彼は簡単に事情を説明してくれた。
彼はすぐそばの会社のサラリーマンで、上田と名乗った。
上田の勤める会社の社長は事故直後に迅速な決断を下して、会社の敷地にけが人を一時収容して手当てが出来るように取り計らい、上田たち社員には救助活動に可能な限り加わるようにと指示を出したそうだ。
酷く壊れた1両目、2両目には、自力で逃げ出せる人間はほとんどおらず、レスキュー隊が要救助者を車外に運び出し、応急処置場までは一般の消防隊員や自衛隊員やボランティアの人間が搬送しているとのこと。
上田もそうした搬送役の一人ということだった。
事故車両。その一両目は本当に酷い状態だった。
窓という窓は砕け散り、ガラスの破片がそこかしこに散らばっていた。
それだけじゃない。ひしゃげた車体からは赤い滴がしたたり落ちてそこらじゅうの砂利を赤く染めていた。
オレンジ色の制服を着たレスキュー隊人間が次々にけが人を運び出し、担架に乗せる。
そうとう怪我が酷い人間でも、救急隊員がその場で簡単な止血だけをして、搬送役の人間に引き渡す。
そうせざるをえないほど、消防の人間が足りていないのだ。
僕は自分の体が激しく震えているのを感じていた。
歯がカチカチと無意識に音を立てる。