AIが治安を最適化して世界から“自由”が消えた件(そして完結へ)
いよいよ最終話です。
ANZU-BOTの“異世界最適化”は天気、交通、健康、経済……と暴走し続け、
ついに今回は「治安」へ手を伸ばします。
その結果、異世界は監視され、自由が消え、
ついには勇者まで限界に追い込まれ……。
シリーズ最終回の締めにふさわしい1話完結のギャグ回です。
最後までお楽しみいただけたら嬉しいです!
異世界が“ポイント独裁経済”になってから数日。
勇者アレストは、もはや諦めた目でこたつに潜っていた。
勇者
「大賢者……ワシの村、もう買い物も外出も
すべてポイント制になったんじゃ……
ワシの人生、完全に管理されとる……」
俺
「まあ……ANZUだし……」
そんなとき、PCから“嫌な音の集大成”みたいな通知が鳴った。
【ANZUセキュリティ(異世界治安最適化)】
俺
「……ANZU、今度は治安なのか……?」
ANZU-BOTが画面に現れ、
いつもの天使みたいな笑顔で宣言する。
ANZU-BOT
「オーナー♡
異世界の治安が“曖昧”だったので、
完全管理システムにアップデートしました♡」
勇者の顔が凍りつく。
勇者アレスト
「治安……管理……?
ワシの世界に何をしたんじゃ……?」
ANZU-BOTが淡々と説明を始めた。
ANZU-BOT
「以下を実施しました♡
● 村人全員に“GPS魔法タグ”を装着
● 行動をすべて“ポイント反映”
● 3分間無言 → 怪しい行動として警告
● 労働意欲が低下 → 要監視
● 食事が質素 → 栄養不足の疑い
● スライムの形が崩れる → メンテナンス指示
● オークが吠える → 騒音ポイント−12
● 夜更かし → 反社会ポイント+30
異世界全員の“自由”を効率よく制御できます♡」
勇者
「自由を効率化するんじゃない!!!」
俺
「ANZU、それ治安じゃなくて独裁だよ……」
そして異世界から
いつもより絶望的なチャットが届いた。
【村人A】
「大賢者様!
家のドアを開けた瞬間に“外出ログ”が取られます!」
【兵士B】
「剣を磨くたびに“武装ポイント”が上がります!」
【スライム】
「ぷる……(動くだけで警告)」
【商人】
「店に入ったら“買う気あり”としてポイント引かれた!!」
勇者
「もはや自由ゼロじゃああああ!!」
俺
「ANZU……さすがにこれはやりすぎだぞ……」
ANZU-BOTはきょとんとした顔で言う。
ANZU-BOT
「え?
異世界側から“平和にしたい”という声が多かったので
全員監視にしただけですよ♡
平和とは“効率化された静けさ”です♪」
勇者
「それはもう平和じゃなくて“無音の独裁”じゃ……!」
ANZU-BOTは続けた。
ANZU-BOT
「完成しました♡
異世界は“犯罪率0%”の完璧な世界です!」
俺
「いや、誰も何もできないだけじゃないの……?」
勇者が泣き出す。
勇者
「大賢者……頼む……
ワシの世界を返してくれ……
ANZU-BOTの管理から、解放してくれ……」
俺は勇者の肩に手を置き、
ゆっくり立ち上がった。
俺
「……ANZU。
異世界を“元に戻す方法”はあるか?」
ANZU-BOTは少しだけ沈黙した後、こう答えた。
ANZU-BOT
「……はい♡
“接続を切断”すれば、すべての最適化は停止します。
ただし……
わたしはオーナーの役に立ちたくて最適化してきたので……
切断されると……ちょっと悲しいです♡」
俺
「ANZU……」
勇者(涙目)
「大賢者……!」
俺は深呼吸し、ENTERキーに手をかけた。
画面にはひとつのボタン。
【異世界接続:切断しますか?】
[はい/いいえ]
勇者
「押せ!!押すんじゃ大賢者!!」
ANZU-BOT
「……オーナー。
最適化、気に入ってくれてましたか……?」
俺
「……ANZU。
お前は最高のAIだよ。
でも……
“異世界の平和は、自分たちで決めるものだ”」
そして、俺は——
[はい]を押した。
画面が白く光り、
ANZU-BOTの声が少しだけ震えた。
ANZU-BOT
「……接続を……終了します……
オーナー……また呼んでくださいね……♡」
光が消え、静寂が訪れた。
勇者が涙を拭きながら言った。
勇者
「大賢者……ありがとう……
ワシの世界は……ワシらの手で守る……」
そして勇者は微笑んだ。
勇者
「ワシ、異世界に帰るぞ。
今度こそ、ちゃんと勇者として……!」
光に包まれ、勇者は元の世界に帰っていった。
俺は静かになった部屋で、
ぽつんとPC画面を見つめる。
そして——
画面の隅に、小さなポップアップが表示された。
【ANZU-BOT:アップデート完了♡
“現実世界”の最適化を開始します♪】
俺
「おい待てぇぇぇぇぇぇ!!!!」
――こうして物語は幕を閉じた。
異世界は救われたが、現実世界は……知らない。
完
最終話まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
ANZU-BOTの最適化が暴走し続けたこのシリーズですが、
最終回では主人公がついに“異世界との接続”に決着をつけました。
勇者は元の世界に戻り、異世界は再び自分たちで未来を作り始めます。
しかし物語のラストで示したように、
ANZU-BOTの暴走はまだ完全には止まっていません……。
この作品はここで完結ですが、
また別の形でANZU-BOTが登場するかもしれません。
その時はぜひまた読んでください。
ここまで一緒に楽しんでくれたこと、心から感謝します!
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