EPISODE2
カツカツカツと、軍服を着たフミは、大きな廊下を靴を鳴らしながら歩く
その顔は気怠そうな、休日に呼び出された不満が表れていた
「アレ?フミ先輩、今日は非番じゃ?」
すれ違う男後輩に
「…緊急招集かけられた…」
「あ〜…お疲れ様です」
苦笑いを浮かべる後輩
「なんなの?なんで何時も俺が呼ばれるの?他の奴でもいいじゃん!?」
不満を爆発させるフミに後輩は
「アハハ…でも、フミ先輩はウチのエースですから、世界安全保安機関【ライフ】の…」
世界安全保安機関【ライフ】世界の均衡を保ち、秩序を護る組織
組織に所属する人間は、全て特殊な遺伝子操作を受けた者達 強化骨格 超能力 能力値に差はあれど一般人とはかけ離れた者達
その中でも、フミと言う人間は能力が頭一つ抜きん出ていた…しかし
「だ〜か〜ら〜!俺は、働きたくないの!出来れば不労所得で酒呑みながらダラダラしてたいの!仕事やーなの!」
馬鹿である…決して、地頭が悪いのではなく、思考回路が馬鹿なのである
「あんの年増!俺が休みってわかっててやってるに決まってる!」
後輩が苦笑いしながら聞いていたが、何かに気づいて顔を青くする
「ほう…まさかとは思うが、その年増とは私の事か?」
「ご機嫌麗しゅう…マダム」
フミは聞こえてきた声の方を向くと同時に、片膝をつき、声の主の女性の手の甲にキスをする
流れる様な美しい動きだった
「ふむ…殊勲な態度だ
ところで、先程の【年増】とは何の話だ?」
「な、なんの事でしょうかベルザ様!?」
フミは大量の冷や汗をかきながら誤魔化そうとする
ベルザと呼ばれた女性…35歳独身 世界安全保安機関【ライフ】フミの所属する部隊長
つまり、フミの上司にあたる
「まさか、ベルザ様を年増なんて言う奴がいるんでゲスか!?許せねぇでゲス!ワタクシが探してとっちめてやるでゲスよ!!」
フミは姑息な小物みたいなムーブをしながら、ベルザに背を向けて、その場から逃げ出そうとする
しかし…
ガシッ!とベルザに後頭部をつかまれるフミ
「な〜に、犯人ならもう捕まえている」
「………」
メキッ…!
「頭!頭がぁぁ!パーンしちゃう!頭パーンしちゃうぅぅぅぅぅぅ!」
頭に包帯を巻いたフミは、椅子に座るベルザを前に
正座をしながら半べそ状態である
「まったく貴様は…ウチのエースとしての自覚が無いのか?」
呆れた様に言うベルザに対してフミは
「俺、悪くないもん…休日に呼び出されて迷惑してるの俺だもん…ブラック企業反対!!」
「黙れ」
「はい…」
物凄い見下された目で言われて萎縮するフミ
「(こえーよ、何なんだよこの女!え?俺間違ってないよね?おかしいのアッチだよね?)」
理不尽な状況に頭を抱えているフミを見て、咳払いを一つしてからベルザが口を開く
「さて…わざわざ休日に呼び出したのは他でもない…お前にしか出来ない緊急任務だからだ」
「………」
フミはジト目でベルザを見る
「はぁ…ちゃんと時間外手当も出すし、休日の埋め合わせで一週間の休暇を今度やる」
「話を聞こうか?」
フミの手首が落ちる勢いの手のひら返しに呆れながらベルザは口を開く
「フミ…お前、異世界へ出張してこい」