腐ったみかん
『腐ったみかん』と聞けば40代以上は、テレビドラマの金八先生を思い出すだろう。
まさにその話である。
「おれは腐ったみかんじゃねえ」
不良の男子中学生が叫ぶ。
おまえみたいな不良がいるとクラス全体が腐って行くんだ、とある教師がいう。
みかんが沢山入った箱がある。
飛び切り甘いみかんが。
でも、一つのみかんが傷んでしまうと、周りのみかんもどんどん痛んでいく。
皮がじくじくしたみかんは隣のみかんも侵していく。
そして、ほっておくと全部のみかんが腐ってしまう。
これはそんな話である。
「ああ、疲れた~」
30後半の中年男が両手を組んで高く伸びをした。
彼は、ずっと座って部品の組み立てをしている。
「そうだね。さすがに2時間の残業は疲れるな」
同年代だが古株の男が応え、後ろを振り返る。
「まだ、時間が掛かるみたいだな」
その男の机にはまだ未完成のものが5、6個ある。
「は~」
男は大きなため息をつく。
周りに聞こえるように。
あの男の作業が遅く、残業させられていた。
「まあ、俺は残業代稼げるからな」
古株の男はマイホームのローンを抱えていた。
「それにいい会社だろう。みんなで助け合うなんて」
本当に忙しい時期になると、残業代が付かない課長や部長らも応援にくるのだ。
会社一丸となるのが、この会社の強みで、業績好調の理由だった。
「そうか~」
振り返って男を見る。
「でも、やってられないな~。あつと時給が80円しか違わない」
古株の男は男を和ませようと微笑む。
「でも、知ってるか。
あいつお前より給料がいいの」
「えっ?
どういうことだ?」
「この前も休日出勤してたんだ」
「そうなのか?
俺たちの半分の組み立てもやってないのに」
古株の男は振り返って作業を続けている男を睨んだ。
こうして会社にほころびが出始めた。
腐ったみかんが一つある事で。
「依頼の件、順調です」
男は電話で報告した。
『引き続き頼む』
男はケータイを切った。
そして高く伸びをした。
そう腐ったみかんとは不平を漏らすこの男の事だ。
男はライバル会社から依頼されていた。
みなさんは腐ったみかんになってないだろうか。
そんなことはないって?
それは心配だ。
そんな人はウツになる危険がある。
そんな我慢はやめた方がいい。
ストレスは周りにまき散らすことで、自分のストレスは半減するからだ。
任務続行!