霊安室
バタンッ。
この霊安室へ誰かが入って来るのが分かった。
そして老女が看護師と医師と警察官らしき人が、一緒に視界に飛び込んでくる。
看護師と医師、警察官はルーアンを見て、その瞳がルーアンを捉えて驚愕し「まさか……こんなことが!?」と呻いていた。
『確かに……確かに死んでいたんだ!?』
(泣いている老女は──、俺の祖母だ……)
祖母は涙を流すと「蒼羽が生きてた……!!」と呟き号泣している。
(何で俺はこの年寄りを〝祖母〟だと認識しているんだ! でもこれは俺の祖母だ!! 蒼羽……俺は蒼羽というの……か?)
霊安室は異様なムードとなっていた。死亡宣告した青年が『生きていた』のである。いや、生き返ったというべきなのかもしれない。
警察官に指摘され、再度医師はルーアンを確認する。そして震えながら死亡宣告を取り消した。
医師と警察官は何かを話しながら足早に霊安室を出て行く。
残ったのは、祖母と付き添っている看護師であった。
看護師は再度驚きの表情でルーアンの脈を触ってみたりしている。
祖母はひたすら拝みながら「じーさんありがとねぇ、ありがとねぇ、ありがとねぇ」と呟いていた。
ルーアンは不思議だった。
今周りが話している言葉……初めて聞く言語なのだが、理解できる。
違和感はあるが会話として不自由なく聞いていた。
ここが日本で、これが日本語だと分かっている。だから違和感なのだ。
ルーアンは混乱していた。
どうしていいのか分からないが身体が動かないのだから何もできない。
天井を仰ぎながら、ゆっくりと目を閉じると、思い出すかのように記憶を探り出した。
(俺はルーアンだ。戦闘員として生きて……ここは日本で俺は大学生。川へ身を投げ自殺して……今ここにいる──?)