表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

信号機

作者: 蝸牛

 風がぽちゃんと鳴った気がした。車の中。轟々とひしめく風たちに耳を撫でられる様なそんな時だった。心の中には何というわけでもない頭と呼ぼうかそんなものが散らばっているのだ。そんな整然なんて言葉を想像もできないような心内だから窓を静かに開けていた。空気すら回らない様だと息が出来ない気がして。

 ぽちゃん

 その音はそんな頭たちに落ちるように囁いた。まるで老人が独り言つ様な静けさまで備えている様だった。言葉とも取れてしまうような音に頭はおろおろと四方八方散らばりとうとう集取すらつかないのではと思うのである。

 ぽちゃん

 さながら風は海を運んできたぞと呟かれた様にも感ぜられてしまう。しかし耳の方にたどり着くのはざあざあと酷く凡庸な風切音だけなものだから肩透かしにも思える。風切音は何を伝えるでもなくただ流れていく。そいつをあわあわ頭たちが捉えようとしているのが滑稽にも勇敢にも見えるのだ。そんな夜に風はまた一つ音を落とす。

 ぽちゃん

 信号機は赤くぼんやりとひかり、車の中には重力がぐぐっとかかる。板状の紐が軽く食い込んだ所で背後に引き戻され、少し顔が上を向くのだ。地面に埋まっていた空気を荒らした様な気持ちを置いていくようにぐるんと車を走らせる。光がするすると伝う様に流れ、ぐるぐる音を車は鳴らす。信号は緑色に移り変わっていた。

真空じゃ息が詰まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ