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神様のような君へ  作者: 大石 こいし
プロローグ
5/6

0.4 プロローグの終わり

「あぁもう!なんで雫は着いてっちゃうのよ!!」


放課後、広は一人キレていた。それはもうクラスの生徒たちがドン引きするほどである。

何故切れているかは、もちろんお分かりの通り昼の件のせいだ。まあ、厳密に言えば100パーセント楓のせいでキレている。

何もしてこないと思っていた姉が親友を脅した。それだけでも十分にキレている。しかし、一番キレていることは、それに雫がのこのこそれについて行ったことだ。


「本当に何やってのよ雫……」


何度机をサンドバッグにしても気は晴れない。

私は見た。神と言われた時の雫の顔は、怒っていてもどこか悲しそうな事。

別に自分の正体が神だってバレても、口止めさせておけばそこまで日常生活に支障が出る訳では無い。それでも昔からあの子は自分の正体を知られるのを極端に嫌っている。

私の時もそうだった。出会った頃は何も教えてくれなかった。


「……私、信用されてないのかな……」


「……逢坂さん、……さっきから大丈夫か?」


「……誰?」


ほうけていると、隣から声が聞こえた。メガネをした見るからに好青年のような人。


「……ほんとに誰?」


私はこんなやつ知らない。隣のクラスの奴か?

でも私の名前を知っているということは、このクラスの可能性もある。


「……ごめんだけど、どこかで会ったことある?」


「隣の席の大石 文博!1ヶ月隣の席だったのに顔覚えられてないの?!」


「あぁ〜……そんな人居たわね……」


大石 文博(ともひろ)。一様記憶の端の端に覚えてはいたが、そこまで記憶に残る程印象がない奴。

この人の唯一覚えていることが、メガネをかけているからという理由だけで、あのクソ野郎こと姉にクラス委員長を任されて可哀想だった事だ。


「……それで、大石がなんの用?」


「いきなりタメ口……、……まぁいいか。逢坂さんの事で何かあったの?」


「あんたに関係ないでしょ」


大石には関係ない。これは()()()()()()()()()()()の問題だ。

それに「雫は神で……」なんていきなり言っても信じるわけが無い。


「これでも一様心配してるんだぞ」


「……心配してるなら、もう私に関わらないで」


「そうもいかないんだよ。先生に、「広ちゃんは問題児だから何かあったらよろしく☆!」って言われてるから」


「あのクズ……どこまで私に迷惑かければ気が済むのよ……」


「そういう事で僕は逢坂さんのお守りをしないといけないわけ」


大石はキメ顔でそう言った。

広はそんな大石を無視して教室を出て行った。


「ったく……どいつもこいつも私をイライラさして……死ねッ!」


━━━━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━━━━


「……なんであんたが……着いてきてんのよ!」


「いや俺の家こっちだし。というか逢坂もこっちなんだ」


日も落ち、暗くなってきた道を広は一人寂しく帰っていると、右隣になんか居た。

大石 文博、またこいつだ。

いつも一緒に帰っている時に横にいる雫が今日は、変態不審者に変わった。全く嬉しくない。

いくら雫がいなくて少し寂しいと言っても、横がこいつだと寂しさは全く晴れない。


「なぁ…、逢坂ってどんなやつなの?」


「何……いきなり……、ナンパ……?」


「誰がお前みたいなモンスターをナンパしなきゃいけないんだよ」


広は容赦なく横腹にボディーブローを打ち込んだ。


「次言ったら殺すから」


「……冗……談じゃん……」


なんなんだこいつ。さっきから私が拒絶しても離れようともしない。雫以来だ、ここまでめんどくさいやつは。

ここまですれば大体の人は私から離れる。ほんとになんなんだこいつ……。


「さっさとどっか行ってくれるかしら……。横にいられたら不快なんだけど……」


「手厳しいな〜。そんなに俺の事嫌いか?」


「えぇ嫌いよ。あなたも、あいつも、()()()()()()()()()……」


「なんだそりゃ」


「というかあなた学校の時と口調違わなくない?」


「そりゃ学校と外は違うし。公私混同しないと」


「……」


やっぱりなんなんだこいつ……━━━━━━━━━━━━━━

そうして色々な事があり、嫌々ながら大石と帰る広。

辺りもだいぶ暗くなってきた。街灯もあるが壊れていて明かりがつかない。


「暗いな」


「私に話しかけないで」


「暗いくらいいいだろ」


「はいはい暗い。これでいいかしら」


「少しくらい会話をしようぜ逢坂。ほらボンと話題をひとつくらいないのか」


そんな事を話していると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……ほら、今みたいなボンって話題をさ」


「黙ってて」


「……はい。……それにしても今の音なんだろな。すげー遠くから聞こえてきたけど音すごかったぞ」


「黙っててって言ったわよね……?たくっ……あんた家どこなのよ」


「もうすぐそこ」


「私の家と近いのね」


「送ってくれてもいいぞ」


「嫌よ……というところだけど家に帰っても暇だし送ってあげる。感謝しなさい。」


「はいはいありがとうございます」


そういう事で私が珍しく雫以外を送っていく事になった。本当は嫌だけど。

それにしてもいつも思うがここら辺はいつも暗い。そろそろ街灯くらい直してくれてもいいのに。


━━━━━━━━━━━━「絵本の第四章はどうするか……。……人間は愚かにも……いや、これは違うな……」


目の前の暗闇からからボソボソとつぶやく女の声。

その声は異様に甘く、嫌でも広の耳に入った。

━━━━━━━━━不快。広が一番最初に思ったのはそれだった。どうしようもなく不愉快で、不可解。

まるで慧と初めて出会った時のような圧迫感。こいつを認識してから冷や汗と手の震えが止まらない。

しかしこの声、1度聞いたことのあるがある。


どこかで会ったことがあるか聞こうとも思ったが、やめておいた。胸の奥から不思議と湧き上がる不安。関わるだけ損をする。

そのまま無視して通り過ぎようとしたが、少し目があった。


「逢坂君じゃないか!」


通り過ぎようとした私を、彼女は私の名前を呼んだ。


「知り合いか?」


「……分からない」


「分からないってなんだよ」


「だから分からないんだって……」


分からない。本当に分からない。暗くて、顔も何もかも姿がはっきりしない。でも、声は聞いたことがある。


「……その顔見るに、もしかして私覚えてもらってない?」


「どこかで会ったことあるかしら」


「ほら、まえ逢坂君に夢でお告げした神様だよ」


そう言われて広はやっと思い出した。どこかで聞いたことのある声。

姿が見てなくても分かる。

こいつ、私が寝ている時に夢に出た、雫を学校にぶち込めとか何とか言ってきた自称神のやつだ。


「最近学校はどうかな?楽しんでるかい?」


「あなたのお陰様で雫と楽しくやれてるわ……」


「嘘つけ」


「あんたはちょっと黙ってて……!それにしても、まさか存在してたなんてね……」


「どういう事?」


私はあの時、夢の中でこいつを見た。現実じゃない。

確かに夢の中だった。でも今、こいつは私の目の前で喋っている。

幻覚……?いや、横のバカにも確かに聞こえていた。

もしかしてこいつ……━━━━━━━━━━━━━━━


「あんたもしかして夢の妖精とか……?」


「何言ってんのさ。なになに?私は逢坂君の夢の中に偶然現れた不思議な奴と思われてたのか?」


「そりゃそうでしよ……。夢なんてそんな空想でしかないものなのに」


「それがもし夢じゃなかったら?」


「何言って……━━━━━━━━━━」


「それじゃあ電気をつけよう。自己紹介といこうか」


そういうと消えていた街灯が彼女を照らした。

右手に本を、そして左手からは自らの血を流した、丸いメガネと珍しい茶色いコートを着た女。

色々と手にもってる物とかなんで血を流しているのか気になるところだが、そんな事よりこの人……でかい。色々と。

身長もそうだが、おぱ……、胸がでかい。


「さて……こんばんは逢坂君。神、道端雫の7番目の子供にして、未来を描くしがない絵本作家。名前は……別になんでもいいや。シャーデンフロイデとでも覚えといてくれ。以後お見知りおきを」


雫の子供。彼女は確かに今そう言った。


「……あれ?そんなに驚いてない?」


「……まぁ別にそんな気がしてたからね」


広は彼女の正体については何となく分かっていた。声を聞いた時の圧迫感と手の震え。正直、会った時から逃げたいくらいの圧倒的存在感。ただの人間がこれ程強いオーラを出せるわけが無い。

そして姿を見て分かった。こんな一目見ておかしい奴は雫の子供以外ありえない。

だけどこいつのこの感覚……━━━━━━━━━━━━━━


「それでシャー何とかさんは私に何しに来たわけ……」


「偶然出会っただけだよ〜!」


「偶然……?……嘘ね」


「何が〜?」


「姿表してくれたおかげでよく分かったわ。あんた、……なんでそんな歪んだ笑顔してんのよ……」


広は彼女から少し距離をとる。

出会った頃からずっと思っているが、不愉快。この言葉以外見つからない。

立ち姿。喋り方。そして何より、こいつのこの歪んだ笑顔。こういう笑顔は嫌という程知っている。

歪んで、醜くて、人を操ろうとする笑顔。人なんて簡単に壊せるそんな笑顔。こいつは……言葉に出来ないが、何かやばい……。


「あれ、顔出てた?」


「えぇ、汚い笑顔がくっきりと……。ロードローラーにでも顔潰されたの?」


「おいおい酷いな〜!歪んだ笑顔は人間の本質だろ?」


「黙って……」


さっきから鼻につく言い方……。なんなんのほんとにこいつ……。ほんとに雫の子供なの?

同じ雫の子供の慧と比べても、何もかも違う。全てが異質だ。慧も圧倒的な雰囲気がある。しかし、こいつはそれを押しつぶす程の邪悪なオーラが嫌という程伝わってくる。


「あんた……ほんとに雫の子供なの……?」


「あぁ、もちろんあの人の子供さ。優しくて、尊くて、尊敬するに値する人物だろ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「家族と思われたいならまずその腐った性格を直したらいいと思うわよ。これ腐った性格を持った先輩からの教えね」


「べらべらと……。さすが()() ()()()()()()()()()()()()だ。だから共依存なんてしてるんだろうね」


「どういう意味よ……」


「他意はないよ、そのままの意味さ。君が1番よく分かってるだろ」


「意味わかんないことさっきから言ってんじゃないわよ……」


「あっそ。……それよりも私が何しに来たか知りたかったんだよね。特別に教えてあげるよ。……知らせに来たのさ」


「私に何を知らせるっていうの……」


「祝福の知らせさ!私がこれから起こす祝福のね!」


そう言った彼女の笑顔はさらに歪んだ。


「これから大勢人が大勢死ぬよ、祝福だ。大地が壊れるよ、祝福だ。世界が滅びるよ、祝福だ」


狂気。彼女が語る様はまさにそれだった。


「あんたにそんな事出来るとは思えないけど?」


「私?私はそんな事しないよ。そんな力ないし」


「なら一体誰がするのよ」


「|()()()()()()()()()。私はそれのサポート係」


その時、また遠くで何かが壊れる様な音がした。


「実を言うとね、伝えに来たとは言ったけどもう計画はすでに始まってるんだ。君が私の言う通り、道端 雫を外に連れ出したあの時からね。」


「は?」


「それはもう私がやって欲しいことぜんふやってくれるから、もう今は五割くらい進んでいる」


そう、淡々と語る彼女の様子に広の頭は追いついていない。

━━━━━━━━━神って雫の事?雫が世界を滅ぼす?私があの子を学校に無理やり連れていったせいで?……さっきから何一つこいつの言っていることが分からない。


「……なんで私にそんな事言うのよ。黙って計画を進めれば良かったじゃない」


「君は一様道端 雫と友人だからね。知る権利がある」


「いらないわよ、そんな権利」


「そうかい……。……それじゃあ、色々と話したい事話したし私は帰るとするよ」


「帰れると思ってんの?まだまだ聞きたいこともあるし逃がすわけないじゃない……」


「おいおい、そんなにまだ私と話したいの?しょーがないな〜!。お姉さんが付き合ってあげる」


「話し合い?今からするのは、あんたが地面這いつくばって私が質問した事を答えるだねの簡単な事よ」


「それは無理な事だ。残念ながら私の頭は年下に下がるほど軽くは無い」


「ならそのまま汚い顔見せながらでいいわ。なんで雫が世界なんか滅ぼすわけ?あの子はこの世界を結構気に入ってるはずよ」


広がそう言うと、目の前にいる女は高らかに笑った。


「何を質問すると思えば、……ほんとウケる!この世界を気に入っている?それほんとに信じてるの?……君ってほんとバカだな〜!そんな訳ないだろ!道端 雫はもうこの世界に愛想つかしてるよ」


「嘘よ。雫とどれだけ一緒にいると思ってるのよ。あの子はそんな事は思わない」


「たかだか数十年程度の知り合い風情が何を言うかと思えば……、私はあの人の子供だよ?私の方が信ぴょう性あると思うけど?」


「誰があんたの言うこと信じるのよ」


「……君と話してると疲れるよ。もうちょっと話をするつもりだったけど、さっさと帰らせてもらうよ」


「話まだ終わってないわよ……?それにこのまま帰すわけないじゃない」


「別に帰れるよ。さっき隣にいた男の子みたいにスっと消えるようにね」


広は横を見ると、さっきまでいた大石が居ない。それどころか、ここら一体人の気配が一切ない。


「あんた何したの……」


「賢い君なら分かるんじゃないかな〜」


「お世辞はいいからさっさと答えなさい」


「はいはい、分かったからでかい声出さないで。……さて、何故私は左手から血を流しているでしょうか」


「まさか……」


左手からダラダラと流れ落ちる血液。

もし、私が考えている事が本当なら状況は限りなくバッドエンドに近しい。

失念していた。考えてもいなかった。少しは左手の血に注意を向けるべきだった。

━━━━━━━━━━━何故、私は雫だけが血を操れると思っていた.……。こいつは神、道端 雫の子供だ。

血を操れても何もおかしくは無い。

なにより、目の前のこいつが不自然な血を流しているのが証拠だ。


「顔を見るに分かったようだね〜。はいそのまさか!神の子供なんだから血を操れて当然だよね〜。まぁ、あの人みたいに血を形作ったり、身体を強くするとかは出来ないんだけどね〜。でも、血は私たちに合った力を与えてくれた」


「幻覚ね……」


「おー!」


反応を見るにやっぱりそうか。こいつにお似合いの能力だ。


「あんたは何一つ動いてないのに、大石もこの街の人も急に居なくなるなんてことはまず有り得ない。それにあんたが突っ立ってる真上のその街灯。私が壊した街灯なんだから電気なんてつくはずないじゃない」


「……すごい。やっぱり君を選んで正解だったよ。でもちょっと力に関しては違うかな〜。……まあそれは対して重要じゃないからいいや。私の血の力は人を惑わす事。ただそれだけだ。慧も、アリスも、それから楓さんも、あんな化け物みたいな力を持った怪物達には張り合えない弱い力さ」


「ちょっと待って……。なんで今楓の名前が出てくるのよ……」


「あれ?君聞いてないの?楓さんは血の継承者だよ?」


当たり前のように伝えられたその情報は広の動きを止めた。

━━━━━━━━━━━楓が血の継承者?血の継承者ってそもそもなんだ?

それよりも、あの姉がこの怪物と同じ力を持ってるって言うの?……次から次へと意味わかんない情報増やすんじゃないわよ……


「もう訳わかんない……」


「それはそうだろうね。まぁ色々詳しい事は明日慧に聞いてよ。それじゃ、私は帰るから。また会う日まで」


「ちょっと、まだ話が!待ちなさい!」


「待たないよ。……さて最後に、君に一言送ろう。神、道端 雫が唯一崇拝する神様のような君へ祝福をあらんこと。そして少し先の未来の神、逢坂 広に祝福があらんことを」


彼女はそう言うと霧のように目の前から姿を消した。

そして、ポッケに入れていたスマホが鳴った。


゛原因不明 タワーマンション最上階 崩壊 住民二人とは連絡取れず 謎の赤い人影゛

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