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10話.[よくないことだ]

 最近は佐藤君が来ることが増えた。

 この前までは朝と放課後だけだったのにいまでは毎時間彼の教室に来ている。

 別にそれは構わないものの、気持ちを知られた後にそのままでいられている彼がすごいと感じるときは多々あった。


「なんか見られている気がするな、ここら辺からか?」

「あなたは強いのね」

「強い? 俺が? はは、そりゃまあそういう風に装っているだけだ」


 言ってからしまったと少しだけ固まった。

 でも、こちらを責めるつもりではなかったのか、彼は笑いつつ「そんな顔をしてくれるなよ」と言ってきた。


「実際、久は強いでしょ? 僕なら痛いことでも平気そうな顔で笑っているし」

「違うよ、情けないところを見せたくないから強がっているだけだ」

「そうかな? 僕よりも強いと思うけど」

「そりゃまあな、陸よりは強くないと普通に困るだろ」


 ちなみに村上君――陸君は私よりも強い。

 私は意外とすぐに慌ててしまうからたまに恥ずかしくなるときがある。

 だけどそれを笑わずにいてくれるのがこのふたりだった。

 だからこそ恥ずかしくなるということに繋がっているのはあるけれど……。


「む、そんなに弱いつもりはないんだけどな」

「分かってるよ、陸は時々怖く感じるぐらいには冷静でいられるときがあるからな」

「でも、それは結局久や唯がいてくれているからだからね」


 ……佐藤君だけではなくてこっちもちゃんと持ち上げるところが彼のなんとも言えないところだった。

 別に無理やりそうしてくれなくても私は拗ねたりなんかしない。

 変な遠慮をして離れたりとかしない限りは面倒くさい絡み方をしていないつもりだ。


「でも、今日の川口はらしくないな」

「私?」

「ああ、彼氏がここにいるのに口数が少ないからさ」


 少し偉そうだけど彼のことを考えてしていることだった。

 お家ではふたりだけでいられることが多いから少しは我慢しなければならない。

 ただ、お家でゆっくりするにしても葉ちゃんの視線が気になって耐えられないときがあるからいかに私の家に誘うかという勝負になっている状態だった。

 見せつけるような趣味はないし、それで優越感を得られるわけではないから。


「あなたのためよ、あなたが彼に嫉妬して八つ当たりしないように我慢しているの」

「そりゃどうも。実際、陸は変わらずに相手をしてくれているからいいけどさ」


 ……問題があるとすれば彼らが話しているところを見ているばかりだというのは苦痛だということだった。

 だからいつも自然と陸君に近づいてしまっては、それに気づいた彼にいい笑みを浮かべて見られてしまうというのがよくないことだった。


「見せつけられてんなー俺」

「ち、違うわよ」

「そうだよ、だけど唯の相手もさせてもらわないとね」

「はは、まあその方が陸達らしいからな」


 なんか恥ずかしかったから彼の後ろに隠れておいた。

 そうしたらまた笑われてしまって縮こまる羽目になってしまったけれど……。

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