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露と消える
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ルーアンは我に返り再度靄を見た。
靄はそんなルーアンの心を見透かしているのかニヤリと笑う。いや、笑っているように見えたのだ。
「お前のその疑問が解消されるかもしれないな」
その言葉にしばしルーアンは沈黙する。
そして静かに「お前が何者かは知らない。だが、できるのであればその提案を受けよう」と結論を提示する。
《──交渉成立だ》
「ああ、さっきの夢か」
ルーアンが納得した時……足音が近づいてくる。
「1……2……3……いや4人か」
ルーアンは動じずその足音を静かに聞いていた。足音は思っていた通り自分の檻の前まで来ると扉の鍵を開ける。
「ルーアン、出ろ!」
その言葉に従い、ルーアンは抵抗することなく牢から出る。ルーアン程の戦闘員ならこの程度の人数は造作もなかった。
しかし敢えて甘んじて運命を受け入れたのだ。
(変な夢だったな──)
そう思いながらルーアンは言われるがまま連行されていく。
そして……ルーアンは抵抗することなく処刑場でその生涯を閉じた。