死の先
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目が覚めて目の前が真っ白なことに、最初はボーッとしていたが、意識が鮮明になってきた瞬間……ガバッ! と起き上がった。
いや起きたつもりだったが、実際は身体が動かない。
目の前の視界がクリアになる。どうやら顔に布がかかっていたらしい。
最初は焦ったが、少しして諦めると辺りを見回してみた。それと同時に何か記憶がリンクされていく。
「あれ……俺飛び込んだはずだった」
記憶の断片が鮮明になっていく。
それは自分から川に飛び込んだ映像だった。どうやら俺は自殺したらしい。
「ということは……ここはあの世……じゃない。これは『霊安室』か」
その言葉が出て、自分自身にびっくりする。
(俺はこんな部屋知らない! 俺は確か処刑されるはず……)
そこまで考えまた記憶の断片が鮮明に重なってきた。
「俺は確かに処刑場で射殺された……」
撃たれた瞬間の感覚を覚えている。
そして少しずつ意識が遠のいていったのも記憶している。
混乱していた。
(俺はルーアンだ)
(俺は蒼羽だ)
二つの意識が同時に自分の名前を告げた。
(ルーアンなのか……? 蒼羽って誰だ!?)
その意識で自分は〝ルーアン〟だということが認識できた。
では被っている記憶は何なのだ──と。