博士の自己紹介
「ドーモ、ドーモ
先程ご紹介に預かりました世紀の大天才朽木博士とは我輩の事であります。
初めましての方もお馴染みの方も、宜しくお願い申し上げます。
ナーンテ、かたい挨拶はこれくらいにして、適当に緩く話をするように発表でもさせて頂こうかと、ハ、ハ、ハ。
それでは、ゴホン。
それでは、これより我輩の人生最大にして至高の発明品を発表させて戴きたい!と、そう思うのではありますが…
イヤハヤ、我輩の頭脳に付いて来ることができる人間はそうそうおりませんで、それ故か助手を雇ってもすーぐ辞めてしまう。
その為、この世紀の大発明を発表する記念日に助手もなく一人孤独にこの会場までやってきた老人を労って戴きたい、エー、まったく。
エッヘン、オッホン。
ですから、少ーしばかり途中ごたついてしまうことがあったとしても、マ、そこは大目に見てやって戴きたい。と、我輩は思うのであります。
え?そんな話は良いからさっさとその発明品とやらを発表しろ?
イヤハヤ、ごもっとも!
ですが、皆さん、急いては事を仕損じると言うように、焦ってばかりよりたまには立ち止まって周りを見渡したりと、長い人生のんびりいこうじゃありませんか!
ハ、ハ、ハ。
っと、失礼。
水を一杯。
……プハー
生き返りますな。
マ、我輩、死んではいないので生き返るも何もあったもんじゃあないのですが、ね。
ハ、ハ、ハ。
さてさて、そんなことより、お待たせしました。
それではこちら、我輩の全てを注いだ世紀の大発明がこちらでございます!
ジャジャーン!
ハテサテ、取り出しましたるは、小さな箱のようなもの。
そう、これ、これこそが
我輩が人生の全てを注ぎ、頭脳の全てを使い、常人では到底耐えきる事など出来ない苦難の道を歩き続けた末に完成させた至高の発明品でございます。
おや?皆さん怪訝な表情をされてますが、如何致しましたかね?
ハハーン、さてはこの発明品の価値が判らない?
ハ、ハ、ハ。
マ、そりゃあそうでしょう。
まだ何も説明しておりませんから。
ハ、ハ、ハ。
見ただけで皆さんが関心を抱くものであれば、そんなものに何の価値もありゃしない。
そう、我輩は思っておりますから。
イヤイヤ、我輩が勝手に思っているだけでございますよ。
おやおや?気分を害された?
それなら、そのまま回れ右をして帰って頂いても結構ですよ?
我輩の世紀の大発明を世界で最も早く最も間近で見る事が出来る千載一遇の機会を逃しても良い。というのであれば、ですが。
ハ、ハ、ハ。
イヤイヤ、冗談や脅しではなく、事実でして。
マ、今は訝しんでおられる皆さんも、この発表が終わる頃にはスタンディングオベーションで我輩を褒め称え崇め奉る事になるであろうことは確約されておりますからな。
」