にーじゅきゅー
すみません遅くなりました……。書けなかったよりはマシという事でお願いします……(:3[_____]
「……あの、殿下、その…………、聖女試験、というのは」
「我が国の聖女試験だから、どうか安心してほしい」
真剣な顔で真剣に言われたけどもよ、まてまてまてーい。
いやどこも安心出来る要素ねえが? むしろ不安しかねえが??
むしろなんかその真剣な顔がドヤ顔にすら見えるくらいなんも問題ないと思ってねーかコレ。
「もちろん、不正や忖度できみを無理矢理聖女にさせるつもりはない」
え、それ一回考えたこと無いと出てこん言葉じゃね? それはそれで怖くね? え、これワシだけ?
「むしろ試験を受けることで、王妃としての責務を」
いや、おいおいおいおいおいふざけんな!
「あかんあかんあかん! そんなんしたら殿下もワシも風当たり強なるやんけ!」
「えっ?」
「あ」
やったーー!! 猫が脱げたぞーー!! ご開帳じゃああああ!!!
「…………キャロル?」
「そうです! 今のが本来のわたくしです! どうです? 幻滅したでしょう」
中身を出せたと思ったら、ちょうど人が来てしまったでござる。令嬢スイッチがオンになってもうたけど、とにかく喋る。
「……キャロル、いけないよ。どうか自分を偽らないで」
なんかめっちゃ困った顔されたけどちゃうねん。むしろ今のが自分偽っとるねん。逆やねん。
「偽ってなどいません! ちょうど人が来てしまったから、だから」
「愛しい人。お願いだから無理をしないでくれ。きみがいなくなると考えただけで、俺はこの世界から消えたくなるんだ」
なんでかギュッと抱きしめられたんやけどもなんでなん。無理とかちゃうねん。
ていうかこっぱずかしいからやめてくれええええ!! ほんでめっちゃいい匂いしてそうなのに匂い分からんんんんん!!! ちくしょーめ!!!
「んぐぐ、殿下! こんな往来で、やめてください!」
「すまない、俺が自分の気持ちばかりを優先させているから、こんな」
「分かってるようで分かってない…………!」
「ふふ、少しだけ遠慮を無くしてくれたんだね。うれしいよ」
「殿下っ!!」
なんでや! なんでこうなるんや! 語彙力無ぇからうまくツッコミでけへんやんけ! ちくしょう!
「あらあら、お熱いこと」
「ふふ、微笑ましいわねぇ……」
誰かの声が聞こえて余計に恥ずかしい。なんでみんなそんな生あったかい目で見とるんや! やめてください! ほんで誰かこの殿下止めてくれ!!
「っともかく! 聖女試験は辞退させてください!」
「キャロル……、気持ちはわかるけれど、これはきみのためでもあるんだ。俺たちが結婚するには少しでも多く障害を減らしておかないと……」
いや聖女と王太子が結婚はええ話かもしらんが、それはそれでなんも知らん周辺国とかからしたらなんか色々問題ある国に見えるやろがい!
ていうか聖女って結婚でけるんか!?
「わたくしは……!」
頑張って殿下の腕から抜け出ようとバタバタしながら反論しようとしてたら、急に周囲がざわざわし始めた。
「えっ、聖女試験?」
「キャロルさま、聖女になられるの?」
え、あ、え。
「まあ、それは喜ばしい出来事ね!」
「聖女とか……似合いすぎじゃん……」
「まあ、そんな気はしてたよ。神々しいもんな」
こうごうしいってなに。みんななんの話してんの。
「応援してます!」
「キャロルさまならきっと、合格されますよ!」
いや応援されても困るんよ。なんも頑張る気無いねん。むしろなんもしたないねん。なんでなん。
「え、あ、待ってください、わたくしは、辞退を」
「辞退!? そんな、自信持ってください!」
「そうですよ! 一番聖女に相応しい人なんですから!」
自信とかちゃうねん普通に嫌がっとるんやこっちは。一番相応しいとかなにそれ知らん怖。なんでそんなことになっとんねや。ものすげー嫌なんですけど聖女とか。めんどくさい予感しかねーですけど。
「そうですわ! 自分に嘘をついてはいけません!」
「あぁ……、そっか、キャロルさま優しいから他の候補者に遠慮しちゃってるんだな」
「まぁ! それなら、なおさらですわ!」
あかんて。まって。ホントにまって。
「そうなのかい、キャロル」
「違います! 遠慮なんてしてません!」
「あぁ、ほらやっぱり」
「そんなにも他の候補者なんて気にかけなくても良いのに……」
いやむしろめっちゃ全力で否定しとるやんけ!! なんでなん!! なんでみんな生あったかい目でこっち見とるん!? やっぱりってなに!? なんもやっぱりちゃうが!?
「まったく、そんなに強がらなくても良いんだよ、キャロル」
「違います! わたくしは……!」
「お優しい方よねキャロルさま……」
「本当に聖女だわ……」
頼むから誰か止めろ!! 誰でもいいからまともな人連れて来て!! おおおおい!! なんでや!! なんでこうなっとるんや!!
────キャロルは知らない。己が、冬の国では神聖視されかけていることを。殿下から貰ったヴェールのせいでキャロルの外見が聖女にしか見えないのもあるのだが、それ以上に前回のミミズ騒動で誰かを責めることもせず、むしろ原因らしき令嬢を庇った形になってしまったことが、主な原因であることを。
本来なら退学も視野に入れなければならない程にはヤベー事件を、キャロルは己の非ということにした、なんて素晴らしい、もはや聖女だ! てな感じの認識に、なんでか知らんが学校中がなってしまったのである。
相手の令嬢からすれば、小さくか弱い護るべき対象である美少女に、逆に守られてしまったのだからその庇護欲が訳分からんことになってもおかしくはない。知らんけど。
とはいえキャロル本人は自分がミミズを持ってたことを隠蔽しようとしただけなので、周囲の自分に対するその評価の意味が分からない。むしろどっちかって言うと、その事件のことすら記憶の彼方である。
ゆえに、ただ困惑することしか出来ず、結果として周囲の期待と思い込み、その他諸々の謎の決定により後に引けなくされてしまったキャロルは、受けたくもない聖女試験を受ける羽目になってしまったのだった。
「兄者ぁぁぁ……」
「えっ、どうしたのキャロル」
休み時間になった頃、フラフラと教室にまで来た妹に兄は困惑した。
よく分からないまま、兄専用のプライベートスペースへと案内する。
魔道具師見習いとして留学している兄には、小さいながらも仕事部屋のようなものが用意されていたからである。
椅子に妹を座らせ、兄は立ったままで改めて問い掛けた。
「何かあったの?」
「うん……なんか聖女試験受けることになった……」
「は? え? なんで?」
あまりの意味のわからなさに困惑するしかない兄だが、なんていうか、うん、それはそう。
そしてそんな妹はというと、こちらも珍しく困惑している様子である。それもそう。
「うん、ぜんぜんわからん」
「……え、殿下に、キャロルの素を見せに行ったんだよね? それがなんで聖女試験?」
「ちゃうねん。日頃の感謝にってハンケチ渡してたんよ。ほしたらなんでかそんな話になった」
めちゃくちゃ雑な説明ではあるが、何もかもが真実であるがゆえになんとも言えない。もう少し詳しく説明したとしても結局意味が分からないので、なんかもう誰がどう説明したところで結果は変わらなさそうだ。
「ん!? え、素は?」
「出した!」
ドヤ顔で胸を張っているキャロルだが、それが完全に裏目に出ていたということは、多分、全く自覚が無いのだろう。
どうせなら人が来ない場所でやれば違った結果になっただろうに。むしろ朝の教室前廊下でなんであんなことを始めてしまったのか、というのは、キャロルだからとしか言いようがない。
どうせ、忘れないうちに渡そー、くらいしか考えていなかっただろう。
「うん……えっと、それがどうして聖女試験?」
「わからん!!」
兄の問いに、キャロルは真剣な顔で断言した。
うん、それはそう。
なんかもうあの殿下何考えてんのか全然わからん。
「え、いやなんで!?」
「いやいやいやワシもホンマにわからんねん!!」
「えええええぇ……」
困惑の声を上げる兄だが、分かっていたらこんなことにはなっていないはずである。しかたないね。
「助けて兄者!!」
「え、あ、ごめん、無理」
「なんでええええ!?」
何度目かのキャロルのSOSは、ものすごく真剣な顔で拒否されたのだった。なんでじゃないのよ。
次回は通常通りに更新……出来たらいいなって思います。頑張ります……。




