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黄金萩 弐
その日の晩。
「…何だこれ」
花宮の家の書斎に、一輪の黄金萩が落ちていた。
「…黄金萩」
花宮はそれをひろいあげ、つぶやいた。
「すず、いるんだろう。出ておいで」
花宮の声が、広い書斎に響いた。
「すず」
もう一度名前を呼ぶと、本棚の影からすずが静かに姿を現した。
「どうしてわかったんですか」
「こんな遠回しなことをするのは、私はお前しか知らないからな」
「そうですか」
すずは照れくさそうに笑って、ところで、と花宮に尋ねた。
「分かったんですか」
「ああ、分かったよ」
「黄金萩の花言葉は、」
「『あなたに同意』だろう?」
「勉強したんですか」
「ああ、お前がまたこんなことをしても理解できるように」




